1-4 招待と登録

今は昼食を済ませて1時間経過した、午後2時ごろ。


僕たちは明日の朝から、前に言っていた精霊の森に行こうと思っている。


まだ、少女たちには言っていないけど、多分ついてくるだろう。


はっきり言って、死ぬ可能性の方が高い。


しかし、冒険者登録をして、ナフタリアかツクヨのどちらかの職業が戦闘向きであるのなら、話は違ってくる。


だから、今日中には冒険者登録をして、装備を揃えたい。


今からその事を話そうと思ったのだけど、出来なかった。


ナフタリアがなんかしらんけど、大きくなってしまったんです。


ツクヨが12歳だから、ナフタリアは見た目的にツクヨよりは上で、僕よりは歳下だと思うんだけど、僕は目を開ける事が出来ません!


だって、ナフタリアが今あられもない姿になっているからです。


うーん、今のナフタリアはかろうじて胸と股関節の部分を隠しているからあられもない姿というのは、少し違うのかな?


それで12歳以上という事は、中学生以上という事になる。


それが、どういう意味か分かりますでしょうか?


中学生以上という事は、胸がある程度成長しているという事なのです。


ついさっきまで、あんなに小さかったナフタリアがこんなに立派になってしまって、僕は嬉しくもあり、悲しいです。


「ナフタリア、ツクヨ、ボクハイマカラアナタタチノフクヲカッテクルノデ、シバシオマチヲ」


僕は棒読みでそう言って、目を開けずに部屋から出て行き、服屋へと向かった。


この時の僕は、まだ理解出来ていなかった。


中学生という事は、ブラジャーが必要だという事を。



今は午後4時前。


「買って来たよ」


そう言って、僕は部屋の中に入っていった。


買ってきたのは、僕とナフタリアとツクヨの分。


流石に僕も制服のままというのもおかしいと思って買ってきた。


「早く着替えてくれよ。まだ、今日はしなければならない事があるんだから」


「「分かった」」


今も僕は少女たちから背を向けて、目を手で覆い隠している。


後ろで、肌と衣服が擦れる音がする。


ちなみに買ってきた服は、完全に僕の好みです。


数分経った頃、完全に音が止んだから、目を開けて聞く。


「サイズはどうだ?」


「ぴったりです。測ってもいないのに、どうしてこんなにぴったりなんですか?」


いや、僕にそんな事言われても知らないよ。


「ナフタリアはどうだ?」


「私もぴったりです。買ってくれてありがとうございます」


あれ?


こんな声の人いたっけ?


僕、ナフタリアに声をかけたつもりなんだけど。


「あの、どちら様で」


あ、言っておきますけど、まだ僕は少女たちの方を見てませんからね。


「私です、ナフタリアです」


「え? マジで? ナフタリアなのか? 喋っている言葉を全て文字に起こすと、ひらがなになってしまうあのナフタリアか?」


「ひらがなというのが、何かは分かりませんが、私はナフタリアですよ。それにこの姿が本当の私です」


「そうか、ならいいんだ。」


そう言って、僕は少女たちの方に向いた。


少女たちの姿を見て、僕は動きを止めた。


いや、少女たちではない、ナフタリアの姿を見て僕は動きを止めた。


だって、ナフタリアは人間ではなかったのですから。


勿論、人型ではあるのだけど、人間ではない。


ナフタリアは人間ではなく、亜人と呼ばれるものだった。


狐人。


日本では、そんな言葉聞いた事が無かったけれど、ナフタリアの姿を言い表すには、それしかなかった。


そして僕は無意識にナフタリアの臀部から生えている尻尾に手を伸ばしていた。


その僕の掌には、もふっとした感触が伝わった。


柴犬みたいな少しザラッとした毛の感触ではなく、ポメラニアンみたいなふわっとした毛の感触でもない。


今までで、感じたことのない毛の感触です。


「んっ///」


ん? 今なんかとても艶かしい声が聞こえたんだけど。


「しずく、尻尾を触るのは辞めて下さい。狐人の尻尾は、性感帯の一つなんですから。なので、その触らないでいただけませんか? 」


「うわっ! ごめん。性感帯とは知らなかったから」


「いえ、いいんです。それで、しなければならない事ってなんなんですか?」


「あぁ、今から僕は冒険者登録をしに行こうと思っているんだよ」


「そうなんですか? じゃあ私も行きます。しずくは私がいなければ何も出来ませんから」


いや、出来るけどね。


炊事、洗濯とか。


「それで、ツクヨはどうする? 無理に冒険者登録しなくてもいいけど。でもどっちかって言うと、僕的にはしてほしいけど」


「分かりました。なら、早速行きましょう」


(相変わらず仲がいいなぁ。私があの中に入れる隙間なんてあるのかな?)


「どうした、ツクヨ?」


「何もありません。 」


「そうか? なら行こうか。」


(やっぱり遠慮してるのかな。こっちから積極的に接した方がいいのか? 僕が無理言ってツクヨの主人になったんだから、仲良くしないとな。)


そう思ったから、僕はツクヨの手を繋いだ。


「何ですか?」


「嫌か?」


「いえ、嬉しいです」


(表情、やっぱり硬いな。あの時は泣き笑っていたのに抑えてるのか?)


ツクヨと手を繋いでいると、ナフタリアも手を繋いできた。


左手にツクヨ、右手にナフタリア。


日本にいた時は、こんな事絶対起きないと思っていたけど、異世界だとこんな事が起こってしまう。


凄まじいな、異世界リアリティ!



はい、どうも音無 雫です!


今は冒険者ギルドに向かっている途中です。


でね、何故僕が冒険者ギルドに登録したいのかと言いますと、冒険者登録すると、二つ、僕にとっていい事があるからなんです。


その内の一つは、魔物を倒した時に落とす魔石や爪などのドロップアイテムを売った時に発生する金額上昇です。


この世界では、別に冒険者登録しなくても、魔物を倒して、魔石やドロップアイテムなどを売って生計を立てている人はいるんですけど、いかんせん換金金額が低いんです。


換金金額というのは、魔石やドロップアイテムなどを売って渡されるお金の事。


魔石やドロップアイテムなどを売って出来たお金じゃないからね。


確かにドラゴンなんかの上級魔物を倒せる人なんかはいいかもしれませんが、僕みたいな治癒術師という回復にしか能が無い職業には、キツイんです。


いろいろとね。


さっきも言った通り、換金金額は売って出来たお金をそのまま貰えるわけではなく、手数料というものがかかるんです。


しかし、冒険者登録をすると手数料が免除されるんです。


なので、結果的に魔石やドロップアイテムなどを売った時に発生する金額が上昇する事に繋がるんです。


そして、二つ目。


二つ目は、ステータスカードの配布です。


ステータスカードというのは、僕もはっきりとは分からないんですが、神代の時に創られた魔導具、アーティファクトの一つです。


ステータスカードは冒険者たちの身分証明にもなり、自分のステータスを思い描かなくても分かるという、画期的な魔導具なんです。


ステータスカードがあれば、ナフタリアやツクヨのステータスが分かり、どのように魔物と戦えばいいのかを考える事が出来るのです。


それに、何と言ってもタダなのです。


詳しく言うと、冒険者登録はタダなのです。


タダでステータスカードという素晴らしい魔導具をゲット出来るんです。


タダというのは、恐ろしいものですね!


というわけで、着きましたね。


冒険者ギルドに!


「さて、行こうか」


「「はい」」


僕たちは木製の扉を開け、ギルドの中へと入っていく。


冒険者ギルドなので、勿論他の冒険者がたくさんいた。


その冒険者たちの視線は僕たちに全て向いていた。


あ、違うわ。


僕なんて、たまたま視界の中に入ってるだけだわ。


ツクヨも、ナフタリアも僕には勿体無いくらい美人なので、冒険者たちの視線はツクヨとナフタリアに注がれているわけなのです。


その視線の中、僕たちは受付へと向かった。


受付には、流石異世界と言えるほどの美人しかいなかった。


黒髪のお姉さんや、金髪のお姉さん。


このお姉さんを見るためだけに、冒険者ギルドに通っている人もいそうなぐらいの美人さん。


そういう僕も見惚れている。


そこで、僕の右手にかつてない痛みが走った。


何事かと思って右手を見ると、ナフタリアが僕の手をつねっていたのだ。


それも、すごい形相で。


でも、僕はそれを耐えながら「あの、冒険者登録したいんですけど」と言った。


僕は先ほどの話でも出てきた黒髪のお姉さんに言った。


「冒険者登録ですか? では、その水晶に手をかざして下さい」


水晶というか、水晶玉だな。


水晶玉の大きさは直径で言うと、30cmくらいだろうか。


「水晶ですか?」


「はい。その水晶に手をかざすだけで、個人情報とステータスが分かります。そして、その右の機械からステータスカードが出てきます」


ほぅ、なかなか便利な物だな。


僕は水晶に手をかざして「これでいいのか?」と聞いた。


「はい。しばらくお待ちくださいね」


そう言われ、しばらく待ってると、水晶が光り出した。


おぉぉぉぉぉぉ!


何これ、すっげぇーーーー!


めっちゃ光るじゃん!


……こほんっ。


少々騒ぎ過ぎました。


「はい、冒険者登録とステータスカードを発行しましたよ」


「もう終わりなんですか?」


「はい! これをどうぞ。」


ステータスカードは見た目プラスチックみたいな感じなんだけど、触り心地は金属だった。


それからは、ツクヨとナフタリアも冒険者登録とステータスカードを発行してもらった。


そこで、僕は悲しくなりました。


何故なら、ツクヨが剣聖でナフタリアが賢者だったからなんです。


剣聖や賢者などの職業は上級職業と呼ばれ、その上級職業はステータスの上昇値やレベルの上がりやすさなどが、初級職業である僕とは段違いなんです。


なので、悲しくなりました。


僕だけ置いてけぼりなので、冒険者ギルドの隅っこで拗ねてます。


そして、そんな僕を慰めているのがナフタリアだった。


ツクヨはその時何をしていたかというと、ステータスカードに夢中でした。


僕よりステータスカードの方がいいみたいです。


その事により、さらに拗ねました。









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5つのチートで異世界最強な治癒術師 招き猫 @bell5525subaru

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