自主企画「1シーン連想」コン 文字数少なめ
NEO
筋トレ
エイブラムス村のとある空き地の隅っこ。毎日お馴染みの光景が繰り広げられていた。
「フンヌ!!」
筋骨隆々としたイワオが歯を食いしばり、気合いを込めて持ち上げているのは、一抱えはある巨大な岩だった。顔から滴り光る汗が美しい。
しかし、その足下には、危機が迫っているとは露知らず、スヤスヤと眠る小人の姿が……。
「くぉらぁぁぁ!!」
毎度の事だ。その様子をたまたま見かけたタケミが、凄まじい勢いで駆け寄って行く。そして、素早く小人を回収した。
「あんたねぇ、毎日毎日私のホムンクルスを勝手に持ち出して!!」
イワオが岩をズドンと地面に落とした。
「ホムンクルスならいくらでも量産出来るだろ。一体くらいいいじゃないか。こうやって危機感を持たないと、いい筋肉は付かないからなぁ」
イワオは白い歯を出して笑った。
「あのねぇ、作るのもタダじゃないのよ。もし潰したらどうするのよ!!」
タケミが喚くその時、ブチっと音がした。
「あっ……」
タケミの怒りは急速冷凍。思わず力を込めてしまった手の中で、ホムンクルスは見事に潰れていた……。
「あーあ、自分でやってりゃ世話ないな」
イワオは声を出して笑った。その場にガックリ倒れ込むタケミ。まあ、これもいつもの光景なのだが……。
「あ、あんたが持ち出さなければ!!」
見事な責任転嫁である。しかし、イワオには効き目がなかった。
「さて、筋トレの続きをするか。今度はお前がそこに寝そべれ。小人を潰した代わりだ」
無茶ぶりである。当然ながら、タケミはキレた。
「……私も攻撃魔法の練習しようかな。いい標的があるし」
ヤバい感じで呪文の詠唱を始めるタケミ。しかし、イワオも馴れたもので、なんと、あれだけ重いはずの岩を片手で持ち上げ……。
「ソイヤー!!」
イワオは隙だらけのタケミに岩をぶん投げた。普通に死ぬ一撃。ゴスともメキっとも言えない音が響き渡る。岩はタケミの顔面にクリーンヒットした。
「へへへ、効いたぜ……」
しかし、タケミは立っていた。もう慣れっこだ。
先だってこっそり防御魔法を使っていたため、ダメージはほとんどなかったのである。
「お返しだぁぁぁ!!」
瞬間、村が半分ぶっ飛んだが、イワオはただ白い歯を見せて立っているだけ。
そう、これがこの村の日常だ。悪い事は言わない。この村に住むのはやめたほうがいいと。
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