⑤
家へ帰ればすぐに夕食だが、透はあまり空腹を感じていない。資料の細かい不備を課長に
駅のエスカレーターを降りて、駐輪場へと歩く。屋根下の蛍光灯が音を立てて点滅している。コンクリートの隙間から雑草が伸びている。襟首の熱を
道草でも、散策でもない、気ままな回り道だった。学生の頃から、こうして無為に自転車を走らせることが好きだった。それほど遠くには行かず、といって近所でもない、日常で使うことのない道。見慣れぬ景色に囲まれてペダルを漕いでいると、自力で進んでいる実感が強く沸いてくる。
通りから逸れて
空には少しずつ、静かに闇が注がれてゆく。堤防の向こうの雲はまだ光を湛えている。空が広く感じられるのは、いつもより視線が上向いているからかもしれない。
有里の宿題は終わっているのだろうか。マンションの外灯はいつも明るすぎる。しかし、それでもいいと透は思った。
カレンダーをめくるように あじさいすきお @ajisai_sukio
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