Nito(にと)

小学2か3年生の頃だったと思います、夏でした。


夜、4つ上の中学生の姉さんが塾から帰ったとき、何とも言えない不自然な表情で僕と母にこう言います。


━━家(マンション)の下にお坊さんみたいな服装の

  人いたよ、藁の帽子被ってて顔見えなかった。


姉さんはその人が怖くて走って帰って来たそうです。僕と母は「幽霊なんじゃない?」「いつの人だよ」などと言って姉さんをからかっていました。


少し不機嫌になってしまった姉は僕にそのお坊さんらしき人が今いるかどうか確認させようと外を伺わせましたが、それらしき人物は見当たりませんでした。


結局そのときは姉の勘違いということでその話題は終止符を打ちます。


そしていつものように1日のすべき事を終えて就寝に入ります。




寝ていたのですが、僕は深夜に目が覚めてしまいました。特に暑かったとか、眠れなかったなどの理由ではありません。


眠かったので再び寝ようと体を倒そうとしたのですが、僕は何か異変に気がつきます。皆が寝ている光景を見回してみるとやっぱり何かおかしい。

しばらく眺めていたのですが、ようやく異変の正体が判明しました。


僕の家族は寝るときは、皆で川の字になって就寝しています。夏だったので薄い掛け布団を皆腰に掛けていました。

結構間隔は狭く、見回すには十分過ぎる部屋です。異変は「足」でした。


何の異変かというと足の本数です。

四人家族だったので足の本数は8本の筈、ですが幾ら数えてみても結果は9本。明らかにおかしいと思いました。

この足は母、この足は父。といった感じで何度確認しても、一本だけ余ってしまいます。


ですがその時の僕は、皆を起こすでもなく、掛け布団を退かすでもなく、また寝ることを決めたようです。多分アホだったのでしょう。別に恐いとは思っていませんでした。


それからは朝を迎え、いつも通りの日常に戻りました。


ただの夢だったのかもしれないけれど、今思えばとても不思議な体験でした。

もしかしたらその不可思議な一本の「足」は、姉さんが言っていた、お坊さんのものなのかもしれないですね。

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Nito(にと) @jodanjodan

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