アルパカさんと夢紅茶
れーせんさん
アルパカさんと夢紅茶
カランカラーン・・・
アルパカ「ふわあああーいらっしゃ~い!トキちゃん、今日も来てくれたんだねぇ!いや嬉しいよぉ!」
ショウジョウトキ「ぅん?トキじゃないの。こんにちはなんですけど!」
トキ「二人ともこんにちは。ふふ・・・すっかりここの『じょうれんさん』になっちゃったわ。喉にいいお茶、今日ももらえるかしら?」
アルパカ「もっちろんだよぉ!すぐに用意するから、ショウジョウトキちゃんとお話しながら待っててねぇ♪」
パタパタと早足でカウンターに向かうアルパカの背中を見つめながら、トキはショウジョウトキのいるテーブルの椅子におっさんみたいな掛け声で座った。
トキ「どっこいしょ・・・っと。あら、アナタは今日も『あーるぐれい』を飲んでるのね?」
ショウジョウトキ「あら、よくわかったわね・・・ってまあ、この香りは一度嗅いだら忘れられないって感じよねー。なんか癖になっちゃうっていうか・・・」
トキ「ふふ、私もよく飲むからその気持ちわかるわ。香りは独特だけど、味はとても美味しいのよね。しかも飲んだ後は喉の調子もいつもより良くなってて・・・『あーるぐれい』、私も好きよ」
ショウジョウトキ「えへへっ、なんだか嬉しいんですけど!それになんていうかこう・・・飲むとフワーっと体中から疲れが抜けていくような感じもするわよね!アタシ的にはそのあたりも好きな所で、つまり『あーるぐれい』っていうのは・・・(ペラペラペラペラ)」
トキ「ふむふむなのだわ・・・なるほどなのだわ・・・」
ショウジョウトキのマシンガントークに対して、トキが適当な所で相槌を打つ・・・いつもの光景である。そしてそんなやりとりをしていると笑顔のアルパカがトキの所に紅茶を持ってやってくる。これまた、いつも通りである。
アルパカ「トキちゃんお待たせぇ♪はいっ『あーるぐれい』だよぉ!濃いめに入れてみたから飲んだらいつもよりいい声が出るんじゃないかなぁ?なんつってえへへ♪」
トキ「ありがとう、きっとそうに違いないわ。飲んだら一曲披露するわね、期待してて」
ショウジョウトキ「アタシも一緒に歌うんですけど!えーっと、確か・・・『でゅえっと』っていうんだっけ?それをやるんですけど!」
今日もジャパリカフェは素敵な歌と笑顔に包まれていた。かばんちゃんのおかげで他のちほーのお客さんもたくさん来てくれるようになり、アルパカは毎日が楽しく笑顔が絶えなかった。
そんなある日の夜、彼女は夢を見た。それは、彼女がまだフレンズ化する前の記憶。ジャパリパークにまだ『ヒト』がたくさん訪れていた頃の・・・後悔の記憶。
アルパカ(あれぇー・・・なんだか、目の前がぼやけた感じになっちゃってるねぇ?からだもふわふわしちゃってぇ・・・)
小さな影「ねえねえおとうさん!このどうぶつはなんていうのー?」
大きな影「アルパカっていうんだよ。毛がモコモコしててとても可愛いだろう?」
小さな影「うん!アルパカちゃん、こんにちは!すっごく可愛いね!」
アルパカ(はいこんにちはぁ♪可愛いだなんてそんな照れるよぉ///えへへ・・・誰かは判らないけど、ありがとねぇ♪)
小さな影「ねーねーおとうさん。アルパカちゃん、さわってもいーい?モフモフしたーい♪」
大きな影「うーん・・・まあおとなしそうな動物だし大丈夫かな?あんまり乱暴に撫でたりしたらダメだぞ?」
小さな影「はーい♪」
アルパカ(んゅ?あたしの事、ナデナデしたいのぉ?もーしょうがないなぁ、ちょっとだけだからねぇ♪)
正直ちょっと恥ずかしかったけれど、自分の事を可愛いと言ってくれたこのちっちゃな影が伸ばしてくる手にアルパカが身をゆだねようとした・・・次の瞬間だった。
ペッ!!
アルパカ(えっ・・・?)
