第2話 シュビドゥビ・ドゥワップ・シンガ=ロン

暗い教会、薄汚い教会、クモが巣を作り、ほこり被ったシャンデリアがユラユラブラブラと、男のふぐりのように揺れている。

薄暗い中、光照らすのは小さなろうそく。

それを囲って集まっているのは、黒いローブの悪魔崇拝者たち。

胡散臭さがわきがよりも臭く、漂っている。

机には鳥の心臓、牛の首、漢の睾丸そして、何かわからぬ鉄のオブジェクト、何かが入っている銀のカップ。銀のカップには小さなナイフが入っている。


何語かもわからぬ言葉を静かに、順番に唱えだした黒ローブたち、あやしい輩は机に置かれた銀のカップに入った豚の血を一気に一斉に飲み干した。

口から垂れた血は吸血鬼を思わせるものだ、気味が悪いを通り越して気持ちが悪い。


次は机に人数分用意された睾丸をガリゴリと男が見たら絶叫してしまうような音を出しながら、黒ローブたちは味わうかのように食った、食って行った。


すると牛の首にナイフが刺されていく、そのナイフについた血を、やつらは鉄の物体に擦り付けていく。

鉄臭さ、血の匂いもここまでくると、慣れてくる。


こいつら黒ローブどもは悪魔崇拝者。

私、ゲゲラゴーガ卑弥呼の家族を悪魔召喚のための儀式に使ったやつらを私は許すことはない。あのよくわからない鉄のオブジェクトが何なのか、何のためのものなのかというのは、おおよそ検討が付いている。

それも知らずにこんなに危険な場所に潜むというようなことはしない。


あの鉄の物体は、拷問器具、苦痛の梨。見た目通りのネーミング、洋ナシのような形をしたあれは、オンナの膣にぶち込んでやって、膣を拡張して、破壊するための拷問器具、対象の女を凌辱してせしめるための苦痛の梨。


