現実に飽きた方、どうか死後の世界を終わらせてください
でぃーず
【零話】不幸な人間
ー現実はとてもつまらないものだ
よくアニメに出てくるキャラが言いそうな言葉だが、俺は本当にそう思う。
現実には魔法や武器なんて言うファンタジックなものなんてない。
ましてや美少女ヒロインと言えるほどの美少女もいない。
俺がこんなふうに思うようになったのは小6の頃からだ。
小6の頃に異世界系ゲームをやってから…
現実がつまらなくなった…
俺は江風かわかぜ 白はく、しろではないはくだ。
高校2年生の不登校生だ。
俺はいつも学校には行かず、ある所に行っている。
そこは3人の幼馴染みが通う高校。
本当は他校生徒は部活の大会や文化祭、体育祭などといった行事がある時じゃないと入れないが、俺は校長に自ら交渉しに行き、許可を貰った。
流石に10回押し寄せたら承諾してくれた、そのため騒ぎにならないように制服まで貰った。
普通の学校なら有り得ないがここの学校は部活に専念している学校で毎日3時間しか授業がなく、その他は全て部活動だと言う。
俺はこの学校に行こうとして落ちた落ちこぼれだ。
【ゲーム研究部】
俺がいつも居る場所だ。
「やっほー白!今日は早いねぇー」
扉を開けると一番最初に反応したのは幼馴染みの女子、葛城かつらぎ 風水佳ふみか。
一番長い付き合いの幼馴染みだ。
そして奥でゲームに夢中になっているのが
不知火しらぬい 圭けい。
もう1人はまだいないようだった。
「白ーどこまで行った!?」
風水佳が最近流行っているダンジョン系のゲームの進み具合を聞いてきた。
「えっと、7面ぐらいは行った」
「えー!嘘ー!私まだ3面もクリア出来てないのにぃ…」
落ち込んだ風水佳にゲームに夢中になっていた圭が畳み掛けるように言った。
「お前は進むのが遅すぎるんだ。キャラ一体をクソ強くしてもパーティーが雑魚なら意味無いだろ」
「だってこのキャラ可愛いんだもん!強くさせたいじゃん!」
「ダメだコイツ」
この会話がいつものように続いていた。
ガラッ
後ろから扉が開く音が聞こえ、振り向くとそこにはここにいなかったもう1人が立っていた。
名前は天城あまぎ 二衣奈にいな。
見た目は小学生ぐらいでも疑問は無いぐらいだが俺よりも歳上だ。
「白邪魔」
「あ、はい」
二衣奈が椅子にちょこんと座ると早速ゲーム機を取り出した。
「ねぇねぇ二衣奈ちゃんはどこまで行ったの!?」
あー聞いちゃ行けなかった気がする。
だって二衣奈は…
「ボス面クリアした」
超ゲーマーなんだから…
「嘘おぉぉぉ!?発売してまだ2日だよ!?2日で15面まで行ったの!?」
「うん」
バタッ。
風水佳が倒れた
そっとしておこう。
そして他愛もない話が続いて、けどそれが楽しくて俺はこうやってゲームの事で話すなら現実じゃない様に思っていた。
「ふぅー今日はここまでかな」
時計は7時を回っていた。
「もうこんな時間か」
圭が言うと帰りの準備をし始めた。そして俺らも片付けをし始めた。
「白は帰ってていいよ、後はやっておくから」
「いや、でも俺も一応ここの部員なんだし」
「白、いいから帰ってて」
はい分かりました。
どうも二衣奈が言うと恐怖だ。
見た目は可愛いのに…
「分かった。じゃあ帰ってるよ」
「待って、私も用事があってな、先に帰らせてもらう」
「うん、分かった。後は鍵閉めるだけだしやっておく!」
「ありがとう」
といい、圭と俺は学校を後にした。
「ねぇ、6の道中って無視の方が良いのか?それとも倒した方がいいのか?」
帰り道圭はゲームの攻略法を聞いてきた。
俺は6ゴリ押しだからなんとも言えないんだが…
「んー、レベルに自信があるなら無視で行けるんじゃないか?」
「なるほどな、家帰ったら試してみよう」
『続いてのニュースです。東京南東部に放火魔が何件もの建造物を放火するというとんでもない情報がありました。東京都南東部にお住まいの方は充分にお気をつけください。繰り返しますー』
「南東部か、ここは南部だが近くでこんな事があるなんて少し怖いな」
圭が街のニュースを見て呟く。ニュースは大きなビルが大火事になっている現場が映し出されていた。
「こっちに来なければいいが…」
俺は大丈夫だろ、といい圭と別れた。
家に着くと電気が付いていなかった。つまり誰も帰ってきていなかった。
自分の部屋に着くとパソコンに一通のメールが来ていた。
ファイルを開くとそれは父親からだった。
俺はそのメールの内容を見た瞬間、目を疑った。
『白、放火魔には注意し 』
文字はこれだけだった。
俺の父親は大企業の社員で会社が南東部にある。
そこで今日見たニュースと照らし合わせる。
あのビルには確か父親の務めている会社のマークがあった。
つまり…これは父からの忠告ってことか…?
