G転生

身体がメキメキという音とともに軋んでいる。呼吸が出来ない。

もがいても、あがいても、どうすることもできない無力な身体。


痛い、いたい、イタイッッ……ぁぁぁああぁっ!!!

しかしその声は声とならず、空に吸い込まれていった。






あぁ!!

頭を抱えこんで叫んだ、つもりだ。

どうやら、記憶はあるようだ。

バッタになり、場所が分かったまではいいが、でけぇ蜘蛛はいるわ、俺ん家は遠いわ。


ここはまるで砂漠だ。


ここは大っ嫌いだった奴(来栖 侑斗)の家の前。

運良く俺のとなりのとなりだ。

しかしこの小さき身体では、百倍近く遠くなる。


きょろきょろと辺りを見渡す。

敵なし。


動こうと、脚を使って跳ねようとした、その時。

ふと太陽の光が遮られ、真上が暗くなった。


俺は、踏み潰されたのだ。

人間という、愚かな種族に。


昔は、俺もこんな奴だったのかな。

見知らぬ虫を踏み潰したり、わざとじゃなくても殺したり。


なんともない顔で、ただの暇つぶしのように命を消す。

実は子供が一番残酷なのではないだろうか。


ーあぁ、馬鹿だなぁ俺。きっとバチが当たったんだ。


視界が反転した。




眼が覚めると、見覚えのある光景。

あの空間だ。

しかし目の前には男。

顔を隠し、異名な空気をかもしだしている。


「よ〜〜うこそ!死者の世界へッ!あなた、初めてではなさそうな顔してますねぇ。では早速。転生しますか?」


初めてではなさそうな顔って何だよ。

てかはやいはやい。もっとゆっくり話せよ。

転生するけど、次は何に転生すんの?


「おやおや無視ですか。…私ならばあなたなど一捻りで殺すことだってできます。あまり機嫌を損ねさせるな」


マジな声だ。

てか心が読めるのはあの閻魔様の弟子とか言うやつだけか?

案外すげぇ奴だったのか。


「俺は転生する。……けど、何になるのか?」


「私には教えられない。楽しみにしておいで。」


「なんでだよっ!?」


ちっちっちっと指を横にふって言う。


「少し、君のこと気になってきたからねぇ。」


「え、きもッッ!!」


鳥肌がすごかった。寒気もやばかった。


「きもいとは心外な。君と私の関係だろぅ?」


「お前と俺にどんな関係がある!??

恐ろしい。はやく転生してくれよ。」


「せっかちだねぇ。まぁ、今回は生命力が高くていい〜んじゃない?」


「ふん。」


「じゃあね〜!good luck‼︎×××君」

するとまた、目の前が真っ暗になった。


「ちょと待て!俺はお前に名前を言ってないのになんでっ…」


すぐさま光に包まれて、俺は床に立っていた。

…正しくは、壁にへばりついていた。


まさか、俺が転生したのって、G…なのか…?


最悪だ。人類が最も嫌いで、主婦の敵。

どうして俺はこうも運が悪いかなぁ。


とりあえず動く。

カサカサという音がまるでぴったしだ。

一旦外に出よう。玄関らしきタイルの上を高速移動し、ドアの隙間から抜け出した。


うわぁ。どこだよ、ここ。

雨をかぶりながら、辺りを見渡す。


すると、目の前には知らぬ女性が立っていた。

「きゃぁぁぁぁぁっ!!!」

頭がかち割れるほどの甲高い声を出す。


「っ…このっこのっ!!」

箒で何度も突かれた。


「まってよ、母さんっ」

すると目の前には、侑斗がいた…


最悪だ。


「お父さんはゴキブリのせいで崖から手を離してしまったんだ。

こいつは俺が解体して、命が何処まで続くか見てみる」


えええぇっ!?お父さんカッコ悪っ

しかもそれ俺じゃねーだろ!逆恨みか?ひでぇ。やっぱりこいつら鬼だ。


「あっ……おい待てよっ」


呆気なく箒で押さえつけられる。






俺はこの解体で呆気なく死ぬ。

絶対に。

だから俺はーー。


自殺した。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

虫ケラだっていきているのに、何故ニートは死んで行く とまと大魔王 @agdj

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る