リアルなぞなぞ~入口と出口の話
鵜川 龍史
リアルなぞなぞ~入口と出口の話
〔登場人物〕
出:出題者
通:通訳
異:異邦人
生:生真面目
天:天然
出:なぞなぞ出しまーす。入口一つで、出口が二つ、なーんだ。
(通訳は、出題者・常識人・天然の話を、常に翻訳して異邦人に伝え続ける)
異:(妙な手の挙げ方)□■◇!
出:どうぞ。
異:(通訳を意識しつつ)○×△☆○×△☆○×△☆○×△☆。
通:私の国には、こんな話があります。昔々、入口が一つなのに出口が二つの建物がありました。人々は言いました。「不思議だね」
出:うん、不思議だね。――バカか!
生:(急にしみじみしながら話に割り込んでくる)俺の高校時代はさ、みんながみんな大学受験、って感じじゃなかったんだよね。入口は一つでもさ、自分の夢と家庭の状況のはざまでさ、選べる選択肢はみんな違ったんだよね。
出:えーと、何の話かな?
異:(涙を拭きながら)○×△☆○×△☆○×△☆○×△☆。
通:私の国でも、高校生には二つの出口があります。生きてここから出て行くか、死んでしまうか……。
出:〈虎の穴〉かよ! てか、どこの国だよ!
天:僕の国にも――
出:お前は日本人だろ!
天:(元気よく、嬉しそうに)はい!
出:(溜め息交じりに)で、答えは?
天:僕の国にも、〈トイレの花子〉さんという都市伝説があります。不幸な花子さんはトイレを流すだけじゃなく、涙も流しています。つまり、トイレの入口は一つだけど、花子さんの出口は二つだっていうこと。
出:(困惑気味に)はい?
異:(涙を拭きながら)○×△☆○×△☆○×△☆○×△☆。
通:私の国にもこんな話があります。トイレに入ることは、すなわち仏の道に入ることでもあると。
出:どういう意味?
異:○×△☆○×△☆。
通:化粧室、つまり、毛が消失。
出:日本語じゃん! てか、あんた、日本人?
生:いやいや、それじゃあだめだよね。そもそも、「出口が二つ」って聞いてるのに、入口が二つになっちゃうよね。だめだよね。不正解だよね。(必死な様子で)
出:(うんざりした様子で)不正解だよ!
生:(嬉しそうに、出題者を指さしながら)そうだと思ったよね。
天:で、答えは何なんですか?
出:ズボンだよ。
天:あー、なるほど。 ズボン!(拳を胸の前で抱え、その拳を前に突き出しながら、グーからチョキにする)ってこと?
出:何の擬音だよ! てか、そのフリは何?
天:なんか、そんな感じの、ほら、あるでしょ? ズボン!(フリを繰り返す)
出:ないよ!
異:(涙を拭きながら)○×△☆○×△☆――
出:お前、泣く意味が分からん!
異:(出題者を無視して、通訳を見ながら)――○×△☆◆ギオン◆△☆。
通:私の国にもこんな話があります。八坂神社は――
出:それは、違う祇園! てか、今、思いっきり「ギオン」って言ってたよな。
生:うわー、奇遇だよね。俺たちの国にも、京都っていうところに、八坂神社と祇園っていう、同じ名前の場所があるよね。
出:だから、こいつ、多分日本人だから。
天:ズボン!(出題者の目に向かって、フリを繰り返す)
出:(手で振り払いながら)目つぶしするな!
異:(通訳に向かって)○×△☆○×△☆○×△☆○×△☆。
通:たった一つのなぞなぞから始まったこの話、まるで出口が見えませんね。
異:(片言)オアトガヨロシイヨウデ。
(幕)
リアルなぞなぞ~入口と出口の話 鵜川 龍史 @julie_hanekawa
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