父は頭がおかしいほどに良い。そんな父がこの西部よりの南部に住んでいる俺にわざわざ放火魔に注意し……なんて言葉は送らないはず。
まず俺の父は全て自分で解決しようとする。
ってことは…放火魔がこの近くにいる…?
ブーッブー…
その時携帯がなった。
『白さんですか?』
知らない声だった。
「はい」
『私は貴方のお父さんの部下です』
なるほど、つまりそういうことか。
「父が…死んだんですね」
相手が言いづらそうだったので自分から言った。
『何故それを…!?』
「テレビで見たんです。現場が映し出されていて、父の会社のビルに似ているなと」
『そうですか…私は貴方のお父さんの命令で他社に行っていました』
「それで帰ってきたら燃えていたと」
『はい』
「わざわざ連絡ありがとうございます」
『あ、それで…』
「それでは」
俺は電話を切った。
俺はパソコンの椅子に座り、放火魔について調べ始めた。
そして今日からこの家には誰も帰ってこない。
つい1年前までは俺を含め4人が居たはずなのに…
◇
俺は元々4人家族だった。
母、父、俺、妹が居たんだ。
しかし悲劇は始まったんだ。最初は母だった、車の事故で死亡…
前から突然逆走車に激突し、ぺしゃんこになったらしい。
次に妹。
まだ中1だった…
入学して1ヶ月しか経っていない時期に通学途中トラックと衝突。
ただ妹は意識不明のままだがまだ病院に居る。
そして今日、放火魔による火事で父の死。
俺はこの1年で不幸の神に微笑まれたのだ。
母が死に、妹が意識不明となった時は流石に耐えられず、家に引きこもってしまった。
復活してきたと思ったら次は父の死。
どれだけ痛め付ければ気が済むんだ、と何度思ったことか。
俺はパソコンで調べていると放火魔の特徴と容姿が確認できた。
「よし、これで明日圭達にも知らせれば!」
俺は家族の死を悲しむと言うよりも、もう犠牲者は出したくないと思うようになっていた。
◇
目覚めると時刻は昼の10時。
いつもより少し早い時間だ。だが丁度いい。
早めに行って圭達に知らせることが出来ればいい。
窓を見ると多くのマスコミがわんさかいた。
そりゃあ父が死んでしまえば家にも来るに違いないか…
裏口から抜けよう…
そして、マスコミから逃げ圭達の学校の近くまで来た。
え?火事?
やだ、放火魔?
