【一話】世界の地図を求めて

「痛っ!」


俺は江風 白、現実なんてつまらないと言ったが流石にこんな事までは予想していなかった。

飛ばされたのが森とかなら良かったんだが、まさか何も無い田んぼ道みたいなところに出るとは…

横には二衣奈がいた。

同じことを思っているのか、不屈な顔をしている。


「空が、黒い…」


二衣奈が空を見上げ呟く。


「ザ・戦争って感じだな、こりゃ」


俺と二衣奈はまずゲームで言う操作方法というものを解析し始めた。

どうやら意外と簡単な操作らしい。

って二衣奈が見つけたんだけれど…


視界の右下にアイコンがあり、その場所に指が重なるとメニューとやらが開く。

そこには

装備、レベル、持ち物、チーム

の4つの項目があった。

4つだけかよって思ったが殺し合いとか言ってる世界なら任務とかあるわけないと悟った。

チームを見るとどうやら、俺と二衣奈がチームになっているようだった。


「白とチームかよ…」


「悪かったですね…」


名前は俺はハク、二衣奈はニイナとなっていた。

そのまんまじゃねぇか。

とは思ったが名前が変わると色々と面倒くさそうだったのでこれでもいいかと小さいため息をついた。


「私は弓、銃系か…近距離が得意なんだけど」


二衣奈は機械見たいな鎧を纏ってるような姿だった。


「俺は片手剣だな、なんか普通…」


俺は身を守れるぐらいの装備姿だ。

でも、天使が言っていたようにレベルはMAXでステータスもかなり高いように思える。基準がどんなもんか分からないが、俺らが最強で4桁ってことは普通の人は3桁ぐらいだろうと勝手に推測した。


「おや、あなた方はルーキーですか?」


後ろから男の声が聞こえた。

振り返ってみると、どっからどう見ても魔道士って感じの男が立っていた。


「んまぁ、そんなとこだ」


俺は情報が欲しく交渉を望んだが、どうやらここの奴らは交渉なんて文字は無かったようだ。


「なら、殺しますね」


「なるほど、こうなるわけね」


二衣奈が納得したように呟く。


「少し情報をくれないか?こっちは来たばっかりでよく分からないんだ」


俺は無理矢理交渉を提案した。


「それは、私に勝ったら教えてやろう」


ほう。それなら戦うしか無さそうだな。


「ここは俺に任せとけ、殺さないから大丈夫」


二衣奈は小さく頷く。

俺はそう言って鞘から剣を取り出し、構えに入った。


「一つ言っておきましょう。魔道士は片手剣の天敵です。その事がどういうことがわかりますか?私の方が有利、つまりあなたは勝つのが難しいということー」


俺は魔道士の男が突っ立って話している隙を見て、疾風の速さで男に近寄る。

俺は男の首に剣が触れるスレスレで止めて言い放った。


「そんなの誰が決めた。勝つのが難しいならば戦わなければいい、その一つの手は先手で追い詰めること」


「ひいぃっ!!」


男は腰が抜けたのか座り込んでしまった。ガタガタと震えているようだった。


「教えてくれ、この世界で最強は誰だ?」


まずここからだ。現段階の最強を探して、先に死んでもらう。死ぬと言うのはどうも悪いイメージが湧くから成仏とでも言おうか。

後は世界の仕組みが分かればこの世界を終わらせることが出来る。

ただ、それを5週間で出来るかどうかが問題になってくる。


「この世界の最強はイオナと言う双剣者、悪魔との契約を交わしその力を自由自在に操れると言う。私も姿は見たことはない」


悪魔?契約が出来るのか…

ただ、俺らには難しいというのはすぐに分かった。

なぜなら俺らはまだ現実世界で死んでいないんだから。


「私からも問いたい、この世界はどのように創られた?迷信でも言い伝えでもいい」


どうやら二衣奈は世界の構造が知りたいようだ。まあ、俺も知りたいけど。


「この世界はどうやらどこかに核というものがあると聞いたことがある。その核を壊すと世界が崩れる…と」


つまり、その核をぶっ壊せばいいってことだ。

流石に言い伝えのようなものらしいから場所は特定できないが。


「情報ありがとう、それじゃあ」


「っ!まて、殺さないのか?」


俺が去ろうとすると男は俺を止めた。


「俺はただ情報が欲しくて戦っただけだ。そんな殺すなんて物騒なことはしねぇよ」


「そんな奴もいるんだな…」


俺は二衣奈を連れて男の下を後にした。

この晩、俺と二衣奈は隠れ家のような小屋を見つけ、そこで息を潜めることにした。

しかし残酷な世界なもので、死んでいった人のリストがメニューのリストに表示されていて、そこには俺の母、父の名前も映し出されていた。

その方が苦しみから開放されるので死者にとってはいい事なんだろうと思うけれど、俺はその時複雑な気持ちだった…



『この世界に入るための約束』


天使がここに転送してくる前に俺たちに言った事だ。


【一】

途中で投げ出さない


投げ出せば、自分達も死んだ世界に永遠にさまようことになるらしい。


【二】

他の人には自分達を死んでいないと決して言わない


これも、破れば一と同様らしい。


【三】

何があっても最強を名乗る


これに関しては詳しくは説明してもらえなかった。

でも、どっちにしろ破れば一、二と同様なものか将又それ以上の事は起きることに違いはないって事だ。


今俺に出来ることは、この三つの約束を守りながら天使の無茶な要望を果たすだけだ。

二衣奈も思考が似ているからそう考えているだろう。


現実はつまらんと言ったが、ここまで自体が大きくなるまで願ってないんだけどな…天使も無茶苦茶過ぎる…


俺はそう考えながら、眠りについた。




2日目


「ふぇ…ん…」


「いつまで寝てるんですかー、最強を名乗るニイナさーん」


「ふぁぁ…白か…」


やっとお目覚めのようだな。

さて、今日も情報収集かなー


俺は背伸びをしながら深呼吸をした。


「そう言えば、あの2人は死亡者リストには居なかったからまだこの世界にいるのかな」


あー確かに、圭と風水佳は昨晩見た死亡者リストには名前が無かった。ってことはまだこの世界で逃げ延びてるのか、それとも戦って貢献しているのか…んまぁ、考えても仕方ない…か…


