第35話 エピローグ
「お目覚め?」
遠くで……遠くで……声が聞こえた気がした。その声はどことなく懐かしく、ぼんやりとした頭にゆっくりと海の波の音のように優しく染み渡っていく。
「カーテンを開けますかしら」
陽光が瞼の上から暖かく光を通す。体はけだるく思うように動かない。ゆっくりとゆっくりと目を開けていく。白の壁紙の個室……そこにいたのは……制服を着た女子校生らしき人物だった。長い黒髪が映えて美しく太陽の光を反射しそよ風に乗ってなびいている。
「喉が渇きません? お水はお飲みになるかしら~?」
差し出されたストローに口を伸ばす。喉に染み渡る感覚からカラカラになっていた事を自覚する。
「お名前は……
名前……なんだろう。どことなく実感がわかない。朧げな記憶は形になりそうで……またバラバラになっては消えていく。
「あれあれ? 違ったかしら? あなたのカプセルにそう書いてあったのに」
首を振って見渡す。病室のようだ。ベランダから太陽の光に交じってチチチと鳥の鳴き声が聞こえ始める。
「コールドスリープのカプセルには二二三十と書かれていたかしら」
「今は二四三十年。そろそろお目覚めになるかしら? 東雲君」
ようやく僕は理解した。
「おはようございます。天継さん」
神様の殺し方 かくかく近々 @unyora
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