ペチャッ・・・
小さな影「ぴゃっ・・・ふ、ふっ、ふえぇーん!なんかへんなにおいがするよぉー!くさいよぉー!」
大きな影「○○、大丈夫か!?そうだ、テレビで見た事がある・・・アルパカは機嫌が悪くなるとつばを飛ばしてくる事もあるって・・・!」
アルパカ(え、ええっ!?あたし、ナデナデされるのを嫌がってなんかいないよぉ!はわわっ、えっと、ごめ・・・)
見覚えのある影「大丈夫ですかお客様!食事の時間が近づいているので空腹で気が立っている子も多くて・・・本当に申し訳ありません!」
大きな影「いえ、こちらこそ不注意でした・・・すみません。ええと、地図地図・・・お手洗いは・・・ここだな。さ、○○。すぐに顔を洗いに行こう、お父さんが抱っこして連れて行ってあげるからね」
小さな影「ぐす・・・ぐすぅ・・・アルパカちゃん・・・アルパカちゃぁん・・・」
アルパカ(ま、待って!行かないでぇ・・・あたし、まだちゃんと謝ってないのぉ!だから、待って・・・!)
アルパカがどんなに声が張り上げても、小さな影はさらにその姿を小さくしていき・・・やがて完全に視界から消えていった。
アルパカ(ああ・・・そんな・・・ごめん・・・ごめんねぇ・・・)
翌日、アルパカはいつものように元気に紅茶を振る舞っていた。今日もまた、アルパカの淹れる紅茶に皆が舌鼓を打っていた。カウンター席の隅っこに座る彼女を除いては。
トキ「あら・・・?」
数時間後、アルパカは最後のフレンズが出ていくのを手を振って見送ると、ドアの所に掛けてある板を裏返した。
アルパカ「閉店だよぉまた来てね・・・っと。ふい~今日も疲れた疲れた~♪」
肩をトントンと叩きながら、アルパカが店内に戻ろうとすると背後からフワァッという羽の音が聞こえた。
トキ「こんばんは。今日はもう閉店しちゃったかしら?」
アルパカ「おぉう、トキちゃん。今日は二回目の来店だねぇ♪」
トキ「うふふ、ちょっとね。でも閉店なら仕方ないわね、明日また出直して・・・」
アルパカ「待って待って、せっかく来てくれたんだから一杯くらい淹れるよぉ。さ、入って入って♪」
アルパカ「はい、お待たせぇ。えへへ、あたしも自分の淹れてきちゃったぁ♪」
トキ「うふふ、お隣どうぞ。今日もお疲れさま」
二人が座っているのは見晴らしのいいテラス席・・・と言っても既に日は落ちているので目の前はほとんど真っ暗なのだが、トキは迷わずこの席を選んだ。
アルパカ「うーん、昼間はとってもいい眺めなんだけど夜はやっぱりちょーっと寂しい感じになっちゃうねぇ・・・」
トキ「そうね。でも、これはこれで趣があるというか・・・夜の闇に立つ湯気がなんともロマンチックな雰囲気を醸し出している・・・そんな気がするわ。ひょっとしたら紅茶というのはこうして外で飲む事を前提に作られてうんぬんかんぬん・・・」
アルパカ「あ、あー・・・そうなのかなぁ?あたしにはそういうのちょっとわかんないなぁ・・・あはは」
トキ「・・・っと、隙あり。えいっ」
トキちゃんはやっぱりちょっと変わってるなぁとアルパカが思った次の瞬間、トキは唐突にアルパカの手を取り優しくぎゅっと握った。
アルパカ「ひゃ、ひゃわっ!?トキちゃん、いきなりどうしたのぉ・・・」
トキ「・・・何か悩んでる事があるなら、なんでも聞くわよ?」
アルパカ「悩ん・・・あははっ、なーにを言い出すのかと思ったらぁ。今のあたしに悩みなんてなんにもないよぉ。かばんちゃんのおかげでいーっぱいお客さん来てくれるようになったしそれに・・・」
トキ「それに・・・?」
アルパカ「・・・えへへ、トキちゃんみたいな・・・その・・・『トモダチ』も・・・できたしぃ・・・なんてぇ・・・///」
