第二章 帰り道
第六話 私達について
偶然入った部室の同好会に強制的に入らされ、しかもその同好会の活動内容が『宇宙人の侵略から地球を守るため』と言われ、そしてその証拠を昨日見せられた――。
もはや信じる以外の道は無いだろう。
そう思いながら俺は橘先輩と夕方の住宅街を自転車を引きながら歩いた。
ふと、橘先輩の顔を見たら、何か考え事をしているようだった。
これから話す内容が告白とかじゃないから、俺は何も考える事が無かった。
だが、女子と肩を並べて下校することは二度と無い機会だし、嬉しいし、正直少し緊張もしている。
「この公園でいいわ」と言い、橘先輩が指を指した先にあったのはどこにでもありそうな普通の公園で、そこに宇宙船があるわけでも、灰色の宇宙がいるわけでもない、ブランコとすべり台があり、公園の両脇を狭い車道が走っている、誰も居ない公園だった。
俺と橘先輩は四人位が座れそうな背もたれが無い、比較的新しいベンチに腰を掛けた。
少し間を開けて俺は言った。
「あの……話しというのは……。」
「今から話すわ。」
橘先輩は俺の方を向いてそう言った。
「銀河機構とマモリビトについてはどれだけ知ってる?」
「えっと……銀河機構が天の川銀河を統括する組織ってことと、マモリビトがどんな職業で、今の現状とか位ですかね。」
神川があの時、俺に見せた悲しげな表情を今でも忘れられないし、マモリビトは色々と複雑何だなと俺はその時、どこか切ない気持ちになった。
「そこまで知っているなら話しやすいわ。」
橘先輩は話を続けた。
「我々、銀河機構はこの銀河の平和を維持するために創設された組織で、宇宙が誕生して間もない頃に急速に知能が発達した惑星同士の戦争が起きて、両惑星とも絶滅寸前までに陥った。それで二つの惑星は和平をして、連合を組み、1000年程かけて戦前の状態に戻ったらしいんだけど、その時にはもう両惑星は友好関係を持っていて、“もう二度とこの様な事が起こらないように”という事で銀河機構の全身“銀河連合”が創設された。」
両脇に車道が走っているから、てっきり騒音で聞こえないものかと思っていたが、さっきから全然車が通らなかった。
「そして、“銀河連合”が周囲の惑星を連合に組み込んで、それを銀河規模に行い、今の“銀河機構”になったの。」
長々と話した橘先輩は少し深呼吸をした。
「久しぶりにこんな長々と話した。」
橘先輩は笑顔でそう言った。
「橘先輩と浜田先輩って、いつ頃どんな理由で地球に来たんですか?」
「私達がこの星に来たのは、10年位前で、その時星初めて神川さんに会ったわ。」
「そういえば、宇宙人ってやっぱ灰色なんですか?」
すると橘先輩はクスッと笑い「そんな事は無いわ、大体地球人とほぼ容姿は同じ。私と浜田君だってこれが本来の姿。変装なんかしてないわ。」
こんな広大な宇宙なのに、容姿が人間と同じなのかよ……。狭くなったもんだな。宇宙も。
「それ以来神川さんとは一緒に遊んだり、同じ小学校、中学校に通ったわ。」
「えっ、じゃあ橘先輩と浜田先輩は10年前は小学生の容姿で、徐々に成長したって事ですか!?」
「うん……。そうよ。」
「10年前は、6、7歳ってことですか?」
「まぁ……そうね。」
恐るべし宇宙……。
「でも……なんで俺にこんな話をしたんですか?」
「部に入ってしまった以上これは知らなければいけない事だし、これから一緒に活動するのに、謎だらけだったらやりにくいでしょ?」
銀河機構のくだりは置いて、あの三人がほぼ幼馴染的な関係を持っていたとは……。
でも……なんでだ?なんで神川はあんなに寂しい表情をしていたんだ?
「じゃあお二人は6、7歳くらいから銀河機構として仕事を?」
「いえ。中学生まで普通の地球人として生活して、たまにマモリビトの活動に協力したりしてた。」
なんか複雑だ。
「じゃあ西高校に行ったのも、必然なんですね。」
「ええ。“宇宙人研究同好会”は私達が入学した時に作ったの。」
だから“同好会”なのか。
「今日はこのくらいでいいわ。また明日ね。」
そう言って橘先輩はベンチから立った。
気づけべもう、辺りは真っ暗だった。
常夜灯の光がやけに寂しい。
「あの……。」
俺が話しかけたら、橘先輩が言った。
「この話を聞いて、あなたはどう思った?」
俺は少し考えた。俺はずっと地面を見ていた。
「そうですね……。神川がひとりぼっちじゃ無かったから……まぁ……良かったです。」
「ひとりぼっち?」
「部活じゃ陽気だけど、学校では一日中誰とも話さないでずっと机にいますし、誰か友達とか居ないかなっ……て。」
「神川さんって、たしかに友達作らないわね。」
と言っていきなり俺に近づいて「ね、なんで神川さんのことそんなに気にかけてるの?」
確かになんでだろう?でも、何かあるんだ。でも自分でもよくわからない。
「なんで?」
橘先輩は俺の顔を見ながら笑顔でそう言った。
「なんででしょうか……自分でもよくわからないです。」
「それはね……。」
橘先輩は笑顔で「何でもない」と言った。
「気になるんですけど……。」
「そのうち分かるよ。」
めっちゃ気になるんですけど。
俺と橘先輩は公園を後にして、途中の分かれ道で別れた。
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