第五話 もう一人のマモリビト

 放課後、まぁ家帰っても何もする事が無いし、宇宙人研究同好会に入ってしまった事だし、C棟掃除が終わったら誰も廊下に居ない時に部室へ入った。

 部室のドアを開けたら、そこには神川がいた。

 「新入部員にしては、早いじゃん。」

 「まぁ廊下で掃除だったし、ってかいつ部室に入ったんだ?ずっと廊下にいたつもりだったが……。」

 「さぁ?」といい済ました顔をした。

 やっぱりコイツただもんじゃないな……。

 俺は部室の中にある二席ずつ並べてある六席ある机と椅子の本棚側の列の一番後ろに座った。

 俺の他に後二、三人会員がいるのか?

 「なぁ」

 「ん?」

 「他に何人いるんだ会員」

 「後二人」

 「どんな人なんだ?」

 「おっ。噂をすれば」

 ドアが開いた。背は俺よりも多分小さく、腰まで伸びた長髪で眼鏡を掛けた美少女だった。

 あれ?宇宙人研究同好会って俺を除いて美男美女じゃないなか?

 「こんにちは。あれ?その人は?」

 静かで透き通る声だ。

 「新入部員の一年生の岡谷浩輝くん」 

 神川がそう紹介した。

 「初めまして、二年の橘 梨央です。よろしく。」

 橘先輩は微笑みながらそう言った。

 美し過ぎる……。

 「ええ……こちらこそ。よろしくお願いします。」

 俺は照れを隠せなかった。

 「えっと……橘先輩は宇宙人関係ですか?」

 「ええ、私は宇宙人で銀河機構に所属してるわ。」

 「そういえば、昨日は何で橘先輩ともう一人の方は来なかったんですか?」

 侵略者が来てたってのに、来ないのはおかしいだろ。

 「昨日は銀河機構の太陽系支部に行ってたの。」

 「太陽系支部って、どの辺にあるんですか?」

 「月の裏ら辺かな?」

 橘先輩は微笑みながら言うけど、月の裏側って、『ら辺』ってレベルじゃないですよね。

 「もう一人の方は来ないんですか?」

 「多分来ない。」

 神川が窓を見ながらそう言った。

 「来ないって、どうゆうことだ?」

 「彼は今宇宙にいる。」

 「銀河機構かなんかの関係者なのか?」

 「いいえ。彼は地球人で私と同じマモリビトよ。」

 「何者なんだその人。」

 「一年の大倉 拓巳君のことね」

 橘先輩がそう言った。

 オオクラ タクミ?そんなのいたっけ?

 「彼は一年一組だし、県外から来たからわからないと思うけど。」

 「宇宙空間ってまさか……生身……?」

 恐る恐る俺は聞いた。

 「当たり前じゃん。そうじゃないと侵略者は倒せないわ。」

 嘘だろ……。驚く過ぎて自分が座っている椅子が倒れそうになったがなんとか耐えた。

 「浩輝くんって面白い人ね。」

 そう言いって橘先輩はクスッと笑った。

 笑い事じゃありませんよ……。

 「それで、大倉さんはいつこの部室に来るんだ?」

 笑われたのが恥ずかしくて、俺は話を振った。

 「明日じゃない?」

 神川は直感で言ってそうな感じだった。

 ドアが開き、浜田先輩が来た。

 「大倉さん以外全員集合してますね。」

 そう言って浜田先輩は俺の隣に座り話し始めた。

 「今週の土曜日に銀河機構本部から

❝監視員❞が来て我々と話をしたいらしいんです。」

 銀河機構の本部から何の用なんだ?

 嫌な予感しかしないのだが。

 「その監視員ってどんな役割なんですか?」

 俺はすかさず質問をした。

 「監視員と言うのは、銀河機構の中でも重要な役職で主に銀河機構に未加盟の惑星を監視することですね。銀河機構に未加盟の惑星と言うのは大体文明レベルが一から三程度の惑星ですから銀河機構に加盟している惑星から武力攻撃を受けたら太刀打ち出来ないのでその様な事が起こったら監視員が止めに入るんです。」

 地球はマモリビトがいるので監視者が干渉するまでも無いらしい。

 まぁしかし、なんと平和な銀河なんだ。未加盟の惑星にまで気を遣うとは……。

 「という事なので、今週の土曜日朝七時に蒼浜駅集合という事で。」

 「大倉くんはどうするの?」

 橘先輩が浜田先輩にそう言った。

 「彼は僕から伝えておきましょう。」

 爽やかな顔で「それでは」と言って浜田先輩は部室を後にした。

 その後、特にする事が無かったので、本棚にあった本を読んで、下校時刻になったので部室を後にし、学校の駐輪場へ向かった。

 「浩輝くーん!」

 後ろから橘先輩の声がしたから、振り向いたら、橘先輩が小走りでこちらに近づいてきた。

 「どうしたんですか?」

 「ちょっと話があるの。」

 橘先輩は息を切らしながらそう言った。

 「なんの話ですか?」

 橘先輩は少し間を置いてこう言った。

 「私達について、そして銀河機構について。」

 橘先輩は部室で見せることの無かった眉根を寄せて、真剣な顔をしていた。

 「ここで話すのもあれだから近くの公園に行きましょう。」

 橘先輩は優しい声でそう言った。

 俺と橘先輩は近くの公園まで一緒に行くことにした。

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