老衰で死にてぇぇぇぇぇ!!!!
ちびまるフォイ
死に方受験の合格者番号1524
「なぁ、最後に死ぬとしたらどんな死に方がいい?」
「うーんどうだろう」
「オレ様はだんぜん老衰だね。静かに眠るように死にたいな」
「死ぬ話をするよりも貸した金かえしてくれない?」
「そんなの借りたっけ?」
男はとぼけてごまかした。
いつもこんな調子で踏み倒されている。
「それより、オレ様についてこいよ」
男と一緒に向かった先はどこかの合格発表の場所。
掲示板には受験生の番号がずらりと表示されている。
「ここは?」
「死に方受験の発表会だ。ほら、あの番号見てみろよ」
安らかな老衰
3233
「ほら! オレ様の番号がのっている! 死に方に受かったんだ」
「いや、それよりも金を……」
「うるせぇよ。オレ様の死に方合格を祝福するために連れてきたんだ。
ここで野暮な話はナシだ」
老衰掲示板には多くの人が集まって番号を確かめている。
みんなこの死に方がいいんだろう。
他にも掲示板はあるが、老衰ほどの人だかりはない。
「ほかにも死に方受験できるのか?」
「ああ、そうさ。苦しんで死にたい人用にも死に方受験はある。
まったく、どんなマゾが受験するんだか」
「俺も死に方受験やってみる」
「そういうと思ったぜ、老衰で誰でも死にたいもんな。
まぁ、オレ様みたいに天才じゃないから必死に勉強するこった」
かくして、俺の死に方受験がはじまった。
合格者発表の日、男と一緒にまた発表会にやってきた。
「お前の番号は?」
「1524番」
老衰掲示板は今回も大人気で人だかりができている。
男は勝手に俺の番号が合格しているか探し始めた。
安らかな老衰
1515
1520
1521
1523
1530
1532
「ギャハハハ! 落ちてんじゃねぇか!!」
別の掲示板から戻って来た俺を男は指さして笑った。
「で、滑り止めで受けたほかの死に方はどうだったよ?」
「ダメだった。受かってなかった」
「やっぱりな。オレ様みたいな天才こそが安らかな死を受け取るべきで、
お前みたいなうんこ凡人はあの世でネタにできるくらいの
苦しい死に方をするのが一番なんだって」
「まだ諦めない。どうしてもちゃんと死に方にさせたい」
「おーおー頑張れよ。オレ様も応援してやるよ」
「それじゃ貸した金を……」
「もう忘れろ」
死に方受験もかなり競争率が高いことがわかった。
自分のような考えをする人間はほかにもいるということだ。
ちゃんと死ねるように、死に物狂いで勉強をはじめた。
勉強のし過ぎで死ぬ「勉死」というものがあったなら
おそらくその一歩手前までいっただろう。
2回目の死に方受験発表。
「よぉ、ついに合格発表だな。
前に渡したオレ様の写真は持ってるか?」
「いや、手元にない」
「おい、死に方合格したオレ様の写真を欲しいって言ったのはお前だろ。
お守りに使うために、今日こそ持ってくるべきだろ」
「いいんだよ」
俺は男の文句を流して掲示板へと足をはこぶ。
「お前の番号は?」
「1524番」
「前と同じか」
安らかな老衰
1511
1512
1522
1525
1540
番号を確かめた瞬間に男は爆笑した。
「ギャッハハハハ!! また落ちてるんじゃねぇか!!
オレ様の写真を持ってこないからだ! アハハハハ!!」
「いや受かってたよ」
「はぁ? なに言ってんだ? どう見てもないじゃねぇか」
男は受験番号をもう一度確かめて掲示板を見直す。
やっぱり老衰合格者発表の中に番号はない。
「……やっぱりないじゃねぇか、強がってんじゃねぇよ」
「いや受けたのは老衰じゃない。窒息死だよ」
窒息死
1520
1524
1600
1628
「ほら合格してる」
番号を見た瞬間、男はまた笑い転げた。
「おまっ、お前ほんとうにバカだな!!
窒息死を受験するなんて真性のマゾじゃねぇか!
そんなに苦しんで死にたいのか! アハハハ!」
「これでもなかなか競争率が高かったよ。
俺と同じことを考えてる人が世界には多いんだなって思った」
「同じことを考えてる?」
俺は自分の受験手帳を開いて見せた。
受験者には、俺ではなく、男の写真と名前が掲載されていた。
「殺したい相手のために替え玉受験したかいがあったよ。
せいぜい苦しんで、あの世で話のネタにでもしてくれ」
男は窒息死したように顔が青ざめていった。
老衰で死にてぇぇぇぇぇ!!!! ちびまるフォイ @firestorage
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