そんな声が学校に近づく度大きく聞こえてきた。
まさかな…
そう思いつつも俺は小走りで圭達の学校に向かった。
もう遅かった、
俺が学校に着いた時、圭達の学校は燃えていた。
「おい、嘘だろッ」
俺は校舎に向かって走り出す。
「あ、君!危ないから戻ってきなさい!!」
学校の先生が避難した生徒を誘導させながら注意してくる。
そんなもん関係ない、見た限り避難した生徒の中には圭、風水佳、二衣奈はいない。
つまりまだ中って事だ。
ゲーム研究部の部室は3階、流石に3階からは飛び降りれない。
ということは避難通路が一番だ。
校舎の中に入るとかなり燃え広がっているが、俺はそんなことお構い無しに進む。
3階に着くと尚更炎が燃え広がっていた。
熱さに耐えながらゲーム研究部の扉を開ける。
中には圭、風水佳、二衣奈が居た。
「白!!何でここに!!」
風水佳が言う。
何でじゃねぇ、お前らを助けるためだ。
二衣奈は2人を守るようにしていた。
所々火傷しているようだった。
「早く逃げるぞ!避難通路の階段からだ!さっき見た限りまだ火は来ていない!」
「わ、わかった!」
俺は風水佳、圭と送り出し、二衣奈を送り出そうとした時に、送り出した通路階段からドガーンッと大きな爆発音が聞こえた。
嘘だろ?
俺が誘導した通路階段見ると圭は降りる前だったので無事だが、風水佳があと1歩の所で爆発で階段ごと落っこちる所だった。
「白の嘘つき!大丈夫って言ったじゃん!!」
「爆発なんて予想外だ!戻って来れるか?」
「大丈夫」
こうなったら校舎の階段で降りるしかない。
「多少の火傷覚悟で降りるぞ」
俺はそう言い、風水佳、圭、二衣奈を階段で降ろした。
続いて俺も階段を下る。
だが、ここでもまた不幸が起きる。
また爆発だ。
降りていた階段の後ろで爆発があり、前を降りていた風水佳が吹き飛ばされ、階段に幾つか打ち付けられ下の階に転がり落ちた。
「風水佳!大丈夫か!?」
圭が爆発が止んだあとに向かう、続いて二衣奈と俺も向かう。
「うぅ…大丈夫…」
また爆発が起きた。
それは1階まで降りた時だ。
俺らを追ってきているかのように近くで爆発が起きる。
その爆発の影響で俺らは正面玄関まで吹き飛ばされた。
「いっ…てぇ…」
目の前にはグラウンドがある。そこに大人達が突っ立っている。
「くそっ!」
俺はフラフラしながらも立ち上がり、3人を見た。
二衣奈は立っているが、風水佳、圭は色んなところから血が出ていてちゃんと立てない状態だった。
「二衣奈!先に出てろ!俺は2人を連れて行く!」
二衣奈は頷き、正面玄関から逃げ出した。
「立てるか?圭、風水佳」
「うん…」
「なんとか…」
「よし、捕まれ…」
俺は圭と風水佳を支えながら正面玄関へ向かい、外に出た。
「圭、風水佳、大丈夫?」
二衣奈が2人を心配そうに見つめている。
「はぁ…はぁ…なんとか、間に合ったか…」
「君達!大丈夫かい!?早く安全な所へ!」
救急隊員が呼びかけてくれた。
俺達は誘導に従って、生徒が避難している場所へ辿り着いた。
運良く俺は軽傷で済んだので、探索に入る。
放火魔の探索だ。
特徴として書いてあった。
放火魔の特徴
・顔は隠してある
・スーツ姿
・茶色の靴を履いている
・容姿的に男
・いつもポケットに手を入れている
そして…
・燃やした建物は燃え尽きるまで見届ける
これだ。
つまり、ここの近くにスーツ姿の放火魔が居るはずだ。
その特徴にピッタリあった人を見つけた。
災害時だと言うのにポケットに手を入れて、生徒達の近くに居た。
普通ならば先生だと思われるが、先生なら生徒の誘導に専念するはず。
「生徒の心配はしないのか」
俺はその男にいきなり話しかける。
「な、な、なんだ君は」
「手を出せよ…」
無理矢理手を出させるとそこにはライターがあった。
スーツは異様にガソリンの匂いがする。
「これで、学校に放火したってことか、それにしてもガソリンであんな爆発するまでに出来るもんなんだな。技術は凄いな」
「ほぅ、見破るとは。ここの生徒はそこまで頭が良くないと聞いたが」
「生憎、俺はここの生徒じゃないんでね」
「だが、その制服は…」
「そこのスーツ男!お前が放火魔か?ガソリン臭いが」
警察が来た。
「あぁ、そうだ。まさかこんなガキに見破られるとは」
スーツの男は警察に誘導され、パトカーに乗せられて行った。
「白!圭と風水佳が!!」
二衣奈が珍しく叫んだ。
俺はその声がした方へ顔を真っ青にして駆けつけた。
風水佳の横には救急隊員が居た。
「2人とも息、していません…」
救急隊員が結果を述べた。
「圭…風水佳…」
二衣奈は悲しそうに2人を見つめる。どんなに悲しい事があっても涙を見せな二衣奈はこんな時でも涙を見せなかった。
「なんでだよ…なにもかも手遅れだったってのかよ…」
「白…」
二衣奈が今にも泣き叫びそうな俺を慰めてくれた。
ーなんでだよ!神様よぉ!どこまで陥れれば気が済むんだよ!!