「んじゃ、とりあえず情報収集と行きますか」


「それが最善策」


「と言いたいところだが…」


「地図が無いから何処に何があるのかさっぱりわからないと」


「ご名答…」


まあ、それは人に聞くとするか…


「あと、ニイナ…」


「腹減ったと、」


「ご名答!!」


何故こんなに意思疎通してるんだ…嬉しいような、嬉しくないような…


「素直に喜べば?はい、パン」


「あ、ありがとうございます…」


ま、まぁこの調子じゃあ最強コンビと呼ばれるのも時間の問題だな…

そして、パンがうめぇ…




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そんなこんなで、腹を満たした俺らは情報収集に向かうのであった。


「貴様ら!」

「俺らの領域にノコノコと入ってきやがって!」

「タダで帰れると思うなよ!?」


「ハク、私がやる」


頼んますぜー

(正直だるい)


「そんなヒョロヒョロかわい子ちゃんが俺らの相手になるかなー?」


「それは、自分の立場を考えてから言うんだな…吠え犬」


ニイナは知らぬ間に俺の片手剣を持ち出し、相手の3人一気に片付けてしまった。

まあ、妥当だろうな。


「なんだ…コイツ…」

「遠距離型のくせに…」

「片手剣も使えるだと…」


「さあてと、お前さん方に聞くがこの世界の地図ってのは無いかな?俺らそれ無いと困るんですわ」


「そんなもん、、」


俺が3人のチンピラに近づいた瞬間、奥から矢のような物が飛んできた。

高レベルのステータスのおかげで感知出来たし、それも避けることが出来た。


「言わんでよいぞ、お前達」


「ケイ様!」

「こんな奴ら俺らだけで!」


「出来ねぇからこんな無様な姿なんだろう?」


「…それは…」


奥からはどうやらこのチームのボスって奴が現れたようだ。

まあ、どっからどう見ても圭なんだけどな。


「おぉ、お前らかこの3人を無様な姿にしたのは」


気づいてないのか?


「あぁ、ご最もだ。俺はただ地図が欲しかっただけなんですけどねぇ」


「なるほど、どうやらこの世界に来てから変わったようだな」


!!

やっぱり、気づいてるじゃないか。

圭は元からこんな性格だったが、懐かしく思ってもくれないとは。

どっちにしろ通らなければ行けない道だろうがな。


「気づいてるじゃないか、ケイさんよ」


「お前達もあの後死んだのか、ふふっ笑えるな」


「私達は!!」


俺はニイナの前に手を出す。

これ以上言ってはいけないから、これ以上言えば約束を破る事になる。

俺は「任せろ」とニイナに小声で呟き、ニイナはそれに頷く。


「お前さんも死んだじゃないか、同等だろ」


「私はお前達よりも早くここに君臨し、今ではこの世界トップ5にまで登り詰めた」


トップ5…?なるほど、ランク付けもされるのか…そのランクはどうせ殺した数みたいなものだろう。


「1つ教えてやろう」


「ほぉ、それはありがたい」


「この世界はランク付けされ、この殺し合いに貢献した者はランクが上げられる。その代わり落とされる者もいる。そう、私は今最高ランクのSS、努力でこの力を手に入れた」


「つまり、ランク外の俺は敵じゃないと…?」


「そうだ、まだ来て早々の奴に私を倒せるわけがー」


俺は余裕を見せているケイに一瞬の隙を与えずに距離を詰める。

そして、ケイのショートヘアーの一部を切り落とした。


「っ!!」


「生憎、俺ら…最強なんでね。トップ5とか言うお前さんには負けるわけがないんだわ」


「そんな…まさっー」


「まさかって思うだろ?じゃあ試そうか…?今度は髪じゃなくて、ここだけどな」


そういい俺は剣をケイの左目に近づけた。

そしてケイは覚悟を決めて、


「私の負けだ、殺すなら何の方法でも構わない!」


「よし、なら地図くれ」


「えっ?」


ケイは歯を食いしばって待っていたが、思いもよらない返答が返ってきて、逆に空回りしてしまった。


「あるんだろ?地図」


俺らはケイからこの世界の地図をゲットし、ここを去ろうとした。


「まて!覚悟を決めた以上、殺される必要がある!!」


「そんなねぇわ、」


この世界の人物は殺す、殺されるってワードが好きすぎるんだよな。


「俺らは地図が欲しかっただけだ、殺しやしねぇよ。何せ、俺の大事な幼馴染みだったんだから殺せるわけないだろ」


本当は殺したくないからなんだけどな。


「許さん…」


「ん?」


「許さんぞ!!」


エ?ナンデェ?


「私を殺せ!!」


「いやいやいや、殺さねぇって!」


「私を殺してくれないと気がすまん!!」



ダメだコイツ…とりあえず、助けてくれ…

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現実に飽きた方、どうか死後の世界を終わらせてください でぃーず @Deeds_another

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