第5話 そして

ベルベットは、先程子供に伸ばした自分の爪の先に、人間の子供の“目”をぶら下げている。


「あぁーあ!!・・・目が、目が、痛いよぉ・・・パパァ・・・。」そう泣き叫びながら、人間の子供は痛さに悶えている。


すると、それを“聞いて”いた人間の男は、口らしきところから、血を吐きながら

「あぁ・・・お願いだゴブッ・・・子供には、手を出さないでくれ・・・ゴボッ」


すると、ベルベットはその子供の目を自分の口に運んだ。『アムっ。ゴリゴリゴリゴリ。』なんと、その目をベルベットは食べてしまったのだ。


『んー。美味しくは、ないのかぁ・・・。』そう言うと、伸ばした爪を元の長さに戻し、人間の男に再び腰を下ろし屈んだ。


『さっ・・・頂きますかっ。』おもむろに、人間の男の、脇を掴みそのまま引き裂いた。


ガシッ。ブッチ、ブッチ、バキバキン、ビシャッ。脇の肉が裂ける音と、骨が折れる音と共に、人間の男は、痛さで悲鳴を上げた。


「ギッ、ギャァァァア!!!!!!」その横で人間の子供が泣き叫んでいる。


「うぁーん!!!パパァ!!パパァ!!」そのおぞましい光景に、人間の子供1人は、ただただ“泣く行為”しかできなくしかなく、もう1人は、まだ痛さに悶えているのか、何も言わずに目を押さえている。


ベルベットは、その引きちぎった腕を、美味しそうに、ジュルジュルと音を立てて食べる。


すると、ベルベットは何かが気に触ったのか、怪訝そうな顔をして呟く『お前・・・ゴリゴリ・・・うるさい・・・バリバリ・・・ジュルジュル・・・』人間の腕を食べながら、さきほどから人間の男の側で、ずっと泣き喚いている、1人の人間の子供に視線を移すベルベット。


その視線に気づいたのか、人間の子供は「ヒッ。」と、悲鳴に似た声を上げたのと同時に、ベルベットによって真上に蹴り上げた、あばらが砕ける音と共に、人間の子供は空高く遠くに蹴飛ばされた。


そんな勝手すぎるベルベットの、行動に流石のグランツも「ベルベット君・・・はぁ・・・キミ・・・やりすぎじゃない?」少し怯えた表情を見せながら、注意する。


グランツの言葉が聞こえているのか、聞こえていないのか、ベルベットは人間の腕を、夢中で美味しそうに食べ続けている。


それでもグランツは、ベルベットに言う。


「このルールだけはっ・・・。この事がバレれたとしたら、あの“イエローのばぁばぁ”が、黙ってないぞっ!」グランツは、首筋に一筋の冷や汗を垂らしながら、ベルベットに少し強い口調で忠告した。


だが、ベルベットは、物凄く面倒くさそうな、どうでもいいような、表情になり


『バリバリ・・・“イエローばぁばぁ”かぁ・・・モゴクンッ・・・そんなやつ・・・いたなぁ・・・。で?そいつがどうかしたのか・・・?』そう言い終えたのと、同じく人間の男の腕を食べ終える。


そして、ベルベットは二口目を欲して、人間の男の足首を、掴み豪快にグル、グルと、廻しながら股関節から、脚を引きちぎった。


バキゴキ、バキゴキ、ブッチっ。


「アガァーガガガガ」人間の男はその叫び声を最後に、意識を失った。側にいた“残りの”人間の子供は、先程の目の痛さなのか、出血が激しかったのか、いつの間にか静かに、横たわっていた。



“イエローばぁばぁ”とは、人喰いの社会の裁判長みたいな役割を持っていて、彼女が人喰いの罪や罰を最終的に決めるのだ。


ブッチっ。ジュルジュル、モキュモキュ。ベルベットは引きちぎった、脚を食べながら、時おり骨をプッと、吐き出して食べ続けている。


グランツは、ベルベットが、先程蹴り飛ばした人間の子供が、死んではいないかと、気になり様子を見に行こうと、足を踏み出した時


ベルベットは、ゴクンッと、人間の肉を飲み込み、グランツに問いかけた。


『・・・グランツ・・・怯えるな・・・イエローばぁばぁの、なにが怖い?』そう言うと、口の周りに血液を、たっぷり付けた顔で、ニヤリと笑いまたプッと、骨を吐き出した。


グランツは、先ほど踏み出した足を、元に戻しベルベットに、向き直り。怯え、恐怖、焦り、そんなものを一切見せないベルベットに呆れて言う。


「・・・はぁー。君って、怖いものは無いの?」



そのグランツの、問にベルベットは、黙ったまま黙々と食べ続けていた。



そしてグランツは、これ以上事が大きくならないように、仕方なく先程動かした足を踏み出した。


コツコツコツコツ


森の道にグランツの、靴の音が鳴り響く。グランツは“歩いて”蹴飛ばされた人間の子供を、探すことにした。





すると、グランツは先程のベルベットの、言葉を思い出し、ボソリと



「僕は・・・君が・・・恐ろしく怖いよ・・・。」そう呟いた。


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