輩は拷問器具に悪魔を宿して、それを実際に自身に使って悪魔と契約する。

私の家族を襲ったやつも、悪魔を宿した拷問器具で契約した力を使っていた。忘れるはずもない、鉄の冷たい顔に塗りたくられていく家族の血、飛び散って付いた血。

思い出したくもないが、脳裏にはくっきりと張り付いていて取れそうにない。

劇おち君にも取れない汚れだろうと思う。


私の頭の中の劇落ちくん。


これから私がやろうとしていることは、あれを奪うこと。あの悪魔崇拝者どもの教団を潰すこと。

それのためにずいぶんと時間を掛けてきた、肉体を鍛え、銃を撃ち方をまなんだ、やつらを潰すためには生きなければ、生き続けなければいけない。

右手にたくわえたサブマシンガン、襲撃してあれを奪う。

奴らがろくでもないことにあの拷問器具を使って悪魔と相乗りする前に、私が相乗りしてやろう。おまえらが作ったお前らのための悪魔の契約書に私の名前を書き込んでやる。

調子狂って狂ってしまうおまえたちがみてみたい。

男のマラ、憤ったマラのように赤い顔をしてこちらに刃物の一つでも向けてみるのがいい。それらしい。


膣だろうが何だろうが、くれてやる。

こころの中、燃える炎は復讐の二文字のみ、やつらにも恐怖の種を植え付けてやる。

恐怖から発芽したその種で体も何もかもを引き裂かれてしまえばいい、引き裂いてやる。


奴らが拷問器具に手を触れた瞬間に飛び出た。

天井を足で突き破って右手のサブマシンガンをあたりにぶちまけてやった。

着地の衝撃が足に伝わった、6人いるうちまずは一人目、銃弾が頭蓋骨を突き抜けて地面に叩きつけられた、脳漿が冷たいアスファルトを深紅に染めた。


残る五人、即座にドスのような短刀を取り出した、銃にそんな短剣で勝てるわけが無いだろう。


惨めな短小包茎程度の短刀を持って一斉に襲い掛かってくる弱いやつらを足払いで転ばせてやると真の臓腑めがけておろした刃物。

おまえらに備わってる短小包茎短刀よりは長いぞ。


覚悟しろ悪鬼ども、5人4人と次々に始末していく。

残るは最後の一人のみ。


机に置いてある苦痛の梨を奪って彼奴との距離を取る。


こいつだけさっきの輩と勝手が違うみたいだ、こいつも持っているのか、拷問器具を。そっちが鋼の鎧を着るというなら、こちらもそのつもり。


黒いスパッツを破って苦痛の梨を膣に挿入してせしめた、血が流れる、それが足を伝う。もちろんながらかなり痛い。挿入しただけでは変身できないのか、なら、広げてやろう。

膣の中からギチギチという痛々しい音が気味悪い教会の中に響いた。

なんのこの程度の痛みで叫んでやるものか、私の断末魔をこの目の前の奴に聞かせてやりたくなんかない。お前が聞かせろ、お前も変身、するんだろう。


完全に苦痛の梨を広げ切ると、冷たい感覚、鉄の感覚が全身に走った。感情を感じさせない鉄が私の体全身を染め上げていった、それも舐めるように。


鉄の鎧を纏った私を見て、奴は薄気味悪い笑みを浮かべた。何がおかしい、おかしいか。死ぬ前くらいは笑わせてやってもいい。思う存分笑え、死んだあとは三途の川に溺れてお前は二度も死ぬことになるから、苦しむ前に笑っておけばいい、かしこく。


不意に現れるは針が数百はついているであろう椅子、たしか、審問椅子などという名前の拷問器具。


それに喜んで座っていった、手を拘束ベルトが勝手に動き出した。


ようやく変身したか、悪鬼。


鉄の鎧を纏った戦士が二人、ただ二人立ち尽くした。

殺し合いをこれからするには、あまりにも静かすぎる場所で。


互いに向かい合ってお互いの魂を食らおうとする、足を運んで距離を徐々に詰めていく、薄汚くなったキリストの像がそれらを何も言わずにただただ見つめ続けている。


卑弥呼は辛抱ならん、もう辛抱ならんと言わんばかりに相手の首根っこ掻っ切り切る勢いでとびかかった、数メートルの跳躍、鋼の騎士になった特権、特別な力。

応、応、こっちも黙ってわめき泣いている女を黙ってはおかないと言い元黒ローブ、今現在黒鎧の男も反撃。


冷たい音、ギギギとなり始める、金属と金属がお互いをかすめ取っていく音がする。

細かな火花が比喩ではなく実際に散っていた、お互いを破壊しつくすまで止めない、やまない嵐が起きていた。


黒鎧の男が力で女、卑弥呼に勝って突き飛ばすと、胸の椅子を思わせる刻印を強くしつこく円を描くように撫で始めると、重く黒い太刀が姿を現せた。


それはそう使うのかと卑弥呼は学んで、自分もやってやると胸の梨の刻印を撫でた、出てきたのは見た目がやたらと目にしつこい銃。マスケット銃とかそういうたぐいの歴史を感じさせる銃だ。銃の扱いを学んで、それに長けていた卑弥呼にはちょうどいい武器だった。


重そうな太刀をもってのろのろとこっちへ向かってくる黒鎧の頭めがけて連射してやる、鉄と鉄がぶつかって、弾の鉄がはじき出されていった。これは効いていないみたいだ、ならばと次に狙うのは刻印、椅子の刻印、胸の中、心臓のすこしとなりの部屋にぶちまけてやるぞ鉄の弾丸ども、火薬のにおい、かおりを取れなくしてやろう。


