星は砕けて夜に冴える


 ロゼッタの街は夜となり、ボクは異世界列車の前に立った。

「もう行くのですか?」

 フィーラの言葉にボクは頷く。

「これから二人はどうするの?」

「この街にいるよ。濃密な旅だったから疲れた」

「わたしも満足です。伝説が見れたから!」

 冒険に満足した冒険者はこれからどうなるのだろうか。

「ケレードの借金返せよ」

「前金! まあ、もう返すヒトは旅立ちましたけどね」

 ケレードの行動力には見習うものがある。

「これ持っていてください」

 フィーラから星の石を受け取った。

「いいの?」

「元々、この世界には存在しないもの。もし、この石をめぐって争いが起きるのは問題です」

 一円玉であれだけ興奮するのだから星の石ならこれではすまなそうだ。

「それにしてもケレードはどうして星の石を依頼したんだろう」

「絶対見つからない自信があったんでしょう。ハハハ!」

 トバは笑う一方、フィーラは難しいカオをした。

「星の石はウソの話。ウソの話はならすぐ消える。でも、ウソの話だったのに今まで存在していた。あ! 星の石は異世界にあったから伝説として残っていたんじゃ!」

「フィーラ、考え過ぎ。話が面白かったから残っているんだよ」

「そうかな」

 三人で笑いあっていると、異世界列車の汽笛が鳴った。

「もう時間だ、さようなら」

「さようなら」

「さようならー」

 異世界列車は異空の群雲へ向かい、ロゼッタの街を後にした。


 異世界列車の座席に座り、星の石を見つめていた。

 この輝きはボクの世界にはない、やわらかい輝き、持ち帰りたいという欲が出て来る。そんなのできないの知っているのに。


 異世界列車が異空の群雲から抜ける。 

 星の石は静かに砕け、空に消えた。


 日帰りの旅の終着点は京都駅ビルの空中庭園。

 そこに降りた異世界列車からボクは下車する。

 真夏の京都は蒸し暑い。午後6時から7時ぐらいは特にきつい。

 夜の湿気にやられたボクは空中庭園にある石段に座った。


 水色から藍色へと傾き出した夜空に星が冴える。

 砕けた星の石がそこに現れたのか、そんなことを思う。

 苦笑するボクを尻目に、異世界列車は旅へと出た。

 

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異世界18きっぷ 羽根守 @haneguardian

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