御都合主義者

今宮京

御都合主義

「ねえ、起きなさいよ。」

目覚める。俺は寝起きの悪い方だ。

だが今はすっきりとしている。

ところで......

「お前は誰だ?」

見渡す限りフラットな空間。そして椅子がちょこんと一つあって、かわいい女の子が座っている。

「あ~、はいはい。順を追って説明するからとりあえず黙っててね。」

実に横柄だ。人をこんなところに呼べだしておいて上から目線とは。

だんだん腹が立ってくる。

「どうせ『あなたは死にました。しかし若いので異次元に転生させてあげます。』とか言われるのがオチなんだろ。だいたい.......」

「今説明するから黙っててよね。

では、早瀬裕也さん。あなたはイケメンにして秀才、スポーツもそこそこできてモテモテな、正に華の男子高校生にも関わらずアニメやギャルゲーにハマり、挙句の果てには

『彼女?ああ、いるいる。一つしたね。次元がwwwwうはwwww』

などと口走る始末。いいですか?このまま行くとあなたは良い大学には行けます。一流企業にも就職できます。

しかしあなたは独身で生涯を終えます。二次元思考のせいで。あなたのような優秀な遺伝子が子孫を残さない事は大問題です。単刀直入に申し上げます。彼女を作ってください。そして子孫を残してください.......とのことです。」

「余計なお世話だ。彼女は作らん。」

「モテるのになんでよ?」

「三次元の女はろくなのがいない。顔が良ければ中身は残念。顔が悪くて中身も残念。こんなニ択で俺は鼻の下を伸ばして彼女を作る気にはなれないね。」

「はいはい。ヲタの言い訳ね。キモ」

この女のムカつく事と言ったらない。ちょっとカワイイからって高飛車な。だいたいこんなわけの分からない空間にいきなり連れてこられて機嫌良くいられるわけがない。清少納言だったらいとわろしとでも書いているだろう。

「でもね、あなたには救済措置が取られているわ。」

そう言うと指をパチンと鳴した。すると辺りが眩い光に満ち溢れてきて.........紙と鉛筆が出てきた。大仰な割にちんけなことこの上ない。

「この紙にあなたの好みの女の子を書いていいわ。それこそスリーサイズや名前、性格はもちろん好きな食べ物なんかも決めていいのよ。」

はっとする。

「おい、じゃあ嫁の名前書いたら現実に出てるわけなのか!?」

「あーいたいた。前、そう言う事書いた人。そしたらそのアニメの原作者が出てきたっけね。オッサンよ。三十歳くらいの。あれは爆笑よね。でも基本的には安全よ?」 

オッサン出た時点で危険じゃねーか。



さあ、苦悶の時間だ。どんな容姿にするか悩む。嫁のままと言っても語呂が乏しいため正確には書けない。

貧乳派だけどアニメみたいな巨乳jk も捨てがたい。大人しいかうるさいか。そもそも後輩、先輩とかもありだな。バカっ子か天才肌か。選択肢が多すぎる。

いざこういうことになると悩ましい。

「ねえ、どうでもいいけどまだなわけ?」

「だまらっしゃい!こっちには一生がかかってるわけなのよ!!」

「だいたい、こっちとしてはあんたなんて数ある仕事の一件なんだから早くしてほしいわけ。..............あー、もうじれったい!私を見て!」

いちいちうるさいがとりあえず目を上げる。

またもはっとする。

「気づいたようね。私はあなたのタイプの姿をしているわけ。性格は後で考えて良いから、とりあえず私の姿を紙に書いて。」

こいつ使えるじゃないか。素直に姿を書き込む。性格は嫁のままにして、声あの声優さんで......

「書けたぞ。」

悔いは無い。誤字脱字は気をつけたはずだし、そもそも嫌というほど読み返した。

「遅かったのね。......確かに受け取ったわ。じゃあ明日学校に行ったら転校生が来るから、その子と付き合ってね。もし付き合えなかったら........」




目覚める。確かにあれは事実だ。ただ最後の付き合えなかった場合と自分が何を紙に書いたか覚えていない。変な寝方をしたせいで寝違えた。今日は早めに学校へ行こうと思う。時計を見る。寝過ごした。遅刻だ。おいおい、今時食パンくわえて「遅刻〜」なんて流行らないぜ。

でも夢はどうやら本当だったようだ。












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御都合主義者 今宮京 @mizuki1111

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