第6話 オレンジ
グランツは、ベルベットによって、蹴り飛ばされた、人間の子供を、探す為にベルベットから、離れた森に向かって歩を進めた。
「どうして僕が、ベルベット君の後始末しないといけないのかなぁ・・・。ベルベット君と、関わると・・・」と、愚痴をこぼしつつ探すが、人間の子供はどこにも見当たらない。
「・・・いないなぁ・・・。」木の上や、枝の先、などを探すが、人間の子供が見当たらない、面倒くさがるグランツが目視でしか探していないのもあるのだろうが。
お腹がいっぱいの、グランツは無駄な動きをしたくなくブツブツと、愚痴をこぼしては、目視で人間の子供を、探し続けていると、ベルベット達がいた場所から、少しばかり奥の雑木林まで、来ていた。
すると、深く草が生い茂る場所でモゾモゾと、動いている“何か”を、発見した。
「・・・ん?・・・あそこだけ開けてるなぁ・・・。」
グランツは、人間の子供が居るのだろうと、思いそのモゾモゾ動いている、何かに近づいた。
コツコツコツコツ
ガザガサガザガサ
「・・・いた。ベルベット君こんな所まで、蹴り飛ばすとは・・・やはり恐ろしい・・・。」そんなことをボヤきつつ、歩を進める。だがその人間の子供の、傍らに何か別の者がいるのに気づく。
「・・・ん?・・・ふぅ・・・やはり面倒臭い事になるかもねぇ・・・」そうグランツは嘆いた。
すると人間の子供の、傍らに居たなにかが、こちらに気づいたのかグランツに、視線を向けた。
グランツはその何かが、こちらに気づいたことを感じ取り、急いで足を進める。グランツはその、視線を向ける“人物”に、会ったことがある事に気づいた。
(・・・なんで、こんな所にこの人いるんだ?・・・関わりたくないのになぁ・・・)そんな事を腹の中で思いながらも、その人物に気持ち悪いくらい明るく挨拶した。
「・・・あの・・・確か、イエローさんの、部下方でしたよね?・・・お久しぶりです♪シャンプー家の、グランツです♪」
するとその何かが、人間の子供に何かしらをしていたらしく、屈んでいた腰を上げ、グランツに向かって、挨拶をしてきた。
「あ、どもです。わぁグランツ様でしたか。これは、これは、失礼しました。ペコリ。申し遅れました。わたくしはイエロー様の部下の、オレンジと申しますです。ペコリ」そう親切丁寧に、時折腰を曲げ挨拶をしてきたのは、やはり(イエロー・マーマレード・ジャム裁判長)の部下だった。
「あ、やはりそうでしたか。お名前はオレンジさんですね。あの・・・ところでこの場所に来て、何されてるんでしょうか?」グランツは、オレンジに質問する。
すると、オレンジは自分の着ている、足首まである長いエプロンで、自分の両手を拭い、グランツの問いかけに答える。
「あはは・・・あの・・・イエロー様が、私めにこの森に人間の子供を、発見した者から連絡があったとの報告を受けまして、ですね。はい。それでですね、その・・・厳密に・・・“捕獲”してこいとの命令を、私めにされましてですね・・・はい。」と、凄く丁寧に答えを返してきた。その光景に、少し可笑しくなり、グランツは笑いをこらえながら、また質問をした。
「クス・・・・すいません、笑うつもりはなかったんですが。“捕獲”ですか?・・・なぜ、人間の子供を?」グランツは、捕獲と言う言葉が、気になりまた質問をする。
すると、オレンジは決まりが悪そうな顔になり
「いやはや、そこまでは、いくらグランツ様でも、お教えする事は出来ないのですぅ・・・あはは・・・すいません。」と、作り笑いをしつつ、人間の子供に、視線を戻した。そして、また人間の子供の、側に座り何かを始めだした。
「あはは・・・そうですよね、すいません。変なことをお聞きして。」とグランツは優しく、謝る。けれどグランツは、この人間の子供が、死んでいたら、面倒臭い事になるかもしれないと感じ、オレンジに問いかける。