フレンズになってから一人でいる時間が長かったアルパカは、いつもカフェに顔を出してくれて色々なお話をするようになったトキとお友達になれたらいいなとずっと思っていた。それはトキも同じで、いつも素敵な笑顔で自分を迎えてくれるアルパカともっと親しくなりたいという気持ちをずっと持っていた。
トキ「・・・とっても、嬉しいわ。出会ってから結構経つけれど私、アルパカとちゃんと仲良くなれてるのかしらって思っていたから。トモダチ・・・素敵な響きよね・・・むふっ♪」
アルパカ「いやぁでもいざ口に出して言ってみるとなーかなか恥ずかしいもんだねえ、えへへ///」
トキ「うふふ・・・それで、ね?トモダチだから気づいちゃったの。あっ、今日の紅茶はいつもと違うなー・・・ひょっとして何か考え事してたのかなー・・・うん、これはきっと何かあるに違いないわー・・・って」
アルパカ「へ・・・?ど、どうゆうこと?」
トキはアルパカの手を離すと、テーブルに置かれている自分のカップを指さした。
トキ「アルパカは、皆の味の好みに合わせてお湯の量をちゃんと調整して紅茶を淹れてくれるわよね?私は濃いめが好きだからこのカップならこの高さまで・・・うん、今はバッチリね」
アルパカ「お、お湯の量ぅ?確かにそこは気を使ってはいるけどあたしだってたまには間違えちゃう事もあるっていうか・・・」
トキ「お昼の紅茶、いつもの倍以上入ってたわよ。なみなみ~♪」
アルパカ「う、うえぇ~~~???」
そんなバカな~といった表情をするアルパカを口元に手を添えながらクスクスと上品に笑ったトキは、再び彼女の手を優しく握ると今度はその瞳もじっと見つめていた。
トキ「じ~~~~~~っ。これは何でも相談してほしい、の視線よ。じ~~~~~~っ」
アルパカ「あっ・・・うぅ、もう・・・トキちゃんはするどいんだからぁ・・・わかったよぉ、言うから・・・そんなに見つめられると恥ずかしいよぉ・・・」
アルパカは昨日見た夢の事をトキに全て話した。自分に好意を持って触れ合おうとしてくれた誰かを傷つけてしまい、とても悲しい気持ちになってしまった事を。そしてその夢は、かつて動物だった頃の記憶である可能性が高い事も。
トキはその話を時折頷きながら静かに聞いていたがアルパカが全てを話し終えると、半泣きになっている彼女の顔を両腕でおもむろに自分の胸に抱き寄せてナデナデし始めたのだった。
アルパカ「む、むぎゅぅ・・・トキちゃん、今日はなんだかすきんしっぷ?が多くてあたしはドキドキだよぉ・・・///」
トキ「ごめんなさい。でもこうすると悲しい気持ちがすっごく和らいでいくんだって、サーバルが言ってたのを思い出しちゃって。少しでも癒してあげられればいいのだけれど・・・どうかしら?」
あぁそういえば黒セルリアン騒動の後でよくかばんちゃんが木陰とかでサーバルにやってあげてたねぇ・・・と、アルパカはぼんやり思い出していた。
アルパカ「(そ、それにしてもぉ・・・はぅぅ、これすんごい気持ちいいよぉ・・・体の芯までほんわかしてきちゃってぇ・・・まるでまほうみたいだぁ・・・サーバルもこんな気持ち、だったのかなぁ・・・よ、よぉし・・・)」
トキの柔らかい手による心のこもったナデナデのあまりの気持ちよさにアルパカは、全力で甘えてみたいという衝動に駆られた。
甘えて、甘えて、甘えて・・・悲しみとか後悔とかそういう暗い気持ちを全て吹き飛ばしてもらって。明日からまた、自分に出来る最高の笑顔で大切な友達と接したい・・・と強く強く思ったのである。
アルパカ「(今だけは・・・トキちゃんに思いっきり甘えちゃおうかなぁ。んでまた明日から、笑顔いっぱいで皆に紅茶を出して・・・トキちゃんとも楽しいお話いっぱいして・・・うん、そうしよう!いつまでも落ち込んだままじゃ・・・いられないもんねぇ!)」
アルパカ「ねぇねぇ、トキちゃぁん・・・」
トキ「なぁに・・・ファッ!?」
