第八話 其の二
お祖父様は続けて話した。
「しかも、集合場所が湘南って事は、“あれ"の為だな。」
「“あれ”とは……。」
「“湘南の守り人”じゃよ。」
「“湘南の守り人”とは…」
“湘南の守り人”というキーワードを始めて耳にした。おそらく、私達と同じ使命を持っている…。だけど“今回の件“と“この話”に一体なんの関係が…?
「“湘南の守り人”というのは湘南地方に伝わる伝説である。とある神社の宮司の一族が代々その“チカラ”を受け継いでいるらしくて、何百年、何千年という昔から湘南を守り続けているらしいな。」
胸までかかる長いひげをかきながらお祖父様はそう言った。
「その人たち…“湘南の守り人”って見た目は私達みたいな普通の人間ってことですか?」
「普通かはわからんが、人間ということは確かじゃろうな…」
私は一番疑問に思っていることをお祖父様にぶつけた。
「あの…“今回の件”と“湘南の守り人”に一体何の関係が…?」
お祖父様は恐ろしく真剣な顔つきでこちらを見ていた。不安な予感が隙間風のように吹き込んでくる。
「恐らく歴史上未曾有の危機に地球は巻き込まれるやもしれん。いや、もしかしたらもう始まっているのかも…。」
飛び立つような恐ろしさが込み上げて来た。
「未曾有の危機って一体なんなのでしょうか…。」
「それはわしにも判らぬ…。これはあくまで予想。そうでは無いことを祈るしか無い。」
不安のどん底をさまよった…。確かに、私は守り人だからいつかこうなる事は想像していた。でも、いざとなると恐怖と不安が私を襲う。
私がそう思っていた時、お祖父様は行った。
「じゃが、アスカ、お主には仲間がいる。決して独りでは無い。もしかしたら簡単に斃せてしまう敵かもしれ無いからのう。」
その時私の脳裏にはみんなの姿が映し出された―。
私が部屋を出てから1時間後「失礼します。」と言って、西高校の制服を着た男子生徒が入ってきた。容姿はごく普通のどこにも居そうな感じで、表情は冷たく微笑を浮かべている。
「遅かったじゃないか。」
「ええ。少し面倒事が起こってしまったので、遅れてしまいました。」
青年はそう淡々と説明し、畳に星座で座った。
「面倒事と言うのは…?」
「先程、“僕と同じ高校の生徒”が他惑星のレベル1の偵察兵に出くわしてしまって、僕が“外縁天体軌道”に行っている間に侵入されてしまったのでしょう。この星の情報を手に入れて無かったのが幸いですかね。」
青年は冷たい微笑を浮かべながら話した。
「そんなことが…。」
お祖父様は少し驚いたような顔をして、話し続けた。
「で、その“高校生”はどうしたんじゃ。」
「どうもしてませんよ。彼は我々の殆どをアスカたちから聞いていたようなので。」
「何故あやつは地球人に話したんじゃ…?」
お祖父様は、竹刀で胸をつかれたように驚いた。
「おそらく彼は“適正者”。彼女もそう悟ったのでしょう。」
「まさかこの星に“適正者”が居るとは…。しかし万が一の事があったら…。」
「おそらく心配は無いかと。彼は“我が部”に所属しているらしいので。」
そう言って彼は湯呑を手にして、茶を飲んだ。
「それでは本題に入りましょうか。」
微笑を無くした冷たい顔でそういった。
「うむ。」
「今回の“監視者”に関してですが…。これは“緊急事態”と言っても過言では無いでしょう。」
「やはりそうであったか。銀河機構から送られてきた情報を疑っては見たが…。」
「今回の監視者は“監視”では無く“伝言”を伝えに来るものと思われます。」
「伝言で伝えに来なければならないレベルの事態が発生しているということか…。」
湯呑を回しながら青年はこう言った。
「おそらくは地球存亡の危機かと‥。」
神川アスカの日常 新城 零 @rei0872
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