古代兵器ラムダ
セッ◯スで果てた。
もとい、ピロトークと融合を果たしたと同時に俺は、イセカイガーへと変身した。
天使と病院の間の辺りに転送される。
中で巨大化して病院を潰さなくて済んで本当に良かった。
天使の周囲を見ると、四肢を翼の様に伸ばして飛行しているラムダが見えた。
後頭部から謎の青い光を放って推進しながら飛行している。
天使は両手を叩いてラムダを挟もうとするのだが、彼女の方が動きが速いので仕留められずにいた。
まるでヨボヨボの爺いが周りを飛ぶ蚊を手で挟もうと躍起になっているかの様だった。
さてピロトークと合体したはいいが……。
「おいピロ! 一体イセカイガーの何処が強化されたんだ? 教えてくれ!?」
「あ〜……あへあ〜……」
使えないBBAだ。
「おい! いい加減にイキっぱの状態から回復してくれ!」
「し、しからないらろ!? おまへが、ならなら、いはないもんらから、わらしばっかり……」
「うるせえな! しょうがないだろ! 一緒に絶頂しないと融合できない仕様なんだから!」
「うるへえ〜、この、ちろ〜」
「なんだと!? このクソBBA!」
『あーそこの二人とも、痴話喧嘩の続きは帰ったらで御願いできませんか?』
ルーシーが脳内通信をしてくる。
「おいフェラ! こいつ何とかしろ! 強化どころか単なる足手まといじゃねーか!?」
『仕方ありませんねえ……。ほいっ!』
「うっきゃあああああああああああぁっ!?」
この世の物とは思えない雄叫びがピロトークから発せられた。
「何してんだ? お前?」
『ちょっと遠距離から爪揉み健康法を……』
「うわ〜ん! 指が痛いよ〜! ママ〜! あの、おばちゃんがイジめるよおぉ〜!?」
幼児退行してしまった!?
「……ふぅ〜、スッとしたぜ……」
おや?
治った?
「やはり意識をスッキリさせるには大泣きするに限るな」
「知らんがな……。で、俺はどうすればいい?」
「どうしたい?」
「……」
「おいルーシー、もう一発ピロちゃんにキツい爪揉み健康法を……」
「わ〜ん! 待って!? 待ってってばよ〜」
『赤樹さん。ピロトークさんは何も間違っていないですよ? 貴方が彼女に何をさせたいのか決めて下さい』
「説明不足だ。もっと詳しく」
『それもそうですね』
天使はラムダに夢中で、こちらの存在にはまだ気づいてない様子だ。
『ピロトークさんは有能な召喚士なんです』
「召喚?」
『ええ……彼女の魔法とイセカイガーの魔力が融合した今なら、かなり強力な武装や天変地異、精霊や魔獣を呼び出せる筈です』
「ほう」
『赤樹さんが天使に対して、どの様な攻撃が有効か見定めてピロトークさんに指示を出して下さい。彼女が最適な物を選択して召喚してくれますから……」
「分かった」
天使に対して有効な存在?
「ピロちゃんや」
「あによ?」
「神様を召喚してくんね?」
「無理!」
だよねー。
どうせ魔神ルシフェラの本体を希望しても似た様な答えが返ってくるんだろうな。
『大体そんな事をしたら、この世界が即崩壊してしまいますよ』
勝手に心を読まれた上に、そう注意された。
「ピロ」
「さんを付けろよ! 包茎野郎!」
「ピロ婆さん」
「婆は要らねえだろ!?」
うるせえ、BBAだな……。
「天使を倒した時に有効だった手段を過去の事例から教えてくれ」
「そんなものは無い!」
あ?
「なんだよ、ケチケチしないで、お前が過去の魔王と組んで天使を打ち破った方法を教えろよ?」
「だから、そもそも倒せた事なんて一度たりとも無いんだよ」
マジか!?
