7篇:人間牧場・伍
──――
総督府本庁5階に設置された、打ちっ
乱雑に置かれた古い発電機が
本来の目的が損なわれた空間、
そう、今や
薄汚れた
手にした
だが、彼らはそれをしなかった。
「バズソーォォォォッ!!!」
抑圧され、
明らかに、
たじろぐ守衛は、不意を突かれた形で押し倒され、電動工具の
無慈悲な暴力はこの時だけ立場を逆転させ、支配者側にあった
この一瞬を切り取った時、暴力の
暴力の本質は、
そして、その暴力の結果作り出された残酷な光景は、其れを見た者達に幾つかの策を
例えば、思考停止による硬直、つまり、無抵抗、棒立ち。
そう、防衛本能への
守衛とは云え、元々は
殃餓共の
先天異常も
通常、
其れらが殃餓であり、人間であり乍ら、人間とは呼べない
特に、暴力を
普段、無抵抗な
“勇気”とは、根本的に違う無意識の攻撃性、肉食獣の持つ行動原理、その
野獣の本能、敵意とは無縁の
ユウジ達の優勢は、間もなく、
鶴橋は守衛の分厚い胸板に突き刺さるものの、無情にも根元からぶち折れ、
――
元殃餓の守衛の、其の丸太の
――ギャッ!
口から鮮血を吹き出し、脇腹からは
一瞬の出来事、とは云えない。
只、其の僅かの時間、ユウジと共に戦っていた家畜人達は、その
怒りに満ち
そう、思い出したのだ、守衛達が元殃餓共だと。
其れは、荒野を
冷や汗を感じつつ、恐怖が
家畜人達は、我に返ってしまった。
急に立ち止まり、其れ
――まずい!
ユウジがそう思った、
「ンああッ!早くその汚らわしい
――ゥオオッッ!!
守衛が声を上げ、
止まらない、止められない。
守衛の振るう凶器に吹き飛ばされ、その屈強さに
一方的。
息絶えた
足が
仲間達がいとも
こんなものを見せ付けられて、正気を保つのは酷な話。
ユウジは、首筋を伝う汗を
――逃げ出したい。
もう、
総督を倒す
逆に追い詰められた。
この
逃げる、しか無い。
そう
力強く、一歩。
――うおおおぉぉぉーーっ!!
「…グヘッ」
強烈な回転を伴ったハンマードリルの切っ先が守衛の
喉と口から大量の血を吐き出し、地に倒れる。
横たわった巨体を乗り越え、ユウジは踏み出す。
“勇気”。
奴らとは、違う。
覚悟が、
「親父の
行くぞ、バズソー!!」
奥に
「ンん~、下らん。
守衛の
――ブゥォン!
ハンマードリルで防ぐ、がそのまま吹き飛ばされる。
激突。
部屋
――ハ、カッ…
衝撃で一瞬、呼吸困難。
違う。
そう、何もかもが。
パワーもスピードも体力も。
何より、暴力の“質”が。
動けない。
体が
浅はかだった。
“勇気”と云う思い込み。
これは勇気じゃない。
驕慢。
何とかなる、と思い込んだ
自分には、背負ってるものがある“父の仇を討つ”と云う想い。
この感情が、特別、だと思い込んでいた。
特別だから
相手は、
まともな人間が勝てるような連中じゃない。
殃餓を恐れ、逃げ惑った彼らの方が、遙かに正しい。
俺は、勇気と偽った
俺は、違う、と。
薄汚れた発電機の光を背に受け、
――父さん、ごめん。母さんを
――そして、サチ、すまない。帰れなくて…
――愛してるよ、サチ…
影が
突然、守衛の影が
「協力しろとは云ったけど、バズソーを
体積を得た黒い塊のようなものが影から分離すると、
どちらが先かは、分からない。
ほぼ同時に、守衛の肉体が分断され、それぞれ床に倒れ
守衛の体は不自然に
真っ二つに引き千切られているにも関わらず、一切の出血が見られない。
異様なのは、その傷口。
傷口と
モノクロからグレースケールに、鮮やかに、明確に、彩度を上げ、
「ノ、ノンナ!」
「…他のフロアに居た
――な、なんだコイツはっ!?
余りにも不自然
ぞろり、と
じろり、と
のそり、と玉座から
「ンん~?なんだ、この小娘はァ~?」
「――お前が、バズソー、か?」
「ンぁ?
ンで小娘っ、
「
「ンぁあ?」
「――死神」
「ンん~?ぷっ、ぷァ~っふぁッふァっフぁっファ~ッ!」
「――」
「――つまらン、
思い思いの凶器を手にした守衛共が少女を取り囲み、息を
少女も目を閉じ、押し黙り、ぴくりとも動かない。
守衛達は、
張り詰めた空気。
静寂は、
――うぉぉぉぉぉーーーッッ!
一斉に
カッ、と瞳を開く少女。
そして、ぼそり、と
「影に
白き戦慄のエクリプティカ 武論斗 @marianoel
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