アルパカ「トキちゃんはとってもあったかいからぁ・・・もうしばらくこうしててくれたらすっごく元気が出てくるかもなんだけどぉ・・・ダメぇ?」
アルパカは瞳を潤ませながら上目遣いでトキをじっと見つめておねだりをした。後にトキは、この時の彼女の表情は一生忘れる事が出来ないほど母性にズキューンとキちゃうものだったと語っている。具体的には『ぐほっ』とか言っちゃうくらいのレベルのものらしい。
トキ「ぐほっ・・・う、うふふっ、アアアアルパカは甘えん坊さんねっ♪いいわ、いっぱい元気が出るまでずっとこうしててあげる・・・ナデナデ~」
アルパカ「うん。ありがとぉ~・・・トキちゃん、だぁいすきだよぉ♪」
トキ「・・・ぅぐはぁっ///」
数分後、トキの優しさを体いっぱいに受けたアルパカの顔からはすっかり涙は消え、いつもの笑顔溢れる彼女に戻っていた。
アルパカ「ありがとね、トキちゃん。今日はなんだか恥ずかしい所とかみっともない所をいっぱい見せちゃってごめんねぇ・・・」
トキ「そんなの気にしなくていいのよ。博士・・・と、アライグマが前に言ってたわ。困った時や悲しい時に励ましたり助けてあげられるのが本当のトモダチなんだって。私もそう・・・思うから///」
少し頬を紅潮させながらそう言ったトキは、フワリと飛び上がり手すりの上に着地すると大きく深呼吸をした。ジャパリカフェのテラス席の手すり、ここは彼女の・・・彼女専用のお立ち台なのだ。
トキ「出来立てほやほやの、とっても元気の出る曲・・・アナタのために歌わせてもらうわね。今夜にでも素敵な夢が見られますように、っておまじないをかけてね」
タイトルは『笑顔が素敵なアナタ』
歌詞の8割が笑顔、素敵、アナタの3つで構成されているというトンデモな内容だったが自分の為だけに一生懸命に歌ってくれるトキの姿にアルパカは止んだはずの涙が溢れだしてしまった。歌い終わった後にアルパカが再びトキにナデナデしてもらう姿は、想像に難くないだろう。
そしてその夜・・・アルパカは再び夢を見た。今度はトキのかけてくれたおまじないが効いた、奇跡的で・・・とても幸せなユメを。
~夢の中のジャパリカフェ~
女の子「ふわあぁぁ・・・アルパカちゃんの淹れてくれた紅茶、とっても美味しいね!」
アルパカ「ほんとぉ?嬉しいなー♪紅茶ってあったかくってほわっとしててね、あたしはだーいすきなんだぁ!」
女の子「そうなんだ!アルパカちゃんが好きなら私も好き~♪」
アルパカ「うぃ~?ならあたしはそれよりももっとすき~」
女の子「むぅ~じゃあ私はもっと!」
アルパカ「あたしだって負けないよぉ!・・・なーんて、えへへっ♪」
女の子「えへへー♪」
この女の子の名前はユメ。何を隠そう、かつてアルパカが唾を吐きかけてしまった小さな影、その人である。あれから数年が経ち、今年の春に中学生になった。現在はジャパリパークから遠く離れた『ヒト』がたくさん住んでいるという場所で家族と仲良く暮らしていて、今でも動物が・・・そしてフレンズの事が大好きな心優しい女の子である。
アルパカ「ユメちゃん・・・あの時は・・・本当にごめんねぇ。あたし、なんて謝ったらいいのか・・・あうぅ」
ユメ「ううん、謝るのは私の方だよ。アルパカちゃんの事、何も知らずにいきなり触ろうとして・・・怖がらせちゃって・・・私、悪い子だったね・・・」
アルパカ「ユ、ユメちゃんは何も悪くないよぉ!悪いのはあたしだけ・・・だから・・・。うー・・・これはもう、何かおわび?でもしないと気が収まらないよぉ・・・」
ユメ「もうっアルパカちゃんは何も悪くないって言ってるのにぃ・・・うーん、でも収まらないのは体に良くないよねぇ・・・ええと、それじゃあ一つだけお願いがあるんだけど・・・いいかな?」
アルパカ「!ほいきた!合点承知だよぉ!」
