ひとりごと

鈴木タロウ

ひとりごと

 真夜中にふと目が覚めたので、水でも飲もうとベッドから起き上がった。


 ほんの少しだけ、違和感を覚えた。


 穏やかに動く空調。

 真っ暗なテレビ。

 足元で揃えられたスリッパ。


 特に変わった様子もない。

 部屋の中は静かで、外の往来も絶えているようだ。

 暗い室内を横切ってキッチンへ行くと、自動的にぱっと証明のスイッチが入った。

 マグカップに注いだ水を飲んでいると、脱いだスリッパを揃える習慣など自分にはないことに気が付いた。

 いつもなら部屋のあちこちに散らばって脱ぎ捨てられているはずだった。

 それがまるで、誰かがベッドへ入る前にスリッパを丁寧に抜いだかのようだ。

 

 そう気がついたとき、マグカップに残っていた水をすべて床にこぼしてしまった。

 冷たく不快な感触が足元に広がる。

「くそ。殺すぞ、ったく」

 何気なく悪態をついた。

 すると、


「もう死んでるよ」


 そう、耳元でぽつりと聞こえた。

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ひとりごと 鈴木タロウ @tttt-aaaa

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