「あの・・・オレンジさん、さっきから人間の子供に、何をしてるんです?・・・死んでます?その・・・人間の子供?」言葉を選びながら、グランツは問いかけたがオレンジは人間の子供の、身体を触ってるのに、夢中のようだ。
「あ・・・あの・・・オレンジさん?」グランツは、オレンジが、聞いていないことに気づき、目線を合わせるように、その場にしゃがんだ。
すると、オレンジはグランツの問いが、聞こえていたらしく、人間の子供の身体を触る手を止め、「すいません・・・えっと、ですね・・・」などと発しつつ顔から少しズレた、眼鏡を上げながら、グランツの問いに答えた。
「何故かこの人間の子供、身体がめちゃくちゃなんですよぉー。イエロー様に、届けないといけないのですが・・・。こまりましたねぇー。あ、死んではないです。」そう言うと、また人間の子供の身体をくまなく触り始めた。
「あ、ここも、いっちゃってますねぇー、どうしましよぉ・・・。うーん・・・グランツさんこの人間の子供、何故こんなに、身体がぐちゃぐちゃ何でしょうかねぇ?」オレンジは、不思議だと言わんばかりな顔をして、グランツに尋ねる。グランツは、事の次第を打ち明けようか迷ったが、面倒臭い事に巻き込まれたくなく、嫌々オレンジに、話を合わせて協力することにした。
「んー?なんでで、しょうね?僕にも分からないです。・・・でも、死んでないなら大丈夫なんじゃないんですか?」グランツは、上手く話を合わせる。
「・・・そうなんですけど・・・イエロー様が、綺麗なままで捕獲しろって申されてまして・・・」と、オロオロしながら、人間の子供の身体を触り、色んな方向に折れ曲がった、手脚を元の形に戻している。その度に関節と、骨と肉の音が鳴り響く。
「・・・出来ればやりたくなかったんですが・・・仕方ないです・・・“私たちの血”を使うしかしかなさそうですねー。それか・・・」と、オレンジは独り言を言いながら、自分の体の横に掛けている鞄をゴソゴソと漁っている。
私たちの血と言うのは、純血の人喰いの血の事だ。人喰いの血は、人間の血と違い人間では治らない傷や病気など、物凄く高い治癒力があり、人間界では手に入らないし、その事を知る人間は1人もいないのだ。だか、人喰いの世界でも、純血の血など簡単に手に入らない代物なのだが。
グランツは、興味をそそられその光景を楽しそうに、見学し始めた。だが、“私たちの血”が気になり、オレンジに質問する。
「オレンジさん、その・・・純血の人喰いの血なんて、どこから手に入れたんです?そんなもの簡単に手に入れれる代物では、ないと思うんですが・・・。」すると、その言葉を聞いて、オレンジはバッと、勢いよく振り返り
「!!なぜ、純血の人喰いの血だと、お分かりになったんですか?私めはグランツ様に、申してないですよね?!!」オレンジは、めちゃくちゃ慌てて、声を荒らげる。
その光景に少し、驚きつつグランツは答える。
「あ・・・いぇー“私たちの血を”って、言ってたので、そうなのかなぁーと思って、聞いてみたんですが・・・当たりなんですね。クスッ」オレンジの、分かりやすい態度に、グランツは笑ってしまった。
すると、オレンジは自分が、ミスを犯したことに気付き、アワアワと口を動かし、動揺と恥ずかしさを隠せないでいるようだ。
「わ、わ、私めはそんな事言っておりません!!///グランツ様は、ご冗談がお上手で///。」などと、誤魔化しながら、オレンジは自分の鞄から小瓶を、出して作業をし始めた。
黒の世界だけが、世界だとおもっていたんだ。 くみぐみ @kumicoori
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