熱血くん

諸根いつみ

 熱血くんは、僕の親友だ。小さい頃からずっと一緒で、母親がいなくて寂しい思いをしてきた僕を、いつも元気づけてくれた。今も同じ高校に通っている。彼は、いつも僕の相談に乗ってくれる。

「サッカー部に入ったはいいけど、先輩にいじめられるんだ……」

「なに弱音吐いてんだよ!入りたくて入った部活だろ!お前なら頑張れるよ!」

 こうやって、ヘタレな僕を励ましてくれる。

「数学の成績がやばいんだ。どうしよう……」

「嘆いてる時間があったら勉強しようぜ!今から一緒に問題集やろう!まだ日にちはあるし、次のテストは絶対大丈夫だって!」

 彼の言うことは、いつも正しい。今じゃ、僕はサッカー部のレギュラーだし、成績も上がった。

 でも、新たな問題が持ち上がってしまった。

「熱血くん……僕、告白されたんだ」

「すげーじゃん!おめでとう!」

 フードコートのテーブルで向かい合った熱血くんは、フレンチフライをくわえ、拍手してくれた。

「でも僕、その子と付き合う気はないんだ。どうやったら、傷つけないで断ることができるかなあ?」

「振っちゃうの?」

 熱血くんは、眉をひそめる。

「ちゃんとその子と向き合った結果の結論なのか?もしかしたら、すげーいい子かもしれないじゃん」

「でも」

「ブスなの?」

「ううん。むしろ、可愛い」

「性格がまずいとか?不良とか?」

「よくわかんないけど、清楚で大人しそうな子だよ」

「まだその子のことをよく知らないんだな」

「うん。会ったばかりなんだ」

「でも、好きって言われたんだな?」

「うん。一目惚れだって。どうしても気持ちを抑えられないって」

「ひゅー。そこまで思われてるんだったら、その気持ちはちゃんと受け止めてあげないとかわいそうだぞ」

「でも」

「お前、今まで誰とも付き合ったことがないから、ビビってるんだな。怖気づいて断る前に、その子自身をよく見て考えろ。惚れてくれたってことは、なにかお互い、合う要素があるってことじゃないか?」

「そうかもしれないけど……」

「ためらうことはないよ。恋愛なんて、気持ちと気持ちのぶつかり合いだ。それでいいんだよ。不器用でいいんだよ。そこまで惚れてくれる女なんて、なかなか現れないぞ」

「でも……」

「こういうことはな、勢いなんだよ、勢い。余計なことは考えるな。ホップステップジャンプダイヴ!お前ならできる!飛び込め!新しい世界へ!」

「わかった。別の選択肢も考えてみることにするよ」

 熱血くんの言った通り、その子のことをよく知る努力をしてみたら、僕はその子が好きになってしまった。僕は勇気を持ってダイヴした。僕たちは結ばれた。

 やっぱり、熱血くんはいつも正しい。彼に相談して本当によかった。

 今度、彼女を熱血くんに紹介しようと思う。彼女が、離婚した母さんに引き取られた僕の妹だってことを言い忘れてたから、その時に言おう。

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熱血くん 諸根いつみ @morone77

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