性なる左曲がり

「はっ!」


俺は何処かの病院のベッドの上で目覚めた。


余りにも現実的な部屋の風景に、俺は一瞬ルーシーも、あの天使勢との闘いも夢だったのではないかと、思った。


しかし窓の外にある押し潰されたビル郡を見て、


凄いぞ! 異世界は本当にあったんだ!


と、現実を認識した。


風景も場所も時も、まさに世紀末だった。




ふと窓から外を見ると車椅子に乗った少女がいるのが見えた。

少女の指先には小鳥が止まっている。

微笑む少女。


俺は、この街を救えて良かったと素直に思う事が出来た。


一人の紳士が少女に近付く。

彼は微笑んで少女に向かって人差し指を立てた。

少女は微笑み返すと紳士に向かってVサインを出す。

紳士は財布を取り出して少女に二万円を渡した。

彼は少女の車椅子を押す。

そして二人で仲良く林の中へと消えて行った。


「なにシブチンの顔をしているんですか?」


いつの間にか部屋にいたルーシーが俺に声を掛ける。


「こんな腐った世界なんて神に滅ぼされちまえと、思ってな」

「単なる、足長おじさんの善行ぢゃないデスか?」

「長いのは真ん中の三番目の足なんじゃねぇのか? あのオッサン」




「どうして自爆した筈の俺が生きているんだ?」


しばらくの沈黙の後に俺は切り出した。


「転生させる時に、ついでに命の数を三つにまで増やしておきました。あと二つですね」


事も無げにルシフェラは答える。

だが、それで納得はいった。


「二万点で命が一つ増えて、以降は六万点毎に命が一つずつ増えていきます」


ゼビ◯スっ!?


「天使は一匹につき三十点です」

「待て! あんなに強いのに得点がトー◯イド並みとは、どう言う事だ? アンド◯ジェネシスとは言わんがテ◯ジくらいは、あるだろう?」

「所詮一番下っ端の下級天使ですから」


マジか!?


「因みに今の赤樹さんのスコアは0点ですね」


ガーンツ!


「十数体を自爆に巻き込んで蒸発させた筈だぞ!?」

「ええ、蒸発しました」

「まさか?」

「ええ、再生を始めています」


はいいいいいいいぃっ!?


「爆心地に一番遠かった奴は、もうじき再生が終わりそうですね。後は一週間毎に再生完了するみたいです」

「……」

「良かったですね。一匹ずつ相手に出来ますよ? 各個撃破が可能です」

「……」

「どうしました?」

「俺、お前に連中に一泡吹かせさせてくれって頼んだじゃーん」

「一旦は蒸発させられたぢゃないデスか? 倒させてくれと頼まれていませんし……」


こ、この女郎やろう……。


俺はベッドの上で頭を抱えた。


「ルシフェラ……お前なら、どう倒す?」

「この世界を維持したままでは無理ですね」

ならだ」

「普通に消滅させます」


あ?


「赤樹さん、勘違いしないで下さいね? 蒸発でも原子分解でも無く消滅です。彼らを構成する要素から魂、そして過去から未来における存在その全てを消し去るという意味デス」


ルーシーは恐ろしい事を、さらっと言う。


「それくらいしないと、彼らは復活してくるのです。器も魂も無くても人々の記憶の断片からすら彼らは蘇る……」


なんで、そんなんのポイントがトー◯イド級なんだよ。


「でも、そんな介入をしたら、この世界は私の本体が触れたせいで即滅亡デスね」

「この世界を滅ぼしたら、せっかくの魔神に都合のいい人類も滅ぶから?」


ルーシーは頷いた。


「いくら蚊が五月蝿いからって自宅でロケットランチャーぶっ放す馬鹿はいないですよね? そういう事デス」


そこまで話すと扉からノックの音がした。


「入って下さい」


ルーシーが勝手に返事をする。


「紹介したい人達がいるんデス」


二人の人影が病室の中へと入って来た。


一人は見覚えのある褐色肌の女。


髪は白くボリュームはあるが短めで、薄いピンク色の艶かしい唇に、少し切れ長の目には青い瞳が潜んでいた。

耳が飛び出ている様に見えるのは、目の錯覚だろうか?


