神様の止まった世界

さる機器によって生み出された命があった。


さる機器によって知性を得た生物がいた。


彼らは進化を続けた。


そしてついには己らのルーツを知るに至った。


「こんな事が世界に知れれば私たちのアイデンティティは崩壊するぞ!!」


それは当時の主要人物達にとってあまりに許容出来ない事態だった。


「いやはや、よもや我々のルーツが、宇宙人の機器を、オーパーツを神と慕い、知識の譲渡を受けていたなど……」


それはどの宗教をも覆し、そして己らの生きる意味さえ朧かす事態だった。


「それはさしたる問題ではない!一番の問題はその機器のデータにあった宇宙人の環境破壊、及び移住区開拓の歩調、それが今の我々とほとんど差異のない状況だよ」


そして、彼らは知るのが遅すぎた。


「このままでは我らも同じことを繰り返すと?」


「……その可能性が濃厚な道を歩歩んでいる事を……否定はできない」


先人の滅びを見るに、術はない。


彼らはまるで自分たちの世界とばかりに開拓した星の、国の代表としてこの星の自由の頂きにいると無意識ながらに思っていた。


しかし、今は違う。


まるでその己らでさえ、小さな水槽の中に閉じ込められた矮小な存在であるかの様な錯覚さえ覚えた。


納得し得るものではなかった。


故に、人々はそれを溶鉱炉へと沈めた。


しかし、


その頃、さる国家プログラムが発足していた。


「MARSoctopus計画は順調です」


「テラフォーミング機能、自己修復による半永久機関もさることながら、この機器には原住民を育み、我々人類を神と刷り込むプログラムが......」


そうして、時は繰り返す。

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moonrabbit 不適合作家エコー @echo777

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