第三章 神川家

第七話 其の一

 梨央と岡谷が帰った後、私は部室に鍵をかけ、職員室に返しに行き、学校を後にした。

 私は徒歩で高校に通っている。いつもは梨央と帰っているが、今日は梨央が岡谷に「話しておきたいことがあるの」と言って、先に帰ってしまったので、今日は一人、夕闇の住宅街を歩いた。

 私の家は、住宅街から少しあるところの坂を登ったところにある大きな屋敷だ。

 家の周りは木々で囲まれていて“お隣さん”という概念が無い。

 屋敷の問をくぐり抜け、白い砂利と大きな松の木植え付けられている庭の真ん中に敷いてある石畳の道を歩き、玄関に辿り着く。

 引き戸の玄関の鍵を開け、家に入った。

 「ただいまー。」

 私は家の奥の台所いる家族に聞こえるくらいの大きな声で言った。

 「おかえりなさい。」

 そう言って出迎えてくれたのは、私のお母さんだった。お母さんは私よりも背が高く、モデルみたいにスタイルがよく、いつもエプロンをつけている。おまけに美人だ。

 今日はポニーテールしている。

 多分、お父さんに言われてポニーテールにしたんだろうな…… 。

 うちのお父さんはマモリビトの正当継承者で、私よりも遥かに強い。でも、最近アニメにハマっている。私もアニメは好きだから何とも言えないんだけど、お父さんってこんな人だったっけ?とたまに思う。

 「あっ、そういえば、お祖父様がアスカを呼んでたわよ。」

 「お祖父様が私に?なんで?」

 「さぁ?わからないわ?いつもの部屋で待ってるって」

 笑顔全開でそう言った。 

 「分かった。」

 私はそう言って、玄関から真っ直ぐ伸びている廊下の右側にある部屋の引き戸を開けた。いつもの部屋というのは、お祖父様と私が話をするときに使う和室で、大きさは十畳で真ん中に座卓と座布団が6枚敷いてあるだけの部屋だ。

 「おお、入りなさい。」

 と言ったのはお祖父様だった。髪は白髪で、胸の辺りまで伸びた白い髭でいつも紺色の着物を着ている。

 「お祖父様、話というのは……。」

 「まぁ、座りなさい。」

 私は正座で座った。

 「先程、浜田君から話を聞いての、今週の土曜日に“銀河機構”から“監視者”が来るらしいな。」

 「はい。」

 「ひとつだけ言っておくが、“監視者”がこの星に用事があると言うことは、少なくとも何かこの星に危機が迫っているかもしれん。」

 私は危機感と使命感で緊張が高まっていた。

 「“監視者”って一体なんですか?」

 「“監視者”というのは、“銀河機構”の中でも最高レベルの役職で、銀河機構に未加盟に惑星が他惑星から侵略を受けたら、それに干渉あるいは阻止する役職で、正式名称は“銀河安全保障委員会”で、短くまとめて監視者」

 お祖父様は話し続けた。

 「銀河機構は天の川銀河を八地方に区分して、監視者は二人一組で各地方に分散している。監視者は、恐らく拓巳は全く歯が立たないだろう。」

 拓巳でも勝てないって……どれくらいなんだろう。

 拓巳は浜田君よりも強いし、私の父さん、お祖父様よりも強い。

 その拓巳が戦っても歯が立たないって……。

 


 

 

 

 

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