「この方はダークエルフのピロトークさんです」

「ちょっと待て、その名前は大丈夫なのか?」

「何がです?」

「何だか魔神や神様よりも大きな存在に喧嘩を売っている様な気がするぞ? カクヨム的に」

「……なんの話デス?」

「……悪かった。続けてくれ」


もう一人は……何だか妙な奴だった。

黒に近い紫色のボブカットの女はメイドの格好をしていた。

袖やスカートは短めで腕や脚が出ている。

その腕や脚には、まるで一度輪切りにされたかの様な筋が幾重にも入っていた。


メイドは俺に手を差し出すと握手を求めて自己紹介をしてくる。

「ハジメマシテ、ラムダダッチャ」

「ラムダダッチャさん?」

「この人はラムダさん。だっちゃは方言です」


またマズイのが来てしまった気がした。


「ラムダさんは滅亡した古代文明の科学者達によって造られたオートマトンなんですよ」

「人間じゃ無いのか……」


一つの疑問が浮かんだ。


「まさかシグマとかいう後継機があったりしないよな?」

「ありませんよ? なんで、そんな事を聞くんです?」

「いやだって、流石に○ャ○○○○はマズイだろう?」

「はあ? ソーセージでジャムは作れませんよ? 何を言っているんデスか、赤樹さんは?」

「もういい、俺が悪かった」


「今度の魔王は、この野郎なのか?」

ピロトークがルーシーに尋ねてきた。

今度?

少しだけ気になった言葉があったが……。


「魔王じゃ無い。アンチヒーローだ。勇者だ。」


ピロトークは一回だけ目を大きく開くと爆笑した。


「はははははっ! あの被害でヒーローだって?」

「デモ タシカニ アノヒガイハ イママデノ ナカデハ イチバン キボガ チイサイデス」

「……ラムダ、初対面の相手だからって変なキャラ付けはいらねぇだろ? 普通に話せ」

「了解ダッチャ」


語尾が方言になるのは、外せないのか。


「御二人には改めて新魔王……じゃ無かった。勇者魔王さんのサポートを御願いします」

「おい、くっつけりゃいいってもんじゃ無いだろう? それに何だ改めてってのは? 他にいるのか?」


答えたのはピロトークだった。


「ああ、いたさ。常に一人だけど何世代もな」

「何世代? 何人の魔王が今までにいたんだ?」

「そうだな。八千人過ぎた辺りから分からなくなった」

「赤樹は一万と二千人目ダッチャ」


……え?


「お前ら何歳なんだ?」

「あたいは千歳くらいさ、坊や?」

「起動時間は右に同じですが、製造年はざっと三億年前のメイド戦士達の一人ですダッチャ」


2BBA!


