1day part5 ~別れと新しい人生

 私とセブンは宝石買取店でセブンの持っていた財宝を換金し大金を得て、その後はなんやかんやあったがすぐにアパートに入居する事ができた。

 時計を見ると午後5時を回っていた。

「セブンはこの後どうするの?どこか行くの?」

 私は修道院に戻って忘れ物を取りに行くついでにリリアにもう聖職者でいられない事を告げようと思っているがセブンが同行するなら前者は可能でも後者は不可能だろう。

 念のためにセブンの予定を聞いてそれからどうやって動くか考えようと思って聞いた

「この後か…少し気になることがあるから出かけるが…俺の分の食事は用意しなくていい。おそらく食べる時間はないだろうしな。」

 セブンの『気にこと』と私の行くところが一致していなければいいけど…

「そうなのね…出かけるなら鍵は忘れずに持っていきなさいよ。」

「お前は親か。それよりセシルもどこかに行くのか?」

「ええ。少し用事があるわそんなに時間はかからないけど。」

「そうか…それじゃあ俺はさっさと俺の用事を済ましてくるか。」

「行ってらっしゃい。変な事やらかしたらただじゃおかないわよ。」

「それはお互い様だ。」

 セブンは吐き捨てる様に言って家を出ていった。

「私も早いところ用事を済ませないとね。」

 私も部屋を出て修道院に向かった。


 修道院に着くと私はまず自室に向かおうとした。

 自室の前までは不思議なことに誰にも会うことは無かったが、私の部屋の扉の前で一人の男が立っていた。

 その男は私の勤めていた教会の司祭…アインス司祭だった。

 バレてないとはいえ私は昨晩、禁書を持ち出してセブン達を復活させたのだ、もしこのことがバレたらリーアの言っていた通りになるだろう。

 私の部屋の前で立っているという事は司祭がその事に気付き始めて私を疑ってるのではないかと思った。

 どうであれ今司祭と接触するのは避けたい…と思った頃に司祭が私の方を見た…。

「やはり来ると思っていたよ。セシル君。」

 低く鈍い司祭の声が恐ろしく感じた。

 最悪の状況になってしまった。

「アインス司祭…」

「そんな顔をしていると折角の美人が台無しだよセシル君。君はようやく自分の道を見つけたのだろう。」

「えっ」

 司祭予想外の言葉で私は驚きが隠せないが私が思っている程最悪な状況ではないようだ。

 リーアが危険だと言っていたが実際そうではないようだ。

 それよりもなぜ司祭は私がここを離れる事がわかったのだろうか…

「いつか君がここを離れるのは女神のお告げで分っていたよ。私の役目は迷える子羊を導く事だ。ここを離れる人を止めるのが私の役目ではない。」

 私はどうやら司祭を警戒しすぎたようだった。この人は本当に悪い人では無かったのだと確信した。

「すみません。アインス司祭…私の自分勝手な都合で突然ここを出ていくなんて…」

「出会いが突然であれば別れも突然か…だが、私は自分の選らんだ道を進むと決めた君の姿を誇りに思えるよ。」

「ありがとうございます。アインス司祭にそう言っていただけると私も自信がつきます!」

「君の未来に光と幸あれ。君ならきっとこの先も上手くやっていけるよ。」

「はい!」

 司祭は長い廊下を歩き去っていき私は自分部屋に入った。

 貴重品類と必要な物をカバンに入れると最後に机の一番大きな引き出しを開ける

 この引き出しは二重底になっていて上の底を取ると中からスタングレネードとスモークグレネードと一丁の拳銃が入っている。

 これは色々と訳があって隠し持っていた武器だが、今までに使ったことはない。

 私はこれから吸血鬼として生きるのだからこの先何が起こるか分らない。

 こんな物が役に立つか分らないが、念のためこれからも隠し持っておこう。

 私は忘れ物が無いか確認し部屋を出た。


 何も起こることなくアパートに着くと大家さんが両手に買い物袋を持っていた。

「こんばんは、大家さん。」

「こんばんは~、あと大家さんじゃなくて三田流(みたながれ)でいいよ~。」

 この人は私達が住むことになったアパートの大家さんで名前は三田流 不穏(みたながれ ふおん)さん。

 常にやる気のなさそうな気の抜けた喋り方だが天使のように優しく親切で以外としっかりしてる人らしい。

「わかりました。三田流さん。」

「うん、それでよし。じゃあ僕はこれから夕飯を作るからまた今度ね~。」

「はい、さようなら。」

 三田流さんが帰り、私も帰ると部屋に電気が付いていた。

「ただいま。セブン先に帰ってたのね。」

 だが、次に聞こえたのはセブンの声ではなかった。

「お帰り。みかんとお茶を頂いてるわ。」

 お茶を飲みながらテレビを見て極楽ムードを漂わせて部屋に居座っていたのはリーアだった。

「なんでリーアがここにいるの?しかも自分の家の様にくつろいでるし。」

「途中でセブンにあったから鍵を借りてのんびり2人の帰りを待つことにしたの。」

「なるほどね。でもなんで自分の家の様にくつろいでるのかしら?」

「セブンがゆっくりしとけって言ってたから。それよりセシルはどこに行ってたの?」

 ここで修道院に行った事と司祭に接触した事は黙っていた方が良いと思い嘘を考える。

「なるほど、修道院に忘れ物を取りに行った際に司祭と接触してしまったが案外大丈夫だったと。」

「しまった!心の声が聞こえるの忘れてた!」

「全部筒抜け。いぇーい。」

 ピースしながら自慢げな顔を私に向ける。

「まあ無事ならそれで良かった、何も無かったなら私は怒らないし。」

 リーアは完全敗北した私に慰めるように言った。

「最後に聞きたい事がもう一つ…アインス神父は本当に一人でいたの?」

 どう見ても司祭以外にあの場は誰もいなかった。

 何故そんな事を聞くのか?アインス司祭の名前も私の心の声から漏れていたのか?

「そう一人だったのね。アインス神父については色々調べてただけだから。」

「そんなに有名な人だったかしら?」

「まあ私達からすれば因縁があるってだけ。その話はまたセブンがいる時にしてあげる。」

「そう…わかったわ。」

 今日は色々あって眠気が襲い掛かってきた。

 とりあえずシャワーだけ浴びて寝ようかしら。

「ご飯は食べないの?」

 今日はもう疲れて食べる気がない。

「じゃあその間にお布団引いとくね。」

 リーアも変わってるけどなんだかんだで優しいし助かる。

「じゃあシャワー浴びてくるわ。」

「行ってらっしゃい。」

 その日は私はシャワーを浴びた後ぐっすりと眠ってしまった。

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BLOOD Day’S 俺だよ @oreday0120

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