第11話 『キャラ』

水嶋がこっちに近づいて来た。気づいていない。


(今だ)


そう思った瞬間、一気に駆け脱ける。水嶋の横を通り。


「えっ!」


予想通り、水嶋はいきなりのことで反応できていなかった。だか、すぐにこっちを追いかけてきた。まあ、それも計算通りなんだが。

作戦はこうだ。自分は水嶋をこっちに引きつけ、紗羅はそのまま隠れる。二人だと追いつかれる可能性があるため、この作戦に賭けた。

あとはうまく逃げるだけだが、さすがにあっちも足が速い。ならこっちは遮蔽物をつかうしかないな。







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(速い‼︎)


まさか春祇くんが、飛び出してくるとは思わなかった。多分、私の隙をついてそういう作戦をしたのだろう。


(なんで春祇くんが?!)


私は驚いた。それと、やっぱり普通の人とは違うんだとも感心してしまった。













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春祇くんとはあの教室で初めて会った。その時は、羽島くんや平山くん達と同じ雰囲気だった。けど、寝ていた春祇くんの顔を見たあの時。


あの眼、全てを見透かすようなあの眼に私は驚いた。

みんな、普通は私をみると笑顔になったり嬉しそうな顔をする。それは自分の『キャラ』のおかげだと思う。それに自分の容姿も良いと自負している。

だけど、春祇くんはそんなことなかった。ただ私を見ただけ、いや、観察していた。ただただ無関心に。

私はそれが、『気に食わなかった。』











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逃げているうちに行き止まりについた。それに水嶋にも追い付かれた。少しやばいかもな。


「もう終わりだね。」


水嶋が話しかけてきた。


「どうかな?それは。」

「春祇くんて、すごいよね。なんか他の人と違うよね。雰囲気とか。」

「それは褒めてるのか?」

「褒めてるよ。」


そう言いながらも近づいてくる。話しかけて油断させる気だろう。壁に張り付く。


「話すのもここまでね。じゃあ、行くよ!」

「........」


そう言って向かってくる。こいつ、いやこういう『キャラ』は一言で充分。






「その創ってるキャラ、気持ち悪いよ。」








「.......っ!!?」


一言、その一言で水嶋は大きく動きが崩れた。

その間に自分は『壁』を蹴った。


「な!?」


驚いていた水嶋だが、負けずと手を伸ばし触ろうとしてきた。だか、自分はもう一度反対の壁をもう一度蹴った。

さっきもやったが、壁を蹴ることで、加速して一気に動き相手を翻弄することができる。

おかげで一気に水嶋を抜けられた。そのあと水嶋が追いかけてこなかったので、最後まで逃げられた。







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「すごいな、奏。最後まで残るなんて!」

「僕なんか一瞬だったよー」


結局、残っていたのは自分と紗羅だけだった。平山はすぐ捕まったらしいけど、羽島は残り一分で捕まってしまったらしい。ちなみに紗羅は、ずっと隠れてたそうだ。


「じゃあ、次は交代してやるぞー」


野村はそう言った。

次は、鬼だ。


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