絵玉
廊下を転がって時々ぶつかり合う色とりどりのビー玉は、その一つ一つが私の夏を保存している。金魚掬いの朱の玉。ラムネの弾ける青の玉。夜空に開いた橙の玉。コツンと触れ合うごとに一幕爆ぜて、また静まる。澄んだ硝子玉の中に泳ぐ風景はぐるぐると廻って浮上のときを待つ。ビー玉は、この年で四十個を超える。ひとしきり弾いた思い出たちを、主のいない万年金魚鉢にぽちゃんぽちゃんと沈めていって、この夏をとじる。
イラストレイティング 言端 @koppamyginco
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