第2話 幼少期

 「レセフィーヌ!!」

 その日…初めて、頬を平手打ちされた。

 「それは、してはいけないことよ。」

 しかも、お母様に。

 ピアノも必死になって練習して、金賞を獲った。お勉強も、毎日の家庭教師のおかげで6歳にして中等部レベルの学力を身につけた。その他にも色んな事を頑張った。

 努力する私をいつもお母様は温かな笑顔で見てくれた。褒めてくれた。抱きしめてくれた。

 そのお母様に、平手打ちされた。

 「ごめんなさい。」

 「はずしちゃだめよ、私と一緒に暮らせなくなるわ。」

 お母様と一緒に暮らせなくなる!?

 そんなの絶対嫌。

 「一人でいるときしか、はずしちゃダメよ」

 そして、白く細く長い指でトントンっと叩いた。

 私の仮面を。

 「はい。分かりました。」

 目元は仮面が覆っているため、どんな目をしているかよく見えない。

 でも、薔薇のように真っ赤な唇が微笑んだように見えた。

 「レセフィーヌ。」

 「はい!」

 お母様が私を抱き上げる。

 そして、膝の上にのせてくれた。 

 「はずしていいのは、一人でいるときだけ。」

 「はい、」

 「でもね、もう一つ。はずして良いときがあるのよ。」

 お母様の顔は見えないが、私を抑える手が強まった。

 「愛する人と2人っきりのとき。」

 そう言って、お母様はフフフッと笑う。

 「大人だけの秘密よ」

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