クリエイターズメイト

天使 薫歩(あまつか かおう)

第1話

私は、学園のマドンナ的位置に属している17歳の女子高生佐倉 雪菜。

文武両道、才色兼備、品行方正と三拍子揃っている私にもひとつだけ秘密があったりする。

……決してナルシストではないわよ。

「おはようございます、佐倉さん」

「ごきげんよう、山田さん」

いつものように後輩達が挨拶をし、後ろの女

子たちが「きゃーごきげんようだってー」と黄色い声を発していた。

「すみません、少しお花摘みに」

そう言って私を見に集まった人の中をかき分けトイレへ向かった。

いつものように人がなかなか使わない東校舎のトイレへ向かい3番目の個室が閉まっていることを確認し2番目の個室へ入った。

「……進捗は」

少しすると隣からか細い声が聞こえてきた。

「……あと3ページ」

「コミケまであと2週間よ!間に合うの!?」

「……完徹して仕上げるから」

「質だけは落とさないでね」

そう、私は完璧人間を演じているが、皮一枚剥がれると残念系腐女子だった。

どうしてこうなったのだろうどれもこれも彼女のせいだ。

彼女との出会いを話すには一年ほど前に遡る。

入学して1ヶ月がたったあの日ふと公園を見ると雑誌が落ちていた、新品のままだったから交番にでも届けようとした。

どんな雑誌なのか少し気になり中をチラッと見た。

そこでは男性同士が絡み合いあんなことやこんなことをしている漫画だった。

ストーリーは、お世辞にも面白いとは言えなかったがとてつもなく男性の絵が何かをそそった。

パシャ

シャッター音にも気がつかず私は一心不乱で最後まで読み終わり慌てて交番に届けた。


その次の日の夜


お風呂から出ると、RINEの通知を開いた。

「こんにちは」

……綾白 桐華、知らない人だ。

「早速で悪いのですがこの写真はあなたですよね?」

そして送られてきた写真に衝撃を覚えた。

それは私が頬を赤く染めながらあの雑誌を読んでいる姿だった。

尋常じゃないほどの汗が吹き出してきた。

「この写真を今すぐ消して!」

……やばいやばいやばい!

RINEはすぐに返って来た。

「消す代わりにひとつだけ条件があります。明日の放課後、東校舎のトイレで待っています」

それから彼女からの通知は来なかった。


そして次の日の放課後


すぐに東校舎に向かいトイレへと駆け込んだ。

「あなたが綾白さん?」

そこに居たのは眼鏡をかけた長い髪の女の子だった。

「少し質問してもいいかしら?

どうして私のRINE知っていたの?」

「……クラスメイトの女の子のRINEを盗み聞きしてからどんどんあなたに近付いてあなたのRINEを把握したの」

やることがプロだった。

しかし私にはそれよりも重要なことがある。

「それで消す代わりに私に何を要求するの?えっ……えっちなのはダメだからね!」

すると彼女は小さな声でこう呟いた。

「……ある意味えっちなのかも」

「そんなのイヤよ!」

彼女がとても怖い存在に変化した。

「……私の漫画の感想を教えてほしい」

「そんないやらしい事イヤ!………え?漫画?」

私は彼女の漫画なんて読んだことは無いはず。

……もしかして……あの漫画……

「あの公園の漫画ってあなたが描いたの?」

彼女は俯きながらも小さく頷いた。

「……あんなに目を輝かせて読んでくれた人いなかったから感想が気になったの……」

そんなに私の目輝いていたのか……

「正直に言うとすっごく絵が上手かった、ああゆう類のは初めて見たけど絵のおかげでとっても読みやすかった」

そこまで言うと彼女は少し恥ずかしそいにしていた。

「でも……メインの所に持っていくまでがかなり雑だった。はっきり言って絵以外がヘタとしか言えない」

そこまで言うと彼女の心臓に何本が目に見えない槍が刺さっていた。

彼女は、何かを決心したようにさっきよりも格段に大きい声で言った。

「……だからこそお願いなの……私の作品のネームを書いてほしいの!」

「……え?ちょっと待って私はひとつだけ条件を飲むって言ったはず」

「……写真は私の手元にまだある」

悪魔だ!ここまで残虐非道な人間がいたとは。

「無理だよ、私文章作るの得意じゃないし」

「独り言であんなに細かく描写に指摘してたのに?」

気がついてなかっただけで私そんなことしてたの!?

「……少し考えさせて」

彼女は小さく頷いた。

「……私の他の作品も見てくれる?」

彼女はいくつか男性が二人写っている肌色率の高い漫画を渡してきた。

「参考にさせてもらうよ」

そしてその夜。

雪菜は一睡もせず息を荒くしながら貰った漫画を読み切った。

彼女は嫌らしいが、やはりあっち側の人間であった。

次の日の放課後、彼女は引くに引かれず諦めて了承することにした。

それからというもの私はほかの人にバレないように物語を作り、それを綾白が描くといったことを1年も続けている。

コミケに出してもらったりもした。

この1年で限りなくオシャレをしたり喋り方を丁寧にすることでネームを書く時の私とは限界までかけ離れさせるようにした。

そんなこともあり今では学園のマドンナでもありオタク界のBL作家になってしまったのだ。

……どうしてこうなった……








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クリエイターズメイト 天使 薫歩(あまつか かおう) @2003721

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