あしおん!!

あさかん

プロローグ・エピローグ


 彼女たちが初めて世に姿をに示したのはあの日。


 多胡中央学園の学園祭で体育館に設置された特設ステージ。



 翌年には、地域住民のみならず県外及び海外から人が集まり、あらゆるメディアも多数のカメラをセッティングして彼女たちの登場を待っていた。


 

 世を魅了する学生レディースバンド。


 

 その名は―――ASIKAN



 彼女たちのチーム構成は3人。



 まずはギターの『カノゥ』


 その柔軟な足の動きとスラリと伸びた2本のそれは個々に別々の意思を持っているかのように、見るもの全てに美しい旋律を与える。


 今まで見たこともないような独特の世界観がそこにはあった。


 時に交差するその蠢きが観客の視界を絡めとり、触手のように会場全体へ増殖させる。



 次にベースの『うミ』


 彼女の足は世界を股に掛けて大海原を駆け巡る。


 そんな力強さを持つそれは、まさに足というよりはA–siと呼ぶべきだろう。


 腓腹筋ひふくきんから膝窩筋しつかきんにかけて無駄のない完璧な肉付きは官能美も伴いながら芸術的でいて、神秘さをも感じさせる。


 しかし特出すべきは大腿直筋だいたいちょくきん外側広筋がいそくこうきん中間広筋ちゅうかんこうきん内側広筋ないそくこうきんからなる大腿四頭筋だいたいしとうきんだ。


 どれをとっても宇宙レベルで通用するであろう、専門家をも唸らせるその四頭筋により通常、人には発生させることのできない音域の重低音を奏でさせ、観客の心の臓へダイレクトに響き渡る。



 そして、最後はASIKANのリーダーでもあるヴォーカルの『La-ichi』


 それは妖精の棲む水辺に浮かぶ”あし


 初めてそれ見たものは、皆が口を揃えてこう言った。

 

 『足とは認識できなかった』


 別次元の生命体。


 神が残した最後の遺品ラストエグザイル


 覆うように被さったサイハイソックスは、常にミクロ単位でその長さを調節されており、その僅かな隙間から放たれる透き通るほどきめ細かい肌色が人のみならず、そこに存在する全てのものに奇跡をもたらす。


 拝むものもいれば、触れ伏すものもいた。


 

 そんな彼女たちがその境地に至るまでを語る一年間の”美脚メロディー物語”。



 ―――ASIKAN、開幕。 



(終わり)

 

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