支えがあるからやっていける。長ったらしい言葉はいらない。「ごめんね」と「ありがとう」、それだけで伝わる。そんな、心温まる素敵な夫婦の物語です。作中に登場するお茶漬けが優しさとともに身体へと沁み込んでいき、読後、お茶漬けを食べた時のようにほっと温まる作品です♪
ずっと空手に時間を費やしてきた夫と、それを支えたいと望む妻。疲弊した彼は、自信の能力と家庭を省みる。そんな彼を癒すのは、妻の細やかな言葉と食事。素朴な味と飾らない会話に見える優しい愛情が、二人の関係を鮮明に映し出していると感じました。妻はあくまでも後ろを歩く控えめな姿勢ではあるけれど、夫の抱く複雑な心情を優しく掬ってくれているのではないかと思います。見守ることが支えになる。胸に沁みるお話でした。
ああ夫婦っていいなぁ……と感じられる良い短編でした。夫から妻への、妻から夫への互いの愛があふれています。また、作品としての質の良さだけでなく同じプロットで文体の違いを楽しむという企画のテーマにうまく沿っていて、作者さんのオリジナリティを感じる作品でもありました。