第3話
コンビニが見えたとき、まるでそこが安息地のように思われた。
もう到着したときにはもうへろへろだった。
日焼けもして、これは明日すごく痛むなって思った。
けど、エリカは特につらそうには思ってないみたいだ。
すごいな。僕みたいな都会の軟弱者とは違うのか。
店内は寒いくらい冷房が効いていて、さっと汗がひいてゆく。
まるで天国だ。
けど、かげろうが立っている外を見ると、げんなりする。
またあの地獄に行かないといけないのか。
「そういえば、俊はどうしてコンビニに来ようと思ったの?」
「なんとなく」
「変なやつ」
「君に言われたくないけど」
僕はコーラを手にとって、レジに持っていく。
「ちょっと冒険してみようと思って」
我ながらちょっと子供じみている。
高校二年にもなって「冒険」と称して外に出かけるなんて。
「冒険ね。すばらしいわ。私も冒険してみようと思ってたところなのよ」
「マジで?」
「明日決行よ」
「ちょっと待って。そんないきなり」
「明日、俊の家――といっていいのかしら――に行くわ」
「火門と野々森って、隣といっても、けっこう離れてるって聞いたけど」
「俊のいるところに行くのは、私にとって冒険の第一章よ。で、これはプロローグ」
「僕のほうから行くよ。なんか悪いし。そうだ、携帯で連絡を取って、それで会えばいいよ」
「女子のアドレスをそんなふうに聞くなんてなかなかの策士ね」
「そういうところは気にするんだ」
「別に気にしてないわ。ただ言ってみただけ」
「そうですか」
僕とエリカはスマートフォンの番号とメールアドレスを交換した。
ちなみに、女子を登録したのはこれが初めてだ。
「でも、これはあくまで念のためよ。明日は俊の家を襲撃しに行くから」
「何物騒なこと言ってるんだよ」
「俊は首を洗ってまっていればいいわ」
「首を長くしての間違いだよね?」
「首を長くして洗って待っていればいいわ」
そういえば、首を長くするって何だろう。
ろくろっ首みたいなやつかな?
コンビニを出て、僕らはまた灼熱地獄の中に入った。
蝉は鳴きやみ、陽は少し傾いている。
そんなに時間が経ったっけ。
僕らが例の「事故現場」に着いたときには、あたりはオレンジ色っぽくなっていた。
僕は自転車を回収する。
やっぱり自転車に乗ってったほうがよかったよな。
真夏のオーバードライブ 竹乃内企鵝 @takenouchi_penguin
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