すっかり仲直り・・・いや、そもそもケンカなどしていなかった二人は紅茶の話で盛り上がっていた。ユメは紅茶に関しても非常に詳しく、棚に置かれていた茶葉について次から次へとアルパカに見事な説明を披露した。一つ説明するたびにアルパカが尊敬のまなざしと言葉を浴びせるものだからユメは終始照れっぱなしだった。
しかし、そんな楽しい時間にも終わりが近づいてきていた。
突如としてジャパリカフェの壁が次々と消え始め、やがて二人は真っ白な空間にふわふわと浮かんでいるような状態になっていた。
アルパカ「うえぇええ!?い、いきなり何がどうなっちゃったのぉ!?」
ユメ「あっ・・・残念。そろそろ時間切れ・・・って事なのかな・・・」
アルパカ「時間切れ・・・って、どうゆうこと?ユメちゃん?」
ユメ「うん・・・すごく不思議なんだけどね、最初からなんとなくわかってたんだ。ここは夢の中で・・・本当の私とアルパカちゃんは今とっても遠く離れた場所にいて・・・こうしてお話が出来てるのは本当に奇跡に近い事なんだって」
そう言うとユメは両手を胸の所で合わせて優しく微笑んだ。
ユメ「時々こんな風にね、神様にお願いしてたんだぁ。どうかアルパカちゃんと仲直りをさせてください・・・って。随分時間がかかっちゃったみたいだけど、聞き届けてくれたんだねぇ・・・ふふっ、短い間だったけどアルパカちゃんに会えて・・・本当に嬉しかったよ♪」
アルパカ「も、もちろんあたしもだよぉ!ユメちゃんに会えて・・・本当に嬉しかった・・・よぉ」
ユメ「うん・・・あっ、いっけない!大事な事、言い忘れる所だった・・・!」
ユメは自分の脚が少しずつ消えかけている事に気付くと同時に、どうしてもアルパカに伝えなくてはならない事があるのを思い出した。
ユメ「・・・ね、アルパカちゃん。聞いてくれるかな?私の夢・・・将来の、夢」
アルパカ「んゅ?ショウライノユメ?・・・ってなにかなぁ?」
ユメ「あ、将来の夢っていうのはね・・・えーっと、いつかはこういう事をやりたいなーっていう希望・・・みたいなものかなぁ?」
アルパカ「そうなんだぁ!んでんで、ユメちゃんは何がやりたいのぉ?」
ユメ「・・・えへへ、もっちろん!お友達と・・・アルパカちゃんと一緒にカフェをやる事だよ♪」
アルパカ「・・・!!そ、それぇ!きっとうまくいくよぉ!あたしもユメちゃんと一緒にカフェをやれたらどんなに楽しいだろうなーって思ってたからぁ!」
ユメ「本当?やったぁ!私の将来の夢・・・早速半分叶っちゃった♪」
満面の笑みを浮かべながらそう言ったユメとアルパカは固く強く、手を握り合った。
夢の中なので実際には握った感触はないのだが、それでも二人にはお互いが今確かに繋がっているという感覚があった。
ユメ「もう半分の・・・大切なお友達に会いにジャパリパークに必ずまた行くっていう夢、アルパカちゃんに預けておくね!絶対絶対・・・受け取りにいくから♪」
アルパカ「うん、待ってるよぉ!ユメちゃんが来てくれるのを・・・ずーっとずーっとジャパリカフェで待ってる・・・からぁ・・・ぐすっ・・・約束、だよぉ・・・」
ユメ「うん・・・約束っ!それじゃあアルパカちゃん・・・またねっ!!」
大きく手を振りながら、ユメは最後まで涙を見せることなく笑顔のまま光に包まれて消えていった。アルパカも、涙と鼻水がいっぱい出てはいたが精一杯の笑顔でユメを見送った。
アルパカ「(えへへ・・・今度はお互い笑顔でバイバイできて・・・よかったよぉ・・・本当に・・・よか・・・った・・・ふあぁ・・・眠くなってきたよぉ・・・夢の中なのにねぇ・・・まぁ、いっかぁ・・・おやすみなさ~い・・・)」
チュンチュン・・・チチチッ・・・
アルパカ「・・・んんっ・・・んゅ・・・朝・・・だねぇ・・・」
見慣れたカフェの天井がアルパカの目に映る。窓から差し込んでくる光がいつものように彼女を優しく包み込み、今日もまた穏やかな気候になる事を確信させてくれた。
