ふくろうさん
卯野ましろ
ふくろうさん
お月様とお星様が、きれいにかがやく夜。森の仲間たちは、美しい夜空につつまれて、すやすや、すやすや。
けれど、うさぎのうさちゃんは、ちがいました。
「ランランラン♪ ランララン♪」
夜空の下で、楽しそうにダンス。そして、真夜中にまだ目を開けているのは、うさちゃんだけではありませんでした。
「ほう。お上手、お上手」
「あ、ふくろうさん!」
ふくろうさんも、おきていました。
「でも、もうねる時間だよ。森のみんなは今、ねているよ」
「ふくろうさんだって、今おきているじゃないの」
「ぼくは、夜行性だからね。夜、おきているんだよ」
「じゃあ……わたしも、やこうせい!」
「きみは朝も昼も、元気に遊んでいたじゃないか。ぼくは昼間は、ねているだろう。うさちゃん、きみは夜行性ではないよ」
「むぅ~……」
うさちゃんは、ほっぺをふくらましました。
「わたし、ねむくないもん」
「ほう。それは本当かい?」
「ほ、本当よ!」
しんぱいそうに聞いてきたふくろうさんに、強く答える、うさちゃん。でも、その後すぐに……。
「ふあ~あ……」
「おやおや」
「あっ……」
ふくろうさんに大きなあくびを見られて、うさちゃんのほっぺは、りんごのように、まっかっか。
「うさちゃん、本当は、ねむたいんだろう?」
「うん」
「何で、ねむらないのかな?」
「わたし、夜がこわくて、さみしいの。くらくて、しずかで。だから、ねるのがこわいの」
「ほう。でも、だいじょうぶだよ。ぼくが、そばにいるから」
「ふくろうさん、そばにいてくれるの?」
「もちろん。もう何も、こわがらなくて、いいんだよ」
ふくろうさんのやさしさに、うさちゃんの暗い顔がパアッと明るい笑顔になりました。
「ありがとう!」
「どういたしまして。おやすみ、うさちゃん」
「おやすみなさい、ふくろうさん……」
うさちゃんは、すぐにねむりました。
気持ちよさそうに、ぐっすりとねむる、うさちゃん。ふくろうさんが木の上から、うさちゃんをやさしく見守っています。
「ほう……」
うさちゃんを見守っている中、ふくろうさんは、ためいきをつきました。何だかさみしそうな、ふくろうさん。
「いつものことだけれど……やっぱり、さみしいなぁ」
ねむる森の仲間たちをいつも見守っている、ふくろうさん。そんなたのもしいふくろうさん、実は毎晩さみしい思いをしていました。みんながねている真夜中、おきているのは自分だけだからです。
「ほう……」
「ふくろうさん」
「ん?」
だれかが、ふくろうさんをよんでいます。
「夜空を見上げて」
「……ほう! お月様にお星様!」
夜空のお月様とお星様。やさしい目で、ふくろうさんを見ています。
「いつも、森の仲間たちの見守り、おつかれさまです。ふくろうさんは、わたしたちがいつも見守っています」
「わたしたちも、昼間は森の仲間たちがいるから、安心して休めるの」
お月様とお星様のことばに、ふくろうさんはハッとしました。
「ほう! そうだ、ぼくも昼間は森の仲間たちのおかげで、ぐっすりねむれるんだ。いつだって、だれかがだれかを大切に思っているんだ!」
元気が出たふくろうさんを見て、お月様とお星様は、とてもうれしくなりました。
「お月様、お星様、ありがとう!」
ふくろうさんがおれいを言うと、お月様とお星様は、ニコッとわらいました。そして、またいつものように、しずかに美しくかがやくのでした。
「ぼくは、さみしくない。みんながいるから」
それからふくろうさんは、毎晩むねをはって、森の仲間たちを見守りつづけたのでした。
ふくろうさん 卯野ましろ @unm46
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