緻密に描写されていく異界や異能、日本の神社というちょっと特殊な世界が鮮烈な世界観を保っていて引き込まれてしまいます。
見て触れて来たかのような、文字通り目の前が変わっていく描写は圧巻です。
日常で触れ得る異界の設定もじっくりと考え込まれており、それに対する専門家の姿勢や信念には、守られて来た伝統のような厳かな重さが伴っていました。
もちろんそれだけではなく、それに巻き込まれてしまった生徒たち。
それを巡る先生という立場。過去の事件。姉という存在。巫女。
話の展開も堅実で、目の前の事件をハラハラと追っていくうちに、すっと差し込まれていた伏線やキーワードが気になっていく。
少しずつズレていったものが一気に噛みあっていく構成は素晴らしくもあり、正直もっと読んでいたくなる作品でした。
神道独特の世界や”あやかし”に興味がある方は是非是非、決して損はしない。満足のゆくものがここにはありました。
おすすめです!!
異界の存在と渡り合う力を持った主人公を中心に巻き起こる、人と異界とのさまざまを綴る和風伝奇ストーリーです。
お嬢様学校を主な舞台とした少女漫画的なキラキラした世界と、人ならざる得体の知れないものたちが集うドロドロとした世界。
二つの世界は壁一枚で共存していて、ふとした均衡の崩れから歪みを生じさせてしまうのです。
そして現れる異界の存在――異神、アダガミ。異神を巡る事件に主人公が立ち向かっていく過程が物語のメインとなりますが、しかし彼にはどうやら異神に関して過去のトラウマがあるようで……。
女子高校の新任古典教師にして都内某所にある水秦神社の若き宮司、曲直瀬燐太郎。
そんな燐太郎に興味津々な女子生徒、新木悠乃。
嫌味や小言を漏らしながらもなんだかんだで燐太郎を心配している幼馴染みの辻杏子。
主に社務所を任されている好々爺然とした高木さん。
その他魅力的な登場人物たち……。
雰囲気たっぷりな和風あやかしストーリーに加え、堅物でなにかと不器用な曲直瀬先生と自らの好奇心に無自覚な悠乃ちゃんとのもどかしいやり取りからも目が離せません。
東京の実在地名と架空地理の混ざりあった伝奇的な叙述も郷愁を誘います。
キャラクターたちの軽妙な掛け合いも見もので、慣れない教師生活に四苦八苦する先生を暖かく見守るのもまた一興でしょう。
あと、悠乃ちゃんがとにかくかわいい。
おススメです!