第12話 布石

さっきは逃げていたので、次は鬼だ。今度は自分と羽島、紗羅と平山で組んだ。


「では鬼もスタート!」


野村が言い、始まった。


「さて、奏、どうする?紗羅はともかく平山には期待できないから俺たちが稼ぐしかないぞ。」

「そうだな.....」


他の人達が一斉に探しに行く中、小走りで考える。


「............思いついた。」

「お、どんな作戦だ?」

「それは....」






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「くそ!なんでそんなところに!」


捕まえられた男子が呟く。


「さすが奏!この作戦はなかなかだな!」

「それはどうも。」


どうやらこの誘導作戦は案外つかえるようだ。

作戦とは、まず自分が隠れている人を探す。自分は足音を意識すればほぼ消せるのでバレずに探しやすい。

けど、複数人いる場合は、自分とて捕まえられる保証はない。

そこで羽島に、ワザと大きい足音をたてさせる。逃げる人達は慌てて音の反対側に逃げる。そこで死角にいる自分が出てきた人を一気に捕まえる。


「このまま行こうぜ!」

「ああ。」


さて、どこまでいけるか?




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





残り二分。残り人数が二人なため、羽島とは別れて探すことにした。

残っているのは、女子二人らしい。そのうち一人は水嶋なのだが、水嶋だけ一回も見つかってないらしい。

だが、場所はもう割れている。あいつはよく人を観察している。自分で言ってたしな。

人の良いところを取り入れる。それはいい。だが........



それも『布石』だ。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





(この場所、なかなか使えるね。)


残り二分ぐらい。この場所は多分さっき春祇くんが使っていたところだ。確かにこの場所はかなり使える。このままいけそうだ。


「.........」


それにしても、あの言葉が頭の中で回る。



『その創っているキャラ、気持ち悪いよ。』



「....もぅーー!!」


小声で呟く。

なんで、なんでバレてるの、私のキャラ!今までこの高校生活は、しっかり者でみんなに頼られる人になろうと思って、誰にも愛想よくしていて、今この現状なのに。あの日、お父さんに言われた通り頑張ってたのに....


「なんで、なのよ....」


悔しい。本当に悔しい。かなり上手く隠しているつもりだったのに、春祇くんにはすぐバレた。

多分、春祇はかなりの洞察力をもっている。だからさっきの時も、壁を使うという大胆な技を使ってきた。

さっきは負けたけど、今度こそは..


(勝つ!)


そのためには逃げ切るしかない。ここの場所はあの春祇くんが作った場所だ。そう簡単に....


いや、違う。春祇くんの思考を読め。追いかけようとした時、ワザと私に姿を見せていたら?次、春祇くんが鬼になった時に私をここに隠れさせようという作戦だったら?考え過ぎかもしれないけどあの春祇くんだ。万が一を考えたら、ここは危ない。

幸い、他の人たちは遠くを探すとさっき聞こえた。なら、今がチャンス。

私はこの場所から一気に走りだした。


残り三十秒くらい。絶対勝つ!春祇くんに!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る