第14話 和平と裏切り
戸田康光は織田信行の裏切りを期待していたが逆に裏切られる結果になった。まず、松平信定、酒井忠尚、大草松平家が反旗を翻して航空戦力と共に今川軍の後方を突こうと信行軍と共に北上した。
刈谷城は水野勢に防御が手薄な所を攻撃されて容易におちてしまった。まさに破竹の勢いであった。
しかし、水野家と縁戚にあったが今川方に降伏して今川方として緒川城を包囲していた久松家を中心とする知多半島南部の諸勢力は寝返らずに今川軍と協力して頑強に抵抗したために知多半島での戦局は逆転しなかった。さらに安祥城にいた今川軍も出陣したために水野勢の進撃は刈谷で終わってしまった。
反乱松平勢と信行軍は北上して大府市を取り戻し、今川方の航空基地も奇襲して多数の航空機を撃破するものの東海市にいた朝比奈泰能の反撃を受けて刈谷まで撤退する羽目に陥った。
正面で戦っていた今川軍は織田軍の総攻撃を受けたが頑強に耐え、秀康率いる軍勢が援軍に来たことで無事に天白川を越えて撤退に成功した。
織田軍は刈谷を取り戻した以外に特に戦果を挙げられずに攻勢の機会を失ってしまった。今川軍も損害が予想よりも大きくなり過ぎて既に戦意が失われつつあった。
こうして両陣営は和平交渉に移ることになった。
※酒井忠尚の居城である、三河上野城は豊田にいた酒井忠次が編成した三千の戦力に攻められて落城、勢いに乗る忠次は松平信定の居城と大草松平家の居城も落城させてしまった。それぞれの居城にいた一族及び家臣は捕らえられて自らの処遇が『どうなるのか?』和平交渉を見守るしか無くなってしまった。
和平交渉は秀康手動で行われることになった。義元公及び太原雪斎は危機的情勢となった関東方面を重視していたことと秀康に和平交渉をさせて力量を見極めようとしていた。
「和平交渉は誰が来るかな?」
「さぁ佐久間信盛殿辺りじゃないですかね?」
数正殿と二人で仲良く話していると交渉役に織田家から三人の人物が来た。一人は薄い青色の髪をした清楚系の美少女、一人は紫色の髪をした美少女、そして黄色の髪をした愛嬌ある顔をした少女だった。
「秀康様、今回、織田信長様から和平の交渉役を命じられました、我ら三人を紹介したいます。」
そう薄い青髪の清楚系の美少女が言うと他二人を含めて紹介し始めた。
「私は滝川一益と申します、こちらの紫色の髪をしておりますのが主席になる丹羽長秀殿です、その向こうにいる黄色い髪の人が木下藤吉郎と申します!」
「「えっ!?」」(驚く秀康と富正)
えっ!?な、なんだってー!木下藤吉郎とは、つまり義理父様(秀吉)ということですか!!びっくりだ、心臓が飛び出る勢いだ!!愛嬌はあるな!とは思ったが義理父様とは思わなんだ…
「驚くのも無理はございません、今だ足軽の身の者です。しかし、信長様が今回の交渉役の一人として選びました一人です。どうか、よろしくお願いいたします。」
どうやら滝川殿は俺が義理父様を見て驚いたのを勘違いしたようである。
交渉は多岐に渡ったが基本は今川に有利な要求ばかりであった。しかし、交渉で一番難航したのは三つであった。
「捕虜の方だが…一人三千万を支払って欲しい」
「三千万!!どひゃー!!それは高すぎますよ!!」
いきなり叫びだしのは義理父様だった。もちろん吹っ掛けただけで三千万は取れるとは考えていなかった。
「此度の両軍の戦いの結果を見れば妥当であろう!」
「いやいや、高すぎますので!値下げ頂きたい!!(土下座)」
という感じで義理父様の値切り交渉を生で体感した。
「もう一声!もう一声!」
「そこをなんとか!そこなんとか!」
「頼みますぞ!その値段では信長様の元に帰れませぬ!!」(泣きついてくる。)
「哀れな猿を助けると思って値下げください!!」
などいろいろ頼み込まれた。そして最後になって切り札とばかりに言われた言葉があった。
「捕虜の値段を下げていただければ!損害金を秀康様の要求通りに呑みますぞ!!」
