始まりは不思議な感じ、穏やかですらあるんです。
文芸部に所属するごく普通の高校生の太田君。彼が公園で妙な物体を見つけるところから始まります。
この導入部からまたワクワクさせてくれるのですが、この物体を通して彼は異世界へと誘われます。
その際に付与された能力『トリックスター』。このよく分からない能力がまた魅力たっぷりです。
そして始まる異世界での冒険!
そこには魔法があり、ゾンビがいて、世界の秘密があります。
「ウォルター」となった太田君はその能力と共にこの世界の人々に巻き込まれ、パンを配達したり、魔法勝負を挑まれたりと、慌ただしい毎日。
さらには文芸部の仲間までもを巻き込んで、さらにこの世界の秘密、深淵へと近づいていきます。
物語が進むにつれて加速度的に世界がドンドンと広がっていき、同時に様々な謎が散りばめられていきます。
このミステリアスな感じがまたこの作品の魅力の一つになっています。
とはいえ、文章も読みやすく、キャラクターは親しみやすく、独特の世界観も面白くおすすめポイント満載です。ですが何よりもお勧めしたいのは、これが読者を楽しませることを目的とした、エンターテイメント作品だということ。
ぜひ読んでみてください!
文章が簡潔でとても明確なので異世界の様子が容易に想像できて素晴らしいです。その中にもどこかとぼけた、といいますか、肩の力が抜ける空気感があって、登場人物にもその魅力が遺憾なく発揮されてます。
世界の仕組みや謎が順々に明かされていくので続きが気になって気になって仕方ない。主人公たちの行動範囲も順を追って広がっていくので同じ視点でどきどきわくわくできます。上手につくってるなあと思います。
ふんだんに出てくる固有名詞や用語もとてもよく考えられていて魅力的。このセンスが羨ましいです。
まだまだ謎はてんこ盛り。後編に乞うご期待です。