アルパカ「・・・おおっと、いけないいけない。大切な約束があるんだってばぁ~」
寝ぼけ眼を擦りながらそう呟くと、アルパカはひどすぎる寝癖も直さないまま早足で1階に降りてすぐに茶葉の置かれている棚から二つの瓶を手に取り微笑んだ。
アルパカ「お茶の場所・・・夢の中と一緒だったよぉ、ユメちゃん♪」
~エピローグ~
ショウジョウトキ「ア~タシ~はショウジョウトキ~♪トキ大将~♪」
カワウソ「わーい!歌詞の意味はよくわかんないけどとにかく楽しいぞー♪」
ジャガー「なんかこう・・・自分がものすごく偉くなった気分?になる歌だねえ」
トキ「・・・そして何故か聴く相手に苦い表情をすることを強制する不思議なぱわーを感じるわ。ショウジョウトキ・・・恐ろしい子!」
図書館で読んだ『洗脳ソング大全』の中に収録されている曲を歌うのが最近のマイブームだというショウジョウトキ。ヘンテコな歌詞にショウジョウトキの美声というミスマッチが受けたのか、それを目当てにジャパリカフェにやってくるフレンズもいるほどである。ただ、それ以上に今このカフェには数多くのフレンズ達を魅了して止まないものが存在する。それは・・・
アルパカ「はい、おっまたせぇ!『ユメ・ブレンド』4つになりまぁ~すってね♪」
ジャガー「お、待ってました!今日もこれが飲みたくて来たんだよねえ」
カワウソ「ううーん、いいにおーい♪わたし、ユメ・ブレンドだーいすき!」
ショウジョウトキ「紅茶はにおいじゃなくて香りって呼ぶべきなんですけど!ふふんっ、カワウソにはまだまだ『じょしりょく』が足りてないわね♪」
トキ「まあどっちでもいいじゃない。意味はほとんど一緒なんだし・・・多分ね」
2種類の茶葉をブレンドして作ったアルパカの新作紅茶・・・ユメ・ブレンドは瞬く間にジャパリカフェの人気メニューになった。すっきりとしていて飲みやすく、なおかつホッとする優しい香りが多くのフレンズたちの心をがっちりと鷲掴みにしていたのだ。
アルパカ「喜んでくれてうーれしーよぉ♪おかわりはこのティーポットの中にあるからいっぱい飲んでってねぇ」
カワウソ「はーい!ゴクゴクゴク・・・ぶひゃー!美味しい!もう一杯!」
ジャガー「ちょい待ちカワウソ!今日こそはアタシの分もちゃんと残しておいてよ?いっつも一人でほとんど飲んじゃうんだからさー」
ショウジョウトキ「そうなんですけど!ゴクゴク。カワウソばっかりいつも飲んでてずるいんですけど!ゴクゴク」
ジャガー「って、アンタも飲みすぎ!そのゴクゴクをやめろ~~~!!」
アルパカ「あはは、今日も今日とてジャパリカフェはおおさわぎ・・・だねぇ♪」
トキ「ええ、とても騒がしい・・・けれど今はそれが心地良くもあるわ。こんなに素敵なカフェを見つけられて私、今とっても幸せよ。今度かばんちゃんに会ったら改めてお礼を言わなくっちゃね♪」
アルパカ「ふっふっふートキちゃん!ジャパリカフェはねぇ、このままじゃあ終わらないよぉ。もっと、もーっと素敵なカフェになる事が既に決まってるんだからぁ!」
トキ「あら・・・それはそれは、期待せざるを得ないわね♪」
アルパカ「おうおうっ、期待しちゃってぇ!なんつってえへへ♪」
アルパカは楽しげにそう言うと軽快な足取りでテラスの手すりまで歩いていき、ゆっくりと空を見上げた。そしてここではない空・・・ずっとずっと遠くの空に向けてとびっきりの笑顔を風に乗せて飛ばしたのだった。
大切なあの子へ、どうか届きますようにという願いを込めて。
アルパカ「(・・・ずっとずっと、待ってるからねぇ!ユメちゃん♪)」
アルパカさんと夢紅茶 れーせんさん @reisensaan
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