1-2「学年1位、赤松絵里」

「次はこの問題だ。解けたら手を挙げてくれ。」

美月は苦手な数学。時折眠気が襲ってくる中で、必死に問題と向き合っていた。

「お、もう出来たのか。」

え、早い…と美月が顔をあげて見ると、手を挙げていたのは絵里だった。

「(赤松さん、早いなぁ…)」

あれが学年1位の実力なんだと、美月は少し不安になった。


「ね、ねぇ、赤松さん。」

「…何ですか?」

近くで見ると、黒縁の眼鏡がよく似合っている。菜々美ほどとはいかないが、可愛い部類には入るのだろう。

「えっと、さっきの授業のとこなんだけど…良かったら、昼休みに教えてほしいなって。」

「えっ…」

絵里は目を少し開いた。まるで、驚いたかのように。

「あ、ごめん…用事があるなら」

「いいよ…全然。その、暇だし。」

「あ、やった!ありがとう!」

きっと絵里な頼まれることに馴れていないのだろう。美月はそう思った。

「 分からないところ、先に教えて。えっと…深江さん?が来るまでに考えておくから。」

美月は、ノートを開いて印をつけた場所を指差した。

「ここと、ここと…あと、この問題のここからが分からなくて。あ、それから!美月でいいから、呼び方。」

「…分かった、美月さん。」

「おやおや~、何してるのって…勉強!?」

「わっ、沙也加…!じゃあ、また昼休みに。」

美月は、新しい友達の予感に胸を踊らせていた。

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私は彼のことが好きだけど 伊月 夢乃 @yu_kun

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