エピローグ

 それからはもう、あの不思議な夢を見ることはなくなった。

 その代わりに時々見るのは――。



 昼休みに、2人で弁当を食べている夢。

 放課後の教室で、2人で話している夢。

 2人で並んで花火を見ている夢。

 夢の中の玲奈はいつも笑顔で。

 2人で過ごすこの時間が、とても楽しくて。

 これが夢だということが、どうしようもなく悲しくて――。



 こういうときは、目を覚ますと、勝手に涙が零れ落ちている。

 胸に甘く切ない痛みがよみがえって、しばらく動けずにいる。

 そうしたら、あの優しい声が、そっと言ってくれる気がするんだ。



――泣かないで。蒼太くんにはいつも笑顔でいてほしいから――



 ゆっくりでいいから、1歩ずつ進もう。

 大丈夫。玲奈のことはずっと忘れない。

 いつかまた、どこかで巡り会えることを、ずっと願っているから――。



 花火のようにはかなかった君。

 君と一緒の最後の夏が、もうすぐ終わる。

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花火のような君と、最後の夏 海月陽菜 @sea_moon

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