エピローグ
「昨日よ……親父に話してみたんだわ。どうせ信じねぇだろうとも思ったんだが、まぁミカさんのこともあるしな。そしたらよ、親父の奴。泣いてやがった。あんな顔、はじめて見たぜ全く」
「よく信じたな親父さん」
「ま、自分の事だったし。30年以上前の話っつってもな。しかし、蒐集部ってのは毎回こうなのか?」
「こんな激しいのは久々だよ。普段はああいう悪いものが溜まらないよう巡回したりの雑用だな」
「いいじゃねーか、それで。ミカさんみたいな想いは無くせなくともよ。それを利用しようっていう不届きな輩はぶっとばさなきゃなんねー。そうだろ? 俺にも手伝わせてくれ」
「入部するってことか? 大神田がなんていうか……」
「もえは関係ねーだろ。……この空き地、結局事故のせいで工事は中止で、負債やら何やらでそのままなんだとよ。親父もあれこれ動いたらしいぜ。知らなかったわ。てなわけで、ここへの巡回は俺がやるんでよろしく」
「ま、皆に聞いてみてだな」
「おいおい入部拒否する部活とか聞いたことねぇぞ」
これは吉岡もやってきそうだな、と裕哉は頭を掻いた。
昨日あのあと吉岡に、
「はじめはただ顔が良かったっていうのと、変わっているっていうのがポイントだなだけだったんですけどね。……私は諦めませんので、あしからず」
とよくわからない宣言をされていた身としては、手は欲しくとも問題児が増えるのは頭の痛い話であった。
「んじゃ裕哉、俺の失恋の慰めとしてカラオケ行こうぜ」
「失恋?」
「そう、俺の初恋だぜ? ここで彼女の耐え忍ぶ声を聴いた時から、虜だったのさ。ま、フラれちまったけどな」
「父親と同じ相手が初恋とか、マジかよこいつ。まぁカラオケくらいなら良いが。皆も呼ぶか?」
「よせやい。ここは男だけで失恋ソングといこうじゃねぇか」
「それ俺関係ないよな……」
二人は、花を残して空き地を去って行った。三嶋は一度だけ振り返ったが、未練など残さない。ここには、何度だってくるのだから――。
あやかししらべ【星祭編】 草詩 @sousinagi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます