#4

 事務所へ帰ってしばらくすると、インターホンが鳴った。一日に二人も依頼人が来るなど、天変地異の前触れなのではないか。

「はい、今開けますね」

 右曲君が開けたドアの先には、清楚な女性が立っていた。しっかりと、姿を持って。

 右曲君が淹れた麦茶を一口飲んでから(彼女も麦茶を勧められた際、『お構いなく』と言った。今度は驚く要素は皆無であったが)、依頼について語り始めた。

「娘、娘を探してほしいのです」

 娘さん───ですか。行方不明なのでしょうか。

「ええ。四日ほど前から姿を見せません」

 すぐに探し始めたいところなのですが、今日はもう暗くなってしまっています。また明日、お越しいただいてよろしいでしょうか。

「しかし───」

 今日急いで全てを中途半端にしてしまうより、明日のために十全に準備をしたほうがいいと思いますが、どうでしょう。

「そう───ですか」

 お名前、教えて頂いてよろしいですか?

「私は矢呑満月と言います。娘の名前は、」

 矢呑瑞季です。と。

 私の愉快な一日は、一日では終わらない。

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刻該骸の物探し @Chaikey

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