リアルなぞなぞ~パンの話
鵜川 龍史
リアルなぞなぞ~パンの話
〔登場人物〕
出:出題者
先:先輩 パリピ
後:後輩 パリピになりたい
学:学者 くどい
天:天然 ズレてる
出:なぞなぞ出しまーす。パンはパンでも、食べられないパンはなーんだ。
先:(手を挙げて)はい!
出:どうぞ。
先:(おどろおどろしく)そいつぁ、パンデモニウムっしょ。
後:さすが先輩!
先:だろ?
出:いや、なんで……。
先:なんでって、パンデモニウムよ。悪魔の住んでいる町って意味よ。つまり、俺らの住んでる、この町ってことっしょ。
後:さすが先輩!
学:いやいや、ちょっと待ってください。あなた、それ質問に対する答えになってませんよ。
先:じゃあ、あんたは何だと思うんだよ。
学:パンデミックに決まってるじゃないですか。
先:なんだよ、それ。
学:(眼鏡を上げて)これだから、パリピは。
後:おいおい、パリピの何が悪いんだよ。
先:(後輩を止めながら)待ちなって。こいつの言い分を聞いてやろうじゃないか。
後:先輩がそう言うなら。……おい、お前! 命拾いしたな!
学:(咳払いをして、再び眼鏡を上げる)パンデミックというのは、ご存知の通り、感染症の世界的な大流行のことです。空気感染・飛沫感染・接触感染のいずれの経路でも、口から侵入するケースが最も多い。だから、マスクが重要な予防策になるわけですね。つまり、食べられないパンは「パンデミック」だということです。いかがでしょう?
先:ちくしょう。いかにも正解、って感じの解説じゃねえか。
後:先輩!
出:いやいやいや。違うよ。正解じゃないよ。どっちも違うよ。
先・後・学:えええー?
天:当り前じゃないですか。「パン」を聞かれてるんだから、「パン」が下にくる言葉を答えないと。
後:おいおい、何言ってんだよ。なんで「パン」が下に来なきゃいけないんだよ。生言ってんじゃねえよ。
先:(後輩を止めながら)待ちなって。こいつの言い分を聞いてやろうじゃないか。
後:先輩がそう言うなら。……おい、お前! 命拾いしたな!
天:(首をかしげつつ)言葉の順番の話だよ。一般的に、被修飾語が下に来るじゃない?
学:なるほど、そういうことですね。
後:おいおい、何二人で納得してんだよ。先輩が取り残されてるじゃねえかよ!
先:(後輩を止めながら)待ちなって……お、俺か?
後:……おい、お前! 命拾いしたな!
天:(首を激しくかしげつつ)例を挙げればわかりやすいかな。例えば、モンキーバナナは、モンキーの種類じゃなくて、バナナの種類でしょ。つまり、下にパンがこないと、パンの種類にならないということなんだよ。
後:先輩、分かりました?
先:お、おう。
天:ということで、僕の答えを聞いてください!
出:どうぞ!
天:あんぱん!
出:……なんでだよ。
天:あんぱんって、上に何か乗ってるじゃないですか。ゴマとかケシの実とか。
出:乗ってるね。
天:あれ、僕、苦手なんですよね。
出:お前の好みについての質問ではない!
後:(出題者に向かって手を挙げる)はい!
出:言ってみろ。
後:クールジャパン!
先:アルセーヌ・ルパン!
学:A級戦犯。
(後輩・先輩・学者が一斉に出題者を見る。出題者は困惑の表情)
出:違うんだけどな……。
先:(手を挙げて)はい!
出:(救いを求めるように)どうぞ。
先:(指で銃の形を作って後輩の胸に向ける)パーン!
出:(頭を抱える)何なんだよ……。
後:(胸を押さえてうめく。が、しばらくして手を見る)あ、あれ? 俺、今撃たれたんじゃ。
先:空砲だよ。(出題者を、顎の動きで示しながら)ゲームマスターを騙すためにな。
後:全く(二人で拳を正面から合わせる)食えないっすね。
先:……の、パン!
出:「の、パン」って言われても……。
天:正解は何なんですか。
出:フライパンだよ。
天:ああ、納得。飛んでるパンは、確かに食べられないな。
出:いや、そういう話じゃ……。
学:なるほどね。調理器具は食べ物ではないからな。確かに、これは間違えやすい。盲点をついた、いい問題ですね。
出:どうやって、フライパンと料理を間違えるんだよ。
天:え? 間違えないの?
出:だいたいさ、食事に関するなぞなぞなんだから、台所とか食卓にあるもので答えないと、なぞなぞの答えにならないんじゃないの。
後:その答えも、なかなか食えないっすね。
出:うるさいよ。
(幕)
リアルなぞなぞ~パンの話 鵜川 龍史 @julie_hanekawa
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