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人妻アンソロジーの裏あとがきと才能の話

まずそもそも私というのは、創作の過程を一番愉しむタイプなので、こと執筆において、途中経過をお見せしてみたり、ライナーノーツを書いてみたり、そういうマメさには一切欠けております。
文学フリマなどでの刊行販売が主たる活動ではありますが、その理由の一つもWebの更新がままならぬゆえ、であるからして、「売りたい」「読んでほしい」という意識が希薄です。宣伝活動とか色々頑張っているように見えるのは、その希薄さの裏返しで、本の形にしてしまったんだから何もしないというわけにはいかんなぁという貧乏性の表れでもあります。

されど、ではそもそも小説など書く必要がないのでは?という話にはならないのが、また厄介なところ。書く必要があるとか、書きたい話があるとか、そんな理由で執筆できた方がまだ素直でしたでしょう。私は私の力で私を救済しようと決め、その茨道を切り拓くが如き要らん重労働のために、一つだけ持てる道具として筆を選んだのです。(無人島に一つだけ持って行けるとしたら的な発想で)(悲しかな、良くも悪くも要らん重労働としか形容できないことをしている自覚はあります)

さて、ここまで前置きです。
思いついたことはさっさとTwitterで垂れ流すか、熟成させて筆の肥やしにしてしまうがゆえ、作品公開のついでにカジュアルに使えるであろう、このせっかくのノートの前回更新が2年前なんです。吃驚。

なので、人妻の話をします。
(一般名詞の"人妻"でなく、今年5月に刊行しました人妻アンソロジーの意。なお、これから書かれるこぼれ話は主宰たる私、言端の収録作品とアンソロジー製作にあたってのぼんやりとした思考の発露ですので、アンソロジー全体のイメージと直結はしていないと思います。多分。)
人妻アンソロジー「結び目ほどき」(詳しくはTwitterのアカウントなどをみてください@hitoduma_gather)の編集後記には実はフル尺版が存在します。
話が多少逸れますが、Twitter企画ペーパウェル#4に参加させていただいた時もネットプリントのショート版とカクヨム公開のフル版に分かれましたね…基本的に書きすぎるタチなので、フル版=第1稿である場合が多いですが、人妻の後書もまさにそのパターン。そしてこのノートさえもすでに相当長文化している感。早く本題に入りましょう。それでは人妻アンソロジー編集後記無修正版、どうぞ。

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本作の刊行にあたり、私にとって人妻とは何か、と考えました。
それは一言で言えば、
「自分が手に入れても輝かないもの」でした。
自分の手の中では、形を成さないもの、と言える場合もあるでしょう。
人妻は、他人と結ばれている者ゆえに人妻たりえるのであり、それをどのような魅力に置き換えるかは、人それぞれかと思います。奪う愉悦。羨望の切なさ。はたまた己の元では輝かないと理解しながら焦がれることをやめられない人間の愚。
そして燃え盛る妬みの炎、しかしなけなしの矜持で押し隠す本心と臆病者の手。
そうした矛盾と悔恨で泥塗れになった感情と、人をそこまで堕としめる存在、それらを人妻という“概念”で包んでもよいのではないかと、私は思いました。

この頃、私は自分に備わりえぬ才能という、長らく忌々しく思っていたものとの対峙を避けられぬ状態が続き、まさにここに定義した概念的な“人妻的”感情に振りまわされていたのです。
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少々尻切れ蜻蛉のようですが、後書の原案はここまで一息に綴られていました。
終わりの数行に集約された動機は今も変わらず、アンソロジーという場を借りた形になりますがこの時私はやっぱり答が欲しかったのだろうし、今後書いていくものも、今なお出続けない答への渇望をこびりつけたものになるのは必定でしょう。どうしてもそうなってしまうんだろうなぁと、これはどこか他人事のように思っています。

才能ってなんなんでしょうね。
自分が“そう”でないことに折り合いはついていますが、こう言及し続けるということは私はまだ諦めていないのかもしれません。ただそれが、無理やり才能らしきものを得るための足掻きなのかどうかは、別の話です。
圧倒的な才能の気配に立たれた時、どうせ目を逸らしても苦しむなら、考え続けて苦悩して身を灼いていっそ発火した魂に焚べようと、いつの間にか決めていたんですよ。
まさに「腑に落ちる」という自然さで、そうしていくのが今は一番いいと思ったんです。

そんなことを、思いつつ、思い出しつつ、なんだか先延ばしにしてしまっていたので、ようやくまとめてみました。
最後までお付き合い、ありがとうございます。


文/言端

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