ガッガッと弾が当たるたびに大きな音が鳴る、彼奴が歩く速度は当たるたびに遅くなっていくのがあきらかだった。

だからと言って相当なダメージを与えているようには思えなかった。

仮面をつけていても奴が笑っているのが透けて見えるようにわかる。

その感覚、鎧の力であるのかただの直観であるのかは今はまだわからない。


ゆっくりとこちらに向かっていたが急に駆け始めた、こちらに向かって、ただ一直線に。

すばしっこくて遠くからちょびちょびと嫌がらせしかできない惨めで情けなくて、勇気に欠けるしょぼい人間のお前の首を掻っ切って机の上に飾ってやろうというふうに。


このままでは確実に力負けすると察知した卑弥呼は胸の刻印を再び撫でた、何が起こるかわからない、何も起こらないかもしれないが、何か起こる、この状況を変えてくれる何かが起こると信じて刻印を愛撫した、舐め返した。


するとカラスよりも、タールよりもどす黒いマスケット銃は不意に光りだして、ここだいまだ、刻印を穿てと力を込めて黄金の銃から弾を放り出してやった。

弾も黄金になっていた、輝いた光がくらい教会をすこし照らして、相手の刻印にぶつかってはねじ込んだ、吸収されていくようだったけれども、相手は苦しそうな断末魔を挙げて胸からは黒い液体がドバドバと排出されていった。

こころなしか、相手の鎧が小さくなって薄くなっていく気がした。


「お前はあの時の女か、また会うときは、二人がかりで始末しよう、負けて悔しい思いをするのは趣味じゃないんだし。」


そういって黒鎧は教会の天井をすさまじい飛躍によって突き破って逃げていった。

弱い男だ。どうせその程度の人間なんだから、その程度の男なんだから、もっといい置き土産のセリフでも常に考えておくべきだ。


鎧を解除してやると、すさまじい疲労が卑弥呼を襲った。

まず一つの目的を達成して、やつらの教団を潰すという目標に向かって歩き始めた。

この疲れをどうか何かをして癒すために、まずは巣に帰って横に成ろう。

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私に家はない、家の代わりにしているものはある。

キャンピングカーだ。

私が体を鍛えるために海外で傭兵として働いていた時の賃金で買った大きなキャンピングカー。それが私の家。

教団に目を付けられたとて、家が移動できるとなれば相手もそう簡単に邪魔者の自分を吸い終わったたばこをアスファルトに踏みつけてやるように潰してやれないだろう。追いかけてこなきゃいけない、やってみるか。運転の腕もなかなか自分はある。

やってやらんこともない。


ソファーに横になってスーパー寿司を食っている最中、テレビには妙なものがうつるし、妙なことをアナウンサーが喋りだす。

移ったのは鎧、鎧を纏った男でしょうか、たぶん、しゃべり方からするにそうだろう。


教団の人間のみがあの悪魔と契約する拷問器具を持っているものだと思っていたが、私以外にもそういう人間がいるのか。テレビで報道されている、監禁されている女子高生をあの鎧の男が助け出したと。

教団の人間なら、そういった善行はしないだろうし、その女子高生だって攫って儀式の材料にでもするだろう。


あいつはなんなんだ、あいつは何者なんだ。


戦闘で疲れ切って重くなっていた瞼がそういった興味から急に軽くなった。


パチクリと瞼を閉じたり開いたりしながらうすくらいキャンピングカーの中にあるテレビを卑弥呼は見続けた。


奴を見つけ出す。奴の腹が知りたい。

もしかして、奴も私と同じ復讐者としてあの鎧を纏っているのかもしれない。


危険かもしれない、敵かもしれないが、一人では心細いという気持ちがあったのか、彼という拷問器具の所持者に惹かれていっていった。


女子高生監禁事件があったのは千葉県 印西市、向かってみる価値はある。


彼女はそう思うと、明日はキャンピングカーで青森から千葉まで移動してやるということを携帯のToDoリストに書き加えた。明日は朝6時に出発する、この駐車場から。















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拷問器具戦士・トーチャーマン スペルマ @ikazaburou

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