またこの言葉が心の中で叫び狂った。
俺と二衣奈は圭と風水佳を乗せた救急車を見送った。
「私は白が嫌い」
「何だいきなり」
「ゲームはそこそこ弱いし、周りの人が死んでも泣き叫ばないし」
「それはお前も同じだろ、ってかそこそこ弱いって酷いな」
「なのに、格好つけて助けになんかくるし、その結果二人助からなかった…」
「正直それを言われると耳が痛い…」
「現実なんてどうでもいいと思ってるなら助けなければ良かったのに」
「お前らだけが心の癒しだったからな…」
「私も現実はつまらないものだとは思う。だからこそ2人を助けようとした」
「似てるのか、俺達は」
「それは昔から、なにしても似てる」
「まあそうだけど」
「だから嫌い」
「泣きたいなら泣いてもいいんだぜ?!」
「やだ」
「ですよね…」
『現実が飽きたお二人さん』
「誰だ?」
「まぶしっ」
目を開けるとそこには天使の羽を付けた変人が居た。
「そんな格好して何してる。そして私達に何の用?」
『死後の世界…異世界を助けて欲しいのです』
「白、何言ってんのこの人」
「俺に聞くなし…」
『あなた達の時間で言うならば今さっき圭さんと風水佳さんが異世界に転移してきました』
「どういう事だそれは」
『自然災害や他殺で死んだ人達はゲームのような世界に飛ばされ、そこで殺し合いをするんです』
「死んでるのにか?」
『生き延びれば現実に戻れる、死ねば本当に死ぬ』
「それはおかしい…」
今の説明で二衣奈が疑問を持ったようだ。
「生き延びるっていつまで?現実に戻るなんて、死んだ人間がまた生き返るってこと?」
『そうなんです、期限なんてない。死んだ人間は二度と帰ってこない。つまり、皆さん現実に戻れるという言葉に踊らされて意味もない殺し合いをしているんです』
「そんな…酷い」
『そこで、白さん、二衣奈さん。あなた方2人にはこの世界を終わらせて欲しいのです』
「なるほどな…」
『死後の世界は時間経由が変わります。現実では1日が死後の世界では1週間になります』
「つまり死後の世界の方が時間が早いんだな」
『現実での5日間の猶予をあげます。その期間中に死後の世界を助けてもらうことは出来ないでしょうか』
「5日間か、それ以上は限界。俺らの身に危険が及ぶって感じだな」
「圭と風水佳が死んでしまったなら本当に死なせてあげたい、死んでるか生きてるか分からない状態で一生さ迷うのは可哀想」
「同意見だ」
『ありがとうございます!あなた方には感謝致します。死後の世界では白さん二衣奈さんどちらともSSランクに値します。それでは転送開始致します』
「え?SS?ちょ待て、おまっ…」
あっという間に視界が真っ白になった。
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