6篇:人間牧場・肆
――総督府本庁
牧場が燃えている。
火竜の
――ドンドンドン!
総督の寝室を激しくノックする音。
――バズソー様!大変です、起きて下さい!
ガチャガチャ、とドアノブを
鍵が掛けられている、当然。
深夜に自室の鍵を閉めない支配者等、
キングサイズのベッドから飛び上がるように起き上がったバズソーは
「ンあ~、何事だッ!こンな時間にッッ!!」
「
「ン!?は、叛乱だとォ!!?何を馬鹿なッ!!」
その重そうな体をベッドから滑らすように降りる。
でっぷりとした腹をぼりぼりと
執政を招き入れ、険しい表情で問う。
「
「
破壊音や
従順なペット以下の家畜人が叛乱を起こした事等、過去、一度も無い。
信じられない、と云った表情で牧場を見入るバズソーに、執政が
「閣下!一刻も早く、ご
「ンん~…
「!?……はい?」
「ンン、有り得ンなァ~!」
「な、何がで御座いましょうか?」
「
「…た、確かに……
「
「成る程。では、どの
「強者を集め、
「御意!」
「そうだッ!“
「!!な、なんですとっ!?實驗體を此処にですと!?危険過ぎますぞ!」
「馬鹿者ォ!今使わンでいつ使うんだ!」
「は、はい!!」
――許さンぞッ、
※ ※ ※
ユウジと
途中、更に解放した収容者達と合流を果たし、収監所を巡り、父を探していた。
前頭葉切除手術を受けた者は
勿論、
前頭葉切除対象者は、危険思想の持ち主、特に総督府に対して反抗的な意見や態度を取った者を政治犯や思想犯として、
畜産廃棄場、と云う管区名の由来。
一般畜産場の収監所とは、大分作りが異なる。
所内の部屋は、鉄格子ではなく、鉄扉で仕切られ、全て独房になっている。
詰所は配備されておらず、看守どころか夜警も来ない。
明らかに、毛色が違う。
鉄格子よりも丈夫な錠前が取り付けられており、多少、壊すのに手間が掛かる。
――うわぁぁぁぁ!!!
ユウジより先に入り、その頑丈な錠前を砕き、最初に鉄扉を開けた者が、叫び声を上げる。
「ど、どうしたんだ!?」
「あ、あれを…」
粗雑な金属製の椅子に鎖と
胸の生皮を
肋骨と胸骨、前面の筋肉組織の一部が取り除かれ、心臓や肺が剥き出しになり、透明フィルムで胸部を覆っている。まるで、小窓のように。
人工肛門のパウチは取り替えられず放置され、破け
見るも
「な、何故、こんな
「く、狂ってる…」
「こんな酷い仕打ち、人間のやる事じゃない」
「…それにしても、こ、これは……とても助けられん…」
「ハッ!!」
「どうしたんだい、あんた?」
「まさか、父さん!!」
ユウジは、収監所内を走り回る。
開け放たれた鉄扉を覗いて中を確認しては次の部屋に、次々と。
覗く度に広がる
狭い独房の暗がりでも目が利く程に、何度も何度も父の名前を呼びながら、駆けずり回る。
何度目の確認か、既に覚えていない。
錠の打ち壊された鉄扉を蹴飛ばして独房の中に踊り入ると、
――父さんッ!
天井からピアノ線が伸び、無数の釣り針で体中の皮膚を
両腕には両足が、両足には両腕が、外科手術によって
両腕肘辺り、両足膝辺りには、荒い縫い傷が痛々しく残り、化膿し、
同じように腹部にも雑な
「父さん!!俺だよ、父さん!」
「――ユ、ユウジなのか…?」
「ああ、そうだよ、父さん!」
「まさか、こんな処で再会なんてな…」
「…ああ」
「…みっともない姿になっちまって、すまん…」
「……」
寂しそうな、残念そうな、そんな表情を浮かべ、うっすらと涙が光る。
「ユウジ…」
「…父さん」
「――ユウジ、頼みたい事がある…」
「…なんだい、父さん?」
「――俺を、俺をっ……殺してくれ!」
「なっ!?」
「殺してくれ、頼む、ユウジ!」
「な、何を云ってんだ、父さん!そんな事、出来る
「俺は…俺は、長く
「…そんな事ないよ、父さん…」
「……それに、母さんにこんな姿、見せられない…」
「……父さん…」
「頼む、ユウジ!俺を殺してくれーッ!!」
「そ、そんな…」
「頼むっ!ユウジ、助けてくれ、ユウジ!俺を、俺を死なせてくれ!!」
「………父さァァァーーーーん!!!」
手にしたハンマードリルを父の胸に突き立てる。
鮮血がユウジの顔を染める。
父は、
「――ユウジ……か、母さんを…」
「……」
「…母さんを――頼む……」
「父さぁーん!!」
――バズソォォォーッ!!絶対に、許さないッ!!!
※ ※ ※
ノンナは、総督府本庁の敷地内にいる。
何度か忍び込む事で、本庁については、
送電線を切断し、本庁敷地内を停電状態にする。
水道管とガス配管を砕き、町と総督府を仕切る城門の
砕いたガス管近くには、
停電後、
程なくして、爆音を伴い、施設建物各処から火の手が上がる。
複雑に入り組んだ配管を
本庁施設内に、正面から
打ち倒した職員を、正面玄関からエントランス内に並べる。
――こうしておけば、解放された家畜人達も此処に入り易くなろう。
2階迄は、外部の人間でも入る事が許されているスペース。
その為、昇降機や階段側のフロアは広い間取りとなり、その前方を長テーブルで仕切っている。
その長テーブルの上には、
――
暴動を
――
普段、何でもない時であれば、この様な理不尽な行為に住民や収容者は、
其れ
圧倒的に優位な立場にいなければ、その支配力、
――バズソー…
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