「おい糞フェラ! どういうこった!? 強化した意味ねーじゃねーか!?」
『人を便秘棒舐めてるみたいな呼び方しないで下さいよ!? 一応強くなっているんですから、それでいいぢゃないデスか!? 今までの魔王達だって素で闘うよりは大分長く保ったんですからっ!?』
「死へのカウントダウンが長引いただけじゃねーかっ!?」
『あーあー聞こえなーい聞こえなーい』
こ、この
「無駄だよ赤樹……。そもそもルシフェラにとっちゃ天使を殺さなくても別に問題無いんだ。ただ、この世界が退廃さを維持したままで滅びなければ良い。神への信仰を失ったままでね……」
「つまりは壮大な時間稼ぎって事か……」
なんてこった。
『ピロトークさん、それは誤解です。倒せるんだったら倒せるにこした事はありません。倒せるのだったらですが……』
顔の見えないルシフェラの邪悪な微笑みを感じる言い様だった。
「……ちょっと待て? なんで魔王は死ぬのにサポート役のお前等は平気なんだ?」
「あたしらは単なるサポート役だからイセカイガーが爆発する直前に、いつも脱出させて貰っているよ?」
「なんで俺は脱出できないんだよ?」
『本体ですから』
『いや本当に倒して欲しいんですよ? でもそれが無理そうなら今の魔王は捨てて新たな魔王を召喚して、その可能性に賭けた方がいいじゃありませんか? その為の残機制ですよ? 三回までチャンスは与えます』
「サポート役だって旧い奴より新しい奴の方が可能性があるんじゃないか?」
『……』
「なんだその……今気付きました……みたいな間は?」
『いやー本当に今頃気が付きました。ちょっと赤樹さんの残機が無くなったら、今後検討してみますね?』
「ちょ!? まっ!?」
ピロトークが慌てて何か言おうとした、その時に天使がイセカイガーの存在に気が付いた。
「気付かれた? くそっ! ピロたん、何か取り敢えず現状で有効そうな武具を召喚してくれ!」
「たんを付けるような萌え要素は私には無いんだよっ!」
とか言いつつピロトークは召喚魔法を唱えた。
イセカイガーの前に巨大な槍が召喚される。
イセカイガーで槍を握ると俺は投擲した。
天使の頭を槍が貫く。
後ろに向かって倒れる天使。
その手がこちらに向くと爪が伸びてきた。
イセカイガーの甲殻を天使の爪が襲う。
しかしイセカイガーの鎧は、難無く天使の爪をはじいた。
「イセカイガーの鎧の強度は、どのくらいあるんだ?」
『少なくとも下級天使の力ごときでは破壊は無理ですね』
閃いた。
「ピロえもん! 何か天使を潰す手段はないか?」
「誰が猫型ロボットだ!?」
猫耳のピロトークを想像する。
……ちょっと可愛い。
今度融合する事になったら付けて貰おう。
「サモン! タイタン!」
ピロトークは召喚魔法を唱えた。
天空から大きな巨人の足が現れて天使を踏み潰す。
天使は、あっという間にペラペラの状態になる。
「今だ!」
俺は駆け寄るとペラペラになった天使を折った。
「もう一度頼む!」
「サモン! タイタン!」
再生の隙を与えずに続け様に天使を押し潰していった。
八回くらい、それを繰り返しただろうか?
天使は小さく少し厚めの板状になっている。
「うおおおおおおおおおおっ!」
俺はイセカイガーの胸部装甲を自ら引き剥がした。
「ちょっと! 何してんだよ!?」
「黙って見ていろ!」
俺は胸部装甲の上に小さな板状の天使を乗せると、飴細工の様に胸部装甲を曲げて天使を包んだ。
そして上部を茶巾絞りするかの様に思いっきり捻った。
「……どうだ?」
しばらく待ったが天使が中から出てきて再生を始める様子は無かった。
『……倒した訳では無いからポイントは0点ですよ?』
ルーシーの声が脳内に響く。
『しかし、よく思いついたものですね。恐らく永遠に天使は中から出られないでしょう』
「勝ったのか?」
『……ですね』
俺はイセカイガーの身体のままで小さくガッツポーズをとった。
勇者魔王イセカイガー ふだはる @hudaharu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。勇者魔王イセカイガーの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます