小さな働きものというイメージがあるアリは、寓話にも書かれているくらい有名。身近にもいるし懸命に働く姿はけなげに見えるけど―― 物語を読んでぞわりと……。アリを見る目が変わってしまいました。
蟻の存在がここまで「恐怖」に変わるのかと言わざる得ない傑作の短編ホラーです。虐めに悩まされる少年は、ストレス発散に蟻を庭で殺していた。すると、夢ごこちでいる少年になんと蟻に喋りかけられ、あることを頼まれるのだったのだが、そこからの展開が猛烈に恐怖の穴へと落ちていく。まさに、蟻地獄。ちゃんと蟻に優しくもあろうと何故か必ず思います。さて、蟻さん、蟻さん。今日も私はあなた方に甘いものを提供するのですよ→機嫌とり(笑)
今まで、蟻に恐怖を感じる事はなかったのですが、この作品を読んで考えが変わりました。雰囲気のある文章で、どんどん引き込まれてしまいました。
"蟻"を恐怖のシンボルにするというシンプルな設定に惹かれました。万人が弱者をイメージする時、真っ先に思い起こすのは子供の頃に踏み潰して遊んだ"蟻"の存在ではないでしょうか—飾らないシンプルな設定だからこそ、主人公が恐怖で追い詰められていく様子がひしひしと伝わってきました。エドガー・アラン・ポー的な、背中を撫でるような恐怖感が堪りません。日常に潜む僅かな恐怖—リアルだけど実態がない恐怖—ハヤカワミステリの短編集に入れて欲しいくらい傑作です!