God only knows
――電子空間に、十二の球体が輪になり浮かんでいる。
ぼんやり発光するそれらは、グリーン、シアン、マゼンタと一つ一つ異なり、中に薄らと人影が
内、色の灯っていない球が四席あるものの、過半数が集まっているだけでも珍しいことだ。
『続いて、提出頂いたレポートについてですが。……アクエリアス』
発言者の声に合わせ、球体が淡く明滅する。
ほぼ対面に位置している彼女からの呼びかけに、「はいはい、何かなヴァーゴ?」と小首を捻ってみる。電子空間において肉体の仕草は意味をなさないのに、全員の視線がこちらに向いた気がした。
『今回は、その……実に独創的で、興味深い内容ではありましたが』
『ふざけないで。貴方ね、いくら
『私怨がダダ漏れだぞキャンサー。まぁ僕も同意見だけどね……さすがに大ガラスはないよ、カラスは……』
『なんだよ俺は好きだぜ。エピソード2ではニンジャ出してくれよな先生!』
『静粛に、静粛に!』今日の議長役であるヴァーゴが、神経質な声を張り上げた。
『各自、与えられた任務の重大さを再認識するように。私たちの使命は、』
「――神の子を、見つけ出すこと」
暗いイエローの球体から、低く、落ち着き払った声が発信される。『……仰るとおりです、アクエリアス』
『依然として、二年前の目撃例を最後に、新しい情報はありません』
『そもそも本当に実在すんのかねぇ……悪魔の証明じみてきたぜ』
『世界を壊す者、という意味では
しわがれた紳士の声に、二進数の向こうで幾人かが首肯した。
「ああ。僕らの探し物は、人智の外の怪物だ。どれほど馬鹿げて見えようと、非常識な存在をこそ追うべきだと、僕は思う」
『……と、大先生は仰っているわけだ』
『レオ、茶化さないように。ではレポートはこのまま本国に提出しますが、よろしいですね?』
「オーケー。あぁそれと、滞在経費をもうちょっと出してほしいんだけど……」
『……。善処しましょう』
君が日本に派遣されるべきだったんじゃないかな、と送信しかけて、フェイズはぐっと堪えた。
闇守護業 祐太 @yu_ta
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