第6話
湿った重い土を掻き分ける。
どれだけ探しても、誰も見つけられやしない。
どうしてこんなことになっている。
あの男から全員が逃げきって、この土砂崩れを回避していたかもしれない。
そう思い、周囲の捜索もしてみた。
誰も見つからない。
土砂が及んだ範囲は、一人で探すにはあまりにも広すぎる。
掻き分けても掴めるのは土砂ばかりだ。
「ガラテイン! オルファ! いないのか!」
響き渡って消えていく。
私の声に驚いたのか、遠くでカラスが飛び立った。
「ディエイ! スティス! 聞こえないのか!」
返ってくるのは、せいぜいやまびこだ。
もしかしたら、全員が死んでしまっているのかもしれない。
一瞬浮かんだ考えが、身体を冷たくしていく。
土を掻き分ける指先の動きを鈍くする。
いや、大丈夫だ。
全員が鍛え抜かれた戦士だ。そう簡単に死んでしまうわけが無い。
それでも……、この場で起きた災害が人間が生きていられる程度を超えていることくらいわかる。「もしかしたら」という言葉すら、私が希望的観測に縋っているだけなのだろう。
この規模の災害なのだ。戦っていた彼らが逃れられる可能性の方が遥かに少ない。
山の大半が削り取られているのだ。この量の土砂崩れに巻き込まれて、生きていられるわけが無い。
土を掻き分ける手が止まる。
いや、止めてはダメだ。
冷えて動きの鈍くなった指先で、必死に土を掻き分ける。
もしかしたら死んでしまっているのかもしれない。そんなことはわかっている。
だが、生きて土の下で助けを待っている者がいたとき、私が探すのをやめてしまったら彼らの可能性まで潰えてしまう。
森から一枚の葉を見つけるのでも、海に落ちた一つの雨粒を見つけ出すのでも構わない。可能性が無いと決定されるまでは探し続けなければ。
「頼む。」
神の盾 (株)ともやん @tomo45751122
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