いやルーシーも魔神だから、もっと長生きだろうし、3BBAだな。

どこぞのトラコンの略称みたいになってしまった。


俺はルーシーの方を見た。


「……そんな目をされてもですねえ。しょうがないんですよ? どいつもこいつも直ぐに使い物にならなくなっちゃうもんだから……」


そりゃ、あんなの相手にしてたらなぁ。


「残機数内緒にしてたら、何回でも生き返られると勘違いして天使に特攻掛けて自爆する馬鹿とか、残機数伝えたら残り一機になった途端に逃亡を計る阿保とか……」

「その逃亡を計った奴は、どうなったんだ?」

「……知りたいデスか?」


俺は大きく首を横に振った。


「で? サポートって具体的には何をされるんだ?」

「イセカイガーと融合しての能力強化と、その為の時間稼ぎですが……」


窓の外の林の方から轟音が鳴り振動が響いた。

車椅子に乗った紳士と彼に乗った少女が慌てて飛び出してきた。

林の木よりも高い見覚えのある白い脚が二本、窓の外に見える。


「丁度、天使が復活した様ですし実際に行動しながら説明しましょうかね」


ルシフェラはラムダに向き直る。


「ラムダさんは今回、迎撃と陽動による時間稼ぎを御願いしますね?」

了解ラジャーダッチャ」


ラムダの両腕と両足が横縞の筋に合わせて蛇腹の様に伸びた。

後頭部から格納板が持ち上がり、中からジェットやロケットの様なノズルが出てくる。

ラムダは窓に、ゆっくりと近づくと叫んだ。


「ガリ◯ンパンチ!」


両腕の蛇腹が伸びて天使の股間に、ぶち当たる。

巨大な天使は、そのまま後方へと吹き飛ばされた。


ラムダの瞳が赤くチカチカと瞬く。


「目からレーザー水爆!」


ラムダの目から火線が伸びて天使に当たると巨大な光球と化した。

かなり遠くまで飛ばされた筈の天使のいる位置から来る衝撃波が、周囲の開けていない窓ガラスを破壊する。


「相変わらずスゲェな。古代文明が七日で燃え尽きる訳だぜ……」


ピロトークが微笑みながら言った。


レーザー水爆って、そういうんじゃねぇから。


俺は心の中でツッコミを入れる。


「じゃあ赤樹さん。今の内にピロトークさんと融合して貰えます?」

「なんで? ラムダ一人で倒しちゃいそうな勢いじゃねーかよ」

「あれ見ても、そう思えます?」


ルーシーは顎を振って窓の外を示す。

俺は爆心地にいた天使を見た。

溶けて、ただれた頭部のある首の付け根から新しい頭部が割って入る様に再生を始めていた。


「イセカイガーの自爆に比べると威力が少ないんですよ。数分の時間稼ぎにしかなりません。ラムダさんも連射は無理ですしね」

「で、融合って具体的に何をすればいいんだ?」


「せっ◯すデス」


あ?


ピロトークはベッドの上に乗ると、俺の腰の上に跨ってきた。


「ちょっ!? 待て待て!? 今迄に何本も別の魔王のチ◯コを突っ込んだBBAマ◯コ相手に勃つ訳が……」


ピロトークは、ぴっちりと着込んでいたマキシワンピをスカートの裾を持って、たくし上げながら脱いでいった。

白くて小さな柄物のパンツ一枚の下着姿で上はノーブラだった。

息苦しそうに勢い良く震えながら、こぼれ出す乳房。

褐色肌に浮かび上がる薄桃色の乳輪と乳首。

ピロトークはベッドの外へと服を投げ捨てると、薄く茂みの透けて見える下着を俺の股間に押し付けて腰を振って擦り合わせて来た。


「おやおや? なんだかんだ言って、とっても元気な奴だな? お前の息子は?」


あっという間にパジャマの下の膨らみを大きくしてしまった俺は、ピロトークの揺れるオッパイに目が釘付けになる。


ピロトークは俺のパジャマの下を引き摺り降ろそうとした。

今更だが俺は抵抗する。


「おいこら! ちょっと待て! お前には恥じらいってもんが無いのか!?」

「うるせえ! こちとらご無沙汰なんだ! ごちゃごちゃ言わずに、とっととファッ◯してフュージョンする事を承認しやがれ!」


ピロトークの目付きは怪しくなっていた。

なんか瞳が渦巻き状に見える。


「危ない目付きで危ない事を言ってんじゃねーよ!」

「あ! ラムダがピンチだ!」

「なんだって!?」

「隙ありいぃっ!」


俺はズボンを脱がされた。

ご立派様が顔を出す。


「……想像以上にデカイな、お前の」

「……」

「でも随分とカーブを描いてんのな?」

「うるせぇよ」

「オマケに天使の奴そっくりな頭してるし……ナリはデカイけど、お子ちゃまチ◯コだな」


「やかましいわっ!」




(合体)

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