「ほう!だが一千万は譲れないな!!」
「では!では!賠償金も増やしますので三百万で手をうちませぬか!」
「三百六十万は欲しいな…」
「乗った!三百六十万にしましょうぞ!」
「お、おう」
こうして値切られた挙句に決着した。どうやら織田方は現金払いは避けて分割後払いにする戦略のようであった。そうすることで賠償金などを支払っている間は今川は織田を攻めるのを躊躇するだろう!という魂胆があったようである。
二つ目の困難は水野氏の処遇であった。水野氏は信行が好戦的な主張をしていることもあって当初は和平に応じない構えを見せていた。織田家にとって水野家は重要な同盟者だっただけに水野家が和平に応じない限り、織田も和平に応じる訳にはいかなかった。
「では水野殿には刈谷と東浦町と大府の全域割譲で和平に応じて欲しい、ただし、軍を含む全ての通行許可権と通商権及び大府市非武装を約束した上とする。」
「分かりました。それで手をうつように水野殿を説得します。」
滝川殿が言ったように水野信元は上記の条件に渋々応じて和平を受け入れた。
だが最大の問題は信行殿となった。信行殿は今川を裏切って味方になった松平信定、酒井忠尚、大草松平家を引き渡すことに頑として拒否の姿勢をとった。当初は水野家の家臣達も信行に賛同した、水野忠重などは好戦的で刈谷で今川軍を迎い撃つ準備をしていた。しかし、当主の信元が和平に応じる姿勢になると水野勢も戦意を失い和平ムードへとシフトした。
「当然だが!我らを裏切った連中を許すことは無い!!絶対にだ!!!」
「分かっております…」
信行は「一人でも戦う!」とか言って譲らなかったが側近の林、柴田の説得と信行の妻を懐柔した赤鶴、青彩、黄猿によって最終的には血の涙を流しながら同意することになった。
こうして和平は以下の通りになった。
一、刈谷を除く、三河の西三河を松平家に割譲する。
二、尾張のうち、豊明市、日進市、東郷町、東海市、知多市、常滑市、半田市、武豊町、名古屋緑区、を今川家に割譲する。ただし、織田方の通行権(制限付き)と通商権を認める。
三、久松家及び知多半島勢力の今川家帰属を認める。
四、損害金及び賠償金を合計二兆三千億を支払う。
これらが和平の内容となったが…和平条約の調印及び責任は守護の斯波家にあると言うことを織田方の要求という形で認め和平は結ばれた。
※織田方の真意は分からないが…今川方は斯波家の持っている資産に目を付けていたようである。斯波家は没落したとはいえ尾張守護と越前守護であった。さらに遠江守護(今川家との共同守護)の地位も破棄していない。尾張国内の資産が莫大なのは当然だが、対外資産は国内資産を大幅に上回るものであった。三河、遠江の両国にも資産があった、他に今川家の経営する銀行にも資産が預けられていたし、今川方の企業の株や債券も保有していた。これら対外資産は今川方が取り押さえすることが可能な資産が多かったために今川は斯波氏を和平の責任者にするのを容認した。
松平家にとっては三河の完全統一は失敗したが…松平信定、酒井忠尚、大草松平家が反逆してくれたお陰で彼らの領地を取り上げることが可能になったので非常に助かる結果となった。
この和平条約に『ただ一人、満足しない者がいた』
「兄上は薄情者だ!!」
そう織田信行である。彼の心には兄への不満が溜め込まれていた。
それを赤鶴、青彩、黄猿が心配そうに見つめていた。
松平家(徳川家)スタートは転生チート使っていても難易度は高いようです… @reitesia
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。松平家(徳川家)スタートは転生チート使っていても難易度は高いようです…の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます