5篇:人間牧場・參
――人間牧場
ユウジは、
牧場への潜入は、実に簡単だった。
牧場の公的な名称は、牧場の公的な名称は、再生社会共生保護育成プログラム。
牧場で飼育されるのは、
総督府が、健全な社会活動が出来ないと判断した者は、
その中で、犯罪者以外は、裁判を待たずして、牧場に収容される。
総督府保安本部付
この再生適合者の中には、
保護対象者の中で
全ての牧場収容者に前頭葉切除が適用されないのは、
尚、人間牧場に収容されている者達の身分は一律、
ユウジは、
巡回中の再生保護官を見付け、
結果、食事を与えてくれると云う条件で着いて行くと、
囚われの父を救い出す為、彼は自ら
※ ※ ※
牧場内では、
刑務所丸出しの作りで、外界とは高い壁と鉄条網で遮断され、物々しい
施設は、
各施設からは、悲鳴や奇声、罵声が引っ切り無しに聞こえ、あらゆる場所に
バズソー子飼いの殃餓達であり、
牧場に入れられた収容者達は、それぞれ区分され、各
不具者は
不具者が多いのには訳がある。
懲罰の肉刑を受けた者や看守の気まぐれの暴力によって身体を欠損した者達が次から次へと送られて来る為。
ユウジが収容された管区“一般畜産場”は、比較的落ち着いている。
軽犯罪者や乞食、放浪者等が入れられている施設。
金網
ユウジは、強制労働の合間、その短い休憩時間を利用して隣接するグラウンドから父親を探すが、そんなに簡単に見付けられるものではなかった。
外から見付けるのは容易ではない。
どうにかして、前頭葉切除を受けず、隣接管区“畜産廃棄場”に入る
――深夜の総督府
7万坪にも及ぶ総督府の敷地を探るのには、多少手間が掛かる。
彼が持つ
総督杖は、まほろばから与えられた、このシンクアの支配者の
バズソー自身への接触法は幾つもある。
併し、総督杖を
ノンナ自身、バズソー本人の始末は
故に、総督杖を所持している時を狙うのが最も良いのだが、
そこで
――暴動。
暴動が起こり、危機感を
独立した支配者であれば、私財を
ある一定の
その時こそ、
町で暴動を
そこで考えられるのは、総督府同敷地内に“人間牧場”と呼ばれる収監施設。
併設されたこの施設には、政治犯や思想犯も収監されている。
政治犯や思想犯を
混乱さえ起これば、後は、狙うのみ。
※ ※ ※
総督府の南、人間牧場施設群。
只の
併し、今は此処こそ、火薬庫。
施設内、疎らに置かれた
その
牧場内が静まり返る事は、決して無い。
環境音が日中より少ない為、一層不気味。
深夜、基本的に日中の過酷な強制労働に疲れ果てた収容者は深い眠りについている。
併し、深夜帯に労働させられている者達もいる。
発電所と水源掘削の地下施設。
前者は、人力で発電機を回す予備発電、後者は、人力による
共に非効率な人力作業の
住人からのクレーム等に対するものではない。
単に、バズソーが騒音を嫌う、只それだけの理由。
ノンナは地下水源掘削施設に向かう。
水源掘削の地下現場。
掘削には、
これら
奇妙な
鷹爪に握られた手が一瞬、看守の首に溶け込む
――ぬるり。
黒い影のような塊がノンナの親指、人差し指、中指の、その三本の指の中に、確かに握られている。
まるで、外科手術でも
僅かな、
絶命。
其の異様な光景を目の当たりにした
――しーっ!
ノンナは、口許に人差し指を添え、制止させる。
「静かに、声を出さないで」
「!?だ、誰なんだ?」
「
「どう云う事だ!?」
「此処から出るの。武器は今、
「…そ、そんな事が!?」
「待ってて。直ぐに分かるから」
少女はそれだけ云うと、其処から立ち退き、直ぐに闇に隠れた。
程なくして、僅かだが歓喜の声が上がる。
何処からとも無く、現れ
「みんなッ!此処から脱出するの!
手にした
事態が
強烈な抑圧環境下にあった家畜人達は、
思い思いの
「何人か、わたしに着いて来て!一般畜産場に向かう。
彼女もハンマードリルを手にし、幾人かの家畜人達を引き連れ、別の階段から地上に向かった。
※ ※ ※
一般畜産場に辿り着く間、数人の
管区を仕切る金網を打ち破り、
ノンナの後を追う家畜人の一人が篝火の薪を手にし、手近の可燃物に付け回る。
――未だ、早い…
放火するには早過ぎる、と少女は思うものの、今や家畜人達の能動的な破壊活動を優先した方が得策と踏む。
途中、幾人かの夜警を打ち倒し、一般畜産場の収監所に
鉄扉を䂨り工具で打ち壊し、中に入る。
幾つもの鉄格子で覆われた部屋が暗い通路に沿って並ぶ。
次々と鉄格子の鍵を壊し、声を掛ける。
「さあ、もう自由です!わたし達と一緒に逃げましょう!」
通路奥の
ノンナの敵ではないのは無論、今は付き従う家畜人達も手した
混乱していた収監者達も、
鎖に繋がれてた者は、
看守の凶器を奪い、更に他の鉄格子を砕く。
解放の連鎖が続き、自由となった家畜人達が
ノンナも手近の鉄格子の鍵をハンマードリルで砕く。
砕き開かれた鉄格子の中から、
「き、君は!!」
「!?」
「ノ、ノンナなのか!!?」
「…
「俺だよ、ユウジだよ!」
「…久し振り」
「何故、君がこんな処に?
「事情が変わったの――あなた、父親を助けたいのでしょ?」
「!?ああ、そうとも」
「ならば、わたしに協力なさい」
「え?ど、どうすれば?」
「わたしは総督を襲う。あなたは、解放された収容者何人かを連れて、畜産廃棄場に行きなさい。そこで此処と同じように収容者を解放し、施設内で暴れて欲しい。あなたの父親は、畜産廃棄場に居るのでしょ?」
「!?バズソーを襲う!!?そんな事が出来るのか?」
「あなた達が施設で上手く暴動を起こせさえすれば、可能」
「し、しかし…」
ノンナは、手にしていたハンマードリルをユウジに手渡す。
「のんびり話をしている暇はないの。あなたがやるにしてもやらないにしても、わたしは総督を襲うから」
「…わ、分かったよ。親父を救い出し、施設内で暴れてやるさ」
「
「でも、無理するなよ!君が凄い事は知ってる。併し、相手はバズソー、部下も沢山いる。気をつけるんだぞ!」
「
「それじゃ、また後で!」
「
収監所を出たノンナは、北にある総督府本庁に向かって走り出し、
遅れて出たユウジは、南西の隣接管区、畜産廃棄場に向け、数人の